エイプリルフール
『きらい!』
スカーに嫌われてしまった!
「くっ……!」
衝撃の事実によろけが止まらない!
「きらーい、きらーい」
嫌いという事実にその場で膝を抱く。
「じょ、冗談だよ~」
「悲しいな……」
「冗談だって!」
「かなしい……」
「もう!!」
はっと気がつくと俺はベッドに寝ていた。
微かに明るい空間は朝を主張している。
なんだったんだ? 考えてみる。
……もしかして。
不意にガチャりとドアが開き、スカーが入ってきた。
「ふっふー」
「元気そうだな」
「ふ、ふーー?」
いつもとは違うスカー。チラチラよそよそしい。
「どうした?」
何かを言うわけでもなく、不思議だ。
ぷくーと頬を膨らませて暇そうなので声をかけてみる。
「来てもいいんだぞ」
コクリと頷くと俺の足元に収まった。
嫌というわけじゃないらしい、嬉しそうだ。
「本当にどうした?」
目を合わせてくれるし、ピッタリと引っ付いて離れない。
口を縫っているんじゃないか? 唇に触れて確認。
「……むっ」
「言わないとキスするぞ」
「ん! ん!」
「え?」
うんうんうんって頷かれたら逆に困る。
「んー!」
逆にスカーからキスされて受け止める。
いつも通りの普段通り。終われば何かが変わる。
「もう一回だけ、しよう」
それが怖くて次のリクエストはひたすら長く唇に触れていた。
もうダメだよって押し話された。
「まさか、嫌いになったのか」
違う違うと首を振って否定してくれた。
「なら良かった」
言葉の代わりに身を寄せてくれるスカー。
喋れなくなっても、何も言えなくなっても、一緒に居てやりたいな。
「治るといいな」
「ん」
今日はずっと一緒に居たくて、目で会話した。
パチパチと瞬き二回で肯定、三回で否定だ。
「キスするか」
パチパチ、パチ。
「なんだと!」
違う違うって首を振られる。もう一回したが否定された。
「無理強いしてたっていうのか……」
「んーんー!」
頬擦りしてくれたり、肩を揉んでくれたが、信じれない。
なんなんだと思っている間に一日が過ぎ。
「ふー」
スカーは大きなため息を吐く。
「座り心地が良くないのか?」
「……そんなことより! 好き!」
急に抱きついてきたスカーを受け止める。
「な、なんだ?」
撫でろだとかキスだとか、突然の甘えに着々と答えた。
「だって昨日は……あ、なでなで止めちゃダメ!」
「昨日はなんだ?」
『エイプリルフールだから、その~』
撫でられながらスカーは恥ずかしそうにしている。
『嘘しか言えない日だから……好きって言えなくて、ごめんなさいっ!』
「ほう……」
「嫌いっていったらリュウキ落ち込んじゃう」
「……ああ」
心配しているつもりだったが、心配されていたらしい。
「チューしよ! チュー!」
「ダメだ」
「え……」
目尻に涙を貯めて寂しそうにするスカー。
「したいよ」
「少し、仕返ししてみたかっただけだぞ」
「むっ……!」
スカーは俺から離れるとベッドからも降りてしまう。
「どうしたんだ」
『言っていい嘘と、ダメな嘘があるもんっ!』
ドンドンと大きな音を立てて出ていってしまった。
「理不尽だな……」