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「でも、私に言わせると羨ましい限りだわ。パートナーがいるって素敵なことよ。」
「浜辺はいないの? そんなにキレイなのに。」
「いないわね~。私、モテないから。」
「嘘だ~。絶対モテるでしょ?」
「そんなことないけど、言い寄ってくる人がいたとしても、パートナーにしたいような人はいないのよ。」
「仕事ですごい人たちと会ったりするんじゃないの?」
「まあそうだけど、生活となると癒しが欲しいじゃない? 私の会う人たちって、上昇志向が強いから、仕事の面ではいいかもしれないけど、ずっとだと疲れちゃうのよ…。でもね、私、津田君の前だと素になれるんだ。もともと私、田舎のヤンキーでしょ。都会の人にバカにされないように努力して背伸びして…もう一杯いっぱい。なんか…人生に疲れてきちゃったのかな。最近、よく思い出してたのよ。田舎の何にもない景色と…照れ屋で冴えない男の子。」
浜辺はじっと僕の目を見つめた。
目の端に涙が浮かんでいた。
「鬼嫁にならせてもらえる津田君の奥さんが羨ましいわ…。」




