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023 邂逅する魔術師

「ふ――ふれで、りか様…………っ」


「う、うんっ!? フレデリカ様!? 聞き間違いだよね、あはは――えと、ひ、久しぶりだね、なんだかおっきくなった気がするよ!」


「そ……そうです、かね……?」


「うん! 身長はあんまり変わってないけど、なんかこう、風格? 気? ――とりあえず、予選通過おめでとう!」


「え、あ、はいありがとうござ――――み、見てたんですか予選!?」


「しっかり見てたよすっっごいかっこよかった! 思い出しただけでドキドキしてくるよ~! あ、あ~なんか暑くなってきちゃったなあ~? これから暇かなぁ?」


「そ、そんな……お恥ずかしい姿を……出力全開で挑めばよかった……くそ、どうして俺は……!」




 たどたどしく言葉を交わすレオとフレデリカ。

 実に三ヶ月ぶりの邂逅だった。

 お互いがお互いのことを意識しすぎて、目もまともに合わせられない。会話もイマイチ噛み合っていなかった。




「あら~。うちのお姫様、動揺しすぎて唐突に色仕掛けを始めたわあ。こんな街中だっていうのにぃ」


「お相手さんは……全く反応してないけど……しかも様呼び……信者ファンだ……」


「ローランぅ? どこ向いて喋ってるの? 地面は返答してくれないわよ~?」


「仕方ないよ……人見知りだし、怖い。さっきのイチャラブを見せられたら、なおさら……フレデリカの気持ちも……わかる……なんとなく」


「だからって地面とキスする勢いでしゃがまないでくれるかしらぁ? こっちが恥ずかしいのよ~?」


「キュルル~キュるる」




 ふくよかに膨らんだ胸の谷間を見せつけるかのように、服を仰ぐフレデリカと。

 両手で顔面を覆い、後悔を滲ませるレオ。



 砂粒を観察するかのように顔を地面へと近づかせて囁くローランと。

 ローランの背中をチクチクと日傘で刺すミリアンと、その頭部に引っ付いている小型のドラゴン。



 そして、異様にして異質な面々を、他人のフリをしてしのごうと距離をとったフランの姿がそこにあった。




「……兄さん、まだかな~」


「あそこ……他人のフリしてる……」


「わたしの兄さん、どこ行ったんだろ~」


「あなたのお兄さんぅ、いま色仕掛けされてるわよぉ?」


「兄さんは負けないよ~、わたしのキスを回避するんだから……」


「近親……交配……」


「んぅぅ? それはまた違う意味じゃなくってぇ?」


「………」




 四人と一匹から少し離れた場所で、後ろ手を組み、石ころを蹴ったフランが兄を見やる。

 デレデレと、フランの知らない兄がオドオドしながら頬を掻いていた。

 ちくりと、胸が痛む。

 あんな顔、見たことない。




「――あ、あ、あ、あのフレデリカ様っ! お、俺……あし、あし、明日、が、がんばりますので見ていてくださいっ!! ぜ、全力で焼き払います!!」


「――れ、レオくんわたしあなたに伝えたいことがあるのっ! 全力で聞いてくれるかなっ!? とても大切な話なんだけどぉ……!」


「落ち着きなさいフレデリカぁ、お姉さんがしっかりリードしてあげないと、ねぇ~?」


「み、ミリオン……そうだね! わたし、年上なんだもんねっ!」


「――ふ、フレデリカ様! 俺、あなたに――あなたにっ!!」


「キミも……落ち着くんだ……あ、ごめんなさい……」


「レオくん! ちょっとこれからツラ貸してくれるわよかしら?!」


「ぷふっ、だめ、ちょっともう見てられないわあこの人たち……っ!」


「……グダグダだ」




 呆れたように嘆息するフランが石ころを蹴る。砂粒を踏みにじる。前髪をかきあげる。




「なんなんだろう。二人の時間を邪魔した挙句、このどうしようもないグダグダ感……なんのために出てきたの? 生きてるの? 今じゃないとダメだったのかな……はぁぁぁ~~~っ」


「……ごめん、ミリアン。俺、先に帰る……ちょっと危ない……」


「ローラン、逃げちゃだめよこっからがおもしろのにぃ」


「……俺はまだ……死にたくない……!」


「Sランク冒険者が何を――」




「――――兄さん? いつまでダベってるんですか行きますよ?」




「――言って…………え、こわ」




 比喩でもなく、周囲の温度が下がった。

 それほどまでに、フランの突き刺した言葉の温度は冷たかった。



 強引にレオの腕を掴み、胸元に引き寄せるフラン。

 理由もわからず冷汗をダラダラと流していたレオは、なされるがままにフランの谷間へ腕が挟み込まれた。




「ふ……フラン?」


「兄さん。明日は本戦ですし、きょうはゆっくり休みましょう? 兄さんが眠るまで、ずっとそばにいてあげますから」


「な――――っ!?」




 見せつけるように、フランがさらに腕へ胸を押し付ける。

 口を大きく開けて絶句するフレデリカ。

 ふっ、と鼻で笑ったフランが、そのままレオを連れて歩き始めた。




「ふ、フレデリカさん! また、あした――!」


「れ、レオくぅぅぅん……っ!」




 今生の別れかのように、引き離されていく二人。

 そのレオの反応に、鋭利な棘が胸を強く差し込む。

 倒錯してしまいそうになるフランは、気力でレオを引っ張った。




「い、行っちゃった……レオくん、行っちゃった……」


「び、びびってない……俺は、ビビってない……」


「なんなの~? あの子、とぉっても恐ろしいわぁ、目がやばい~」


「でも……あしたって言ってた。またあした、会えるんだねっ!」


「立ち直りはや……そこがフレデリカ……いいところだ……うん」


「いい加減地面から離れなさい~ローランぅ」







「その……怒ってるか?」


「何がですか? わたし、怒ってるように見えますか?」


「い、いや……」




 宿に到着した二人。

 当然のようにレオの部屋へと入り、ベッドに腰掛けたフランにレオはたじろぎながら聞いた。



 おかしな様子はない。

 しかし、何かが違うと、レオの直感が告げていた。




「その……なんて言えばいいんだろうか。様子がいつもと違う気がして……」


「そうですか? 気のせいですよ、兄さん。——それよりも」




 ぽんぽんとシーツを叩いて、フランが視線でうながす。

 こちらへ来いと。




「寝ないんですか、兄さん?」


「ふ、フランが帰ったら寝るよ」


「言ったじゃないですか、兄さんが寝るまでそばにいるって」


「いや……」


「寝れないんですか、わたしがいると?」


「そういうわけじゃ…………寝ます」


「ふふ、かわいいですね兄さん」




 言われるがままに横になるレオ。枕元に座るフランが、レオの髪の毛を撫でた。




「兄さん……」


「……なんだ?」


「呼んだだけです」




 慈しむように頭を撫で続けるフラン。

 そんな彼女が気になって、寝ようにも寝られなかった。




「フランは……確か【メンカリナン王国】出身だったよな?」




 いろいろな感情を抑えるために、レオは会話することにした。




「はい。王国の【メラク】出身です」


「そうだったのか? 俺、冒険者を始めたの、メラクなんだ。三年ほどだが、メラクに滞在していたんだ」


「ほんとですか!? では、兄さんともしかしたらすれ違っていたのかもしれませんね」


「そうかもしれないな。フランは、学生だったのか?」


「そうですよ。もう、不登校の問題児ですが。死んだことになってるんじゃないでしょうか?」


「それは……ごめん。武闘会よりも、先にメラクへ向かうべきだった」




 知らなかったとはいえ……否、もっと早くに聞くべきだったと、後悔する。

 



「気にしないでください。学校に行ってるよりも、兄さんたちと一緒にいたほうが楽しいですし、勉強にもなります。学生をやっているよりもずっと、まいにちが楽しんですよ?」


「そうなのか?」


「そうなんです」


「そうか……俺、学校に行ったことがないから、どういうものなのかわからないが、とても有意義に過ごせる場所だということは聞いている。だから、俺もいつか学校に通ってみたい、なんて思っていたんだ」


「兄さんが思ってるほどいいところじゃありませんよ。ていうか、兄さん? 学校は十八歳までですよ」


「そ、そうなのか!? それは……残念だ」


「ほんとうに、兄さんは世間知らずですよね。でも……ずっと夢中だったんですね」


「ん……?」




 頭を撫でていた手が、止まる。

 シーツの上に脚を伸ばしたフランが、ぴたりとレオにくっついた。

 目線より少し上に、フランのかわいらしい顔がある。 

 頬を流れおちる長い茶髪。

 額にかかる彼女の甘い吐息が、レオの体を熱くさせた。




「兄さんは、ずっと冒険者になりたかったんですか?」


「あ……ああ。そうだぞ?」


「なんでですか?」


「それは……昔、ある人に言われたんだ。〝おまえの炎はあらゆるものを壊す。人を傷つけるだけの術理だ〟——って」


「それは……ひどい言い草ですね」


「そうなんだ。でも、その人なりの慰めだったのかもしれない。当時、俺は両親をなくしていて…………?」


「どうしたんですか、兄さん?」


「いや……なんでもない」




 何か——違和感がある。

 しかし、それがなんなのか、明瞭めいりょうじゃない。

 喉に小骨が引っ掛かったような違和感に、しかしレオは考えないように、言葉を続けた。




「……その人は、こうも言ってたんだ。〝だからこそ、人を守れる力になり得る。可能性を見せてみろよ、坊や〟——って」


「では……兄さんは、もう、守れる力へと変えたんですね」


「そう……だろうか? 俺としては、まだ納得のいく出来ではないんだが」


「十分ですよ。わたしを助けてくれましたし、あの場にいた女性たちを解放したのも兄さんです。——兄さんはとっくの間に、その人の可能性とやらを体現したんですよ」


「…………そっか」




 フランが言うのなら、そうなのかもしれない——ストンと、胸の中で何かがハマった気がした。




「ありがとう、フラン」




 フランの頬に手を滑らせて、レオは彼女の瞳をまっすぐ見つめた。

 三秒も視線を合わせていられなかったフランは、あたふたしながら、さらに距離を詰めてきた。

 フランのやわらかな感触を、全身で感じる。




「明日、フランにカッコ悪い姿を見せないようにがんばる。応援してくれ」


「はい。任せてください、兄さん」




「おもしろかった!」



「続きが気になる!」



「早く読みたい!」



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