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「そうだよ、雅彦! うちは楓の両親が家を建ててくれるから動けないし、お前だったら自由がきくじゃないか。加奈さんだって、別に今の会社はいつでも辞められるんだろ?」
…やめて
…いい加減にして
…人の人生、勝手に決めないで
私の中で何かがプツっと切れた。私は立ち上がった。
「皆さんに言っておきたい事があります。」
皆が一斉にこっちを見た。
何事だという顔をしていた。
「私はこっちに移住する気はありません。今の会社を辞める気もありません。子供も作るつもりはありません。そして金輪際、こちらにお邪魔することはありません。皆さんと親戚付き合いするつもりも完全に無くなったので、ご理解よろしくお願い致します。東京に帰ります。では、失礼いたします。」




