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「有り得なっ! 向こうの両親も相当だけど、雅彦さんも信じられないね!」
「でしょ? 普通さ、長男が両親の面倒みるもんじゃないの? 何で次男で末っ子の雅彦が面倒見なきゃいけないのよ。」
「向こうの兄弟もずるいよね。加奈ばかりに重荷を背負わせちゃって。」
「最初はね、私たちがこっちを引き上げて、向こうに二世帯住宅立てて、そこに雅彦の事務所も作って、一緒に暮らすって言ってたんだよ。有り得なくない?」
「何それ。加奈だってこっちで仕事あるのにさ。」
「私の仕事なんてあの人たちにとったら全く価値が無いに等しいんだよ。いつでも辞められるし、誰でも出来る仕事なんだって。」
「酷いね…。」
「でもさ…、一番頭にきたのは、雅彦が私の側に立ってくれないんだってことなんだ。あくまで両親の意見を尊重するのが当たり前で、私には妥協点を見つけてほしいってことなのよ。折れるのはおまえだぞってことなんだよね、結局。」




