誇り高き龍のイチゾク(龍姫)
あたしが気づいたときにはもうおとうさんはかなり瀕死で激ヤバだった。
襲ってきた黒いのはめっちゃたくさんいたし、ゆーてあたしもまだまだ色々龍っぽいことできるわけじゃないし。
だいたい何をどうやって攻撃されてんのか、さっぱり分からなかった。少なくともあたしは。
おとうさんはちょっと分かってたかもだけど、なんかスキルとか全部使えないようにされた、みたいな。
ジツはあたしもだいぶやられてたけど、ほとんどおとうさんが身代わりしてくれて。あたしがいなかったら、おとうさんひとりで逃げられたのかも……と思うと、罪悪感はんぱない。
だけど、「神隠し」が使えるのって女龍だけで、実際その時あたしたちの龍里にはあたししか女龍がいなかった。だから、おとうさん以外の龍がみんなやられて、あたしのところに「早く逃げろ」って言いに来たおとうさんが、あたしひとりで逃げるように指示したんだけど、そんなんあたしひとりで逃げられるわけないじゃん。
あたしだって誇り高き龍のイチゾクの姫なわけだしさ。おとうさん置いて逃げるって、どんだけ、って話よ。マジでそれだけはないわーって、さ。
とはいえ、現実的におとうさんいないと、飛んだりはできなくなってたわけだし、まあおとうさんは結局最後の力を使ってあたしを逃がしたってことになるのかな。そうだよね。そうだよ。
だから、おとうさんにはマジで感謝してるし……ジツは、おとうさんは来年525歳で、どっちにしても生まれ変わる予定だった。もちろんどこにどんなかたちで転生するのかは、よく分かんないんだけどね。黒いのに殺されたら転生できない可能性がある、ていうか、ほとんど無理っぽいみたいだし。
ユズルさんに楽にしてもらった時、透明になって、最期は龍になってたよね? てことは、ほぼ大丈夫じゃね? ってアタシは思ってる。
そりゃあ、やっぱり寂しいけどね。でも、きっとまた会える!ってね、思ってるわけ!