表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/74

012  燃やす魔術師


「――やっぱり、ついてくるよな」


「命令だから。あなたを殺さないといけない」


「だよな。悪いが、俺が扱えるのは炎だけだ。火傷しないよう、うまく避けてくれよ」


「がんばる」


  


 レオの速度をわずかに上回るヌゥの脚力に驚きながらも、牽制目的の火球を放つ。しかし、軽い身のこなしで次々と避け、間合を詰めてくる。




「ヌゥ、キミは一体何者だ?」


「ただの奴隷。いまは、ただの――」




 壁を蹴って勢いをつけたヌゥが、加速する。合わせて振り抜かれる蹴りを、寸前でかわし最後の壁が砕かれる。


 

 再び玄関ホールに戻ってきたレオは、地下へと続く道を探す。しかし、見当たらない。



 ヌゥの拳が降りかかる。

 流れる動作で間合を詰め、撲殺せんとかかるヌゥが、視線をある一点に向けた。




「そこの下、絨毯の裏側の板が外れる」


「なるほど。しかし視線だけではどこかわからん。が――」




 わざわざ絨毯をめくって外れる板を探す暇はない。このまま、撃ち抜く。

 収斂しゅうれんさせた炎を床に向かって放つ。

 爆炎によって空いた穴へ、レオは体を滑り込ませた。




「――どこの部屋だ、ヌゥ!」


「左から三番目の部屋」


「わかった!」




 地下は一本道となっていた。薄暗い通路の左右に部屋がいくつかある。

 ヌゥの踵落としを避け、火球を足元に向かって放ち、レオは疾走した。


 


「左から三番目――ここか!」




 蹴りで開いた部屋の先は、書斎になっていた。

 壁一面を本棚で覆われ、高級感に溢れた机と椅子が置いてあるだけのシンプルな部屋。




「どこにある!?」


「ごめんなさい。そこまではわからないの。他の部屋は探したから、ここにしかないと思う」


「……面倒だな、これは」




 ヌゥを相手取りながら、部屋の隅々まで探すのは難しい。

 本の中や隙間に隠されていたら、五分そこらでは見つけ出せない。



 一瞬の逡巡のうちに、ニヤリと笑みをこぼした。

 ヌゥの足払いを跳んで回避し、転がりながら部屋をでたレオは、指を鳴らした。




「何を――っ、なるほど。部屋ごと燃やすのは、いい案」


「だろ? 探す手間が省ける」



 

 一瞬にして炎に包まれた書斎しょさい。本や棚が燃えくずれ、火の勢いが強くなっていく。



 通路にて、ヌゥと相対したレオ。黒い煙が部屋から充満し、契約書が焼けるのは時間の問題だった。


 


「ん。じゃあ、あとは――」


「ヌゥの契約が切れるまで、適当にあしらってやる」




 ほぼ同時に動き始めた二人。

 近接戦闘においては、向こうに分がある。そもそも、レオとは戦いの土俵がちがう。


 

 ダンジョンの魔物相手に、やらないよりマシという感覚で鍛錬をした程度のレオでは、動きについていけても攻撃にまで手は出せない。

 で、あるならば――




「近づけさせないよう、一定の距離を保ちながら魔法を撃つ」


「そう考えてると思ったから、ヌゥは武器を用意した」


「なっ」




 ゴシック調のスカートの内側から抜き出したのは、鋭く尖ったピック。五指に挟んだそのちいさなピックを払うように投擲とうてきしたヌゥに、レオは思わず笑った。




「――殺す気満々じゃないか、ヌゥ!」


「だって、嬉しそうだから」




 細長いそれらは、一度離れると目で追いにくいうえに、狭い通路である以上、回避は不可能。ならばと炎を体にまとわせ、ピックを正面から受け止める。




「それ、暑くないの?」


「慣れてるからな」




 炎を鞭状へと変えて、ヌゥへしならせる。軽々とステップを踏み、躱して距離を詰めてくる白髪の少女へ、網目状に造形した炎を走らせる。


 

 通路目一杯をつかっての炎網えんもうに、ヌゥは目尻を下げた。




「それはひどい」


「喋ってる暇があればかわせよ、ヌゥ。キミならできる」


「何を根拠に――」




 と笑って、逆立ちの要領で手を床につけたヌゥは、しなやかな腕の柔軟だけで勢いをつけ、天井を足蹴あしげした。

 



「そういう方法があるのか。部屋に逃げるという選択肢だけかと――」


「――もらった」




 レオの頭上が割れる。天井を横に突き破って落ちてきたヌゥの踵落としが、レオの顔面中心を捉えていた。



 避ける刹那もない。

 これは面食らったと、微笑んだレオの脳天にかかとが――




「あぅッ!?」




 突如、ヌゥのすぐそばで爆発が起きた。

 威力はほぼないに等しい爆発だが、ヌゥの肢体を吹き飛ばすには十分だった。




「間合の範囲であれば、まばたきするよりも簡単に爆破できる。威力調整もおてのものだろ?」


「……強い」


「そうか? これぐらい、あの人なら息を吸うようにできるぞ」


「誰のことか知らないけど、たとえはほぼおなじだと思う」


「俺なんてまだまだだよ。ヌゥのおかげで課題が見えたしな、近接戦闘もやっていて楽しかった」




 とはいっても、防戦一方だったけど。そう付け足して笑うレオに、ヌゥは唇をすぼめた。




「……ヌゥの動きについてこられえるの、兄者しかいなかったのに……」


「ん? なんかいったか?」


「ううん。それよりも、もう契約は切れたみたい」


「そうか。じゃあ、エヴァの助太刀に行くか。――ああ、それと、ヌゥ」


「なに?」


「今度、暇なときにでも動き方を教えてくれないか? ヌゥの体捌たいさばきとか型はすごい勉強になった。想像もつかないほど努力したってことがありありと伝わったよ。正直俺の天敵だとおもう。今まで出会ったなかでダントツに近接は強いな。嫌じゃなかったら教えて欲しいんだけど、たとえば脚技を主体にしてたろ? 軸足の――」




 地上へと向かいながら、先の戦闘の解説やら教えて欲しい箇所やらをまくし立てるレオに、ヌゥは苦笑した。




「勉強熱心。探究心が強いのかな。だから、そんなに強いんだね」


「んぅ? すまん、喋りすぎて聞いてなかった。もう一度言ってくれるか?」


「んーん。早く行こう」


「あ、ああ。そうだったな。エヴァが心配だ」




 玄関ホールへと戻ってきたレオとヌゥは、首領のいる部屋まで走った。



「おもしろかった!」



「続きが気になる!」



「早く読みたい!」



と思ったら



下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いします。



面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、どんなものでも泣いて喜びます!


ブックマークもいただけると最高にうれしいです!


何卒、よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ