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ツノ切り(ユズル)

「ツノ!!」


「ラヴィーのツノ? それって取れるんですか?」俺は驚いてしまった。


「フツーは取れません! でも、ユズルさん、ドクターでしょ? 切り取れるんじゃない? そのうち、また生えるしさ。ユズルさん、切り取ってくれない?」


「え? 切るって……痛くないんですか?」


「それが、超痛いの! マジ勘弁なんだけど、まあ仕方なくない? 血とかは出ないしさ、また生えるしさ」


「生えるしさ、って簡単にいいますけど。いやいやいや、痛いならダメでしょう?」


「でもさでもさ」と言って、ラヴィーは俺の手を両手でつかんで振る。俺の顔が赤くなる。「さっきのさ、おとうさんに使ってたスキル的なやつで、痛みとか取れる的なことない……?」

 ああ、たしかに。「麻酔(アネステジア)」が使えるかな? と思って俺はもう一度自分のスキルリストを確認することにした。


<診断> 27歳 男 職業:ドクター(サージャン)LEVEL 56

ステータス:健康、寝不足(軽度)

HP 2500/2500 , MP 2499/2500

スキル:

診断ダイアグノジス

麻酔アネステジア

― 全身ジェネ

― 局所ロコ

切開インシジョン

縫合スーチャ

解剖アナトミ

共感シンパサイ

集中ゾーン


 ん? かなりレベルアップしている? ラヴィーのお父さんの討伐(?)によるものか?

 よく分からないが、HPは異常な上昇を見せているが、睡眠不足は解消されていない。

 麻酔は全身と局所に分かれている。これなら意識を失わせずにツノだけ切り取ることができるのだろうか。痛みさえなければ「髪の毛と同じようなもの」と本人が言っているのだから、大丈夫だろう。頭皮には気を付けなければ。


「それじゃ、切ってみます? ほんとに大丈夫?」と俺は聞いた。

「ダイジョブ、ダイジョブ! ガチでヨユー! がっつり切っちゃってください!!」


 座っているラヴィーの右ツノに手をかざし、「局所麻酔ロコ・アネステジア」とつぶやく。ツノが黄色い光に包まれる。光はしばらくツノの周りにあったが、しばらくして消えた。


 ラヴィーはかたく目を閉じて眉間に皺をよせている。ある程度の痛みを覚悟しているのだろう。


「あれ? なになに? マジ? 右ツノの感覚変わったんだけど! もう取れた?」とラヴィーが目を上げて俺に聞く。それにしても瞳が大きい。


「いや、取れていないです。だけど痛みは感じなくなったんじゃないかと思う。たぶん」俺は、ラヴィーの右と左のツノに同時に触れた。


「んっ」とラヴィーは短い声を上げる。


「……左側のツノは感覚がある!」ラヴィーの顔がすこし赤くなっている。ツノに触れられるのはどういう感覚なのだろうか。想像もつかない。


「そしたら、まず右側だけ切ってみますね。たぶん痛くないと思います。痛かったらいつでも言ってくださいね」と言って俺はツノから手を放す。


「分かったー……」と言って、ラヴィーはまた目を閉じた。


 俺は、ツノの根元の切開線を慎重にイメージしながら「切開インシジョン」とつぶやく。


 赤いレーザーのような光が現れ、ツノの根元に入り込んでいく。

 ゆっくりとだが、確実にツノが切開されていく。赤い光が消え、音もなく、ツノがズルっと根元からずれ落ちる。俺は慌ててそのツノを拾い上げた。


「……取れましたよ」と言って俺はそのツノをラヴィーに差し出した。


「……え? マジ? もう取れた? すご! これなら全然ヨユー!!」とラヴィーは一瞬言葉を失ってから言って、そのツノを受け取った。


「たしかに私のツノ! 信じらんない……」ラヴィーはしばらくツノをじっと見つめていた。


「左側も取る?」ラヴィーは決意したように俺の目をじっと見て言った。何を照れているんだ、俺は。相手は龍だぞ! しかも夢の中の! と俺は思った。


「オッケーです。それじゃあ、こっちもですね」と言って俺はラヴィーの左ツノに手をかざす。「局所麻酔ロコ・アネステジア」黄色い光が包む。


切開インシジョン」。赤い光がツノを切り落とす。


 ラヴィーは両手に持った自分のツノを不思議そうにじっと眺めている。


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