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夕闇は其処にいた
ミモザは優しいやつだった。
あの日、僕はいつものようにミモザのいる小屋へ行った。ミモザは小屋の隅で背中を丸めて泣いていた。一人ぼっちの小屋の中。僕はそっとミモザの背中に手を置いた。ミモザはゆっくり振り返って僕を見た。ミモザの黒い瞳が、右目だけ鮮血のように赤くギラギラと輝いていた。
「にいちゃん、私、もうここにいられない……」
僕は精一杯優しく、そっとミモザの頭を撫でた。ミモザを安心させようと、いつもと同じように微笑む。
覚悟はできていた。
「ミモザ、行くぞ!」
何も持たずに二人で小屋を飛び出した。右手で強くミモザの手を引いて歩きだす。ミモザが後ろで旅が鼻をすすっている音がする。小屋が見えなくなった頃、強い風が吹いてミモザのペンダントがシャラリと揺れた。
ついにミモザが魔王へと近づいてきた。
二人の旅が始まった。