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田中さんは僕にとって家事の師匠だ。
この通勤の貴重な時間にいろいろ学ばせてもらっている。
お互い家事をするという共通点があるが、僕と彼との決定的な違いは、彼は家事が好きでやっていて、僕は好きでもないのにやらされている、という事だ。
しかし、田中さんにはその事を言っていない。
彼はきっと僕も家事が好きなんだろうと思っている。
「津田さん、それだけ家事をやっているんだったら、先で子供が出来ても全然大丈夫だね! 奥さん、津田さんみたいな人が旦那さんで喜んでるでしょ?」
「いやあ、どうなんスかねぇ…」
加奈は結婚してから変わった。
その変貌たるや、別人と言っても過言ではない。
結婚前はかいがいしく僕の世話を焼いてくれ、部屋の掃除をしにきてくれたり、料理を作りにきてくれたりした。
とても家庭的な子だと思った。
大勢で集まるときも決してでしゃばらず、後ろでみんなのために動いてくれるような子だった。
彼女となら自分の未来が想像できた。




