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018 予選に参加する魔術師

『――さあ、この時がやってきたぞ百戦錬磨の猛者どもぉッ!! 魔道武闘会ぃ、予選の始まりだぁぁぁッ!!』




 ――午後、カルロフ公国から少し離れた野営地にて。

 集まった参加者へ向けて、赤髪の際どい衣装で着飾った女性が大声で張り上げた。




『まずは名乗らせてもらうわ! 私の名はベティ・カルロフ! 領主シュナイザー・カルロフの長女にして、この魔道武闘会を仕切らせてもらう監督役よ! 以後お見知りおきを!!』


「……強そうだな」


「ええ。【燃え猛る灼腕しゃくわんのベティ】という異名を持つ炎系統の魔術師よ。……ふふ。あんたとどっちが火力が上なのか、比べてみたいわね」




 隣のエヴァが、柔和にほほ笑んだ。

 エヴァの笑顔を見たレオは、つい先ほどのことを思い出して赤面した。

 バレないように視線をベティ・カルロフへと移す。




「お、おなじ炎系統か……参考になる部分はありそうだ。ぜひとも一度手合わせ願いたいな」


「監督役だから、今回は出場しないようね。残念だわ」


「ああ……なんか、過大評価してないか? 異名持ちの相手と俺を比べるなんて、おこがましいというか……」


「なに弱気になってんのよ。もう少し自分に自信を持ちなさい」


「……はい」




 肩を拳で叩かれて、頷くレオ。

 実力者であるエヴァにそこまで評価されているとは思わなかった。

 気恥ずかしい反面、レオは胸を張って試験会場を見据える。




『魔道武闘会、予選内容は恒例のバトルロイヤル! 四つのブロックごと四人になるまで争ってもらうわ! つまり、本戦に出場できるのは十六人まで! 自分がどこのブロックかわからないヤツはいるかぁ!? いたらその場で失格だ、手ぇ挙げろ!!』




 冷汗がダラダラと流れるレオ。

 ブロック? なんだそれはと、隣のエヴァに助けを求めた。




「……はぁ。仕方ないわね。あんたと私はAブロックよ。こんなくだらないところで失格にならないでよね?」


「す、すまん……恩に着る」


「忘れないでよ、あんたと私は仲間だけど味方じゃない。本戦をかけて争う敵同士なんだから」


「ああ。おなじブロックってことは、そういうことだもんな。がんばろう、お互いに」


『よし、次の説明に入るぞ! 予選が行われる場所は目の前のこれ、今回のために特設された会場都市だ!!』




 ベティ・カルロフの背後にそびえ立つ立派な門。

 その向こう側には、ちいさな無人都市が広がっていた。




『予選のためだけにこしらえさせた予選会場よっ!! どんなにぶっ壊してもぶっ潰しても燃やし尽くしても、このカルロフ公国に揃った一流の魔術師たちがすぐさま直してみせるから好きだなけ暴れまわりなさいっ!!

 さらに――!!』




 ベティ・カルロフが、さらに大声を張り上げた。




『毎度おなじみ、聖女アンジェリーナ様のお力添えによって、瀕死でも生きかえるぞ!!』




 歓声が沸く。ベティの指さした方向にて待機していた聖女アンジェリーナが、ペコリとお辞儀した。




『一定以上のダメージを負った者は脱落とみなし、会場外に設営された野戦病院に転送される!! そして聖女様率いる治癒術師が全力で手当てしてくれるから、おまえら遠慮なく殺しあえぇ!!』




 さらに歓声が沸き、熱狂する予選参加者たち。

 その熱にあてられたレオも、ワクワクした面持ちでエヴァを見た。




「すごいな、殺し合うってのは物騒だが、聖女様とやらがいれば俺も力を発揮できる」


「だからこそ、魔道武闘会は盛り上がるのよ。決死の攻防が見られるから、惹きつけられるの」


「なるほど……楽しみだ」


「でも、痛みはあるだろうから慢心しちゃダメよ?」


「そ、そうだな。できれば無傷で済ませたいが……」




 ここに集まる猛者たちを見渡してみて、レオは頬をかいた。




「全員強そうだ。一筋縄ではいかないんだろうな」


「そりゃあ、天下の魔道武闘会だから。実力者が揃ってるわ。みんな、自称最強を名乗る武芸者よ」


「最強……」




 憧れる称号だ。男なら当然、その言葉に惹かれないわけがない。

 それに、その称号が手に入れば。

 かのフレデリカと並び立てるかもしれないと考えて、俄然やる気がますレオ。




『ルール無用の究極バトルロイヤル!! Aブロックの奴らは都市へと入れぇ!! いよいよ予選のはじまりだぁぁぁっ!!』




 荘厳と開かれた門。

 エヴァと顔を見合わせたレオは、予選会場へと歩きはじめた。




「気合を入れていきましょう。お互い、予選で脱落しないようにね」


「ああ。必ず二人で本戦にあがろう」


「ふふ、敵同士だってのに……まあいいわ」




 拳を重ね合わせ、二人は門をくぐった。







「……見間違いか?」




 開門された都市へと向かう群れの中に、みた覚えのある顔が混じっていた気がした。




「どうした、スイマ。知り合いでもいたか?」


「いや……気のせいだろう。まさか、あいつが生きてこの場にいるとはおもえん」


「……? なんだ、どういうことだ?」


「なんでもない」




 首を振ったスイマは、設けられた観戦席に座り、壁に埋め込まれたモニターを見やる。




「すぐにわかることだ。もしあいつがここにいるのなら、当然無様をさらすはず」


「……緊張してるのかしら? さっきから何か様子が変よ」


「ぷふふ、スイマに限ってそれはないでしょ」




 それから程なくして、Aブロックの予選が幕を切った。


 







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