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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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店を出ればまた雨が本降りになった。雲が低くなり夕暮れに向かうこの時間、段々と暗くなってきた。

LINEが鳴る。


見ればイズルだ。

それも電話。


手にして、もしもしという。



㋑こだま?どうそっちは?


㋙雨本降り、天気悪いで


㋑そうなん、こっちもな。大分天気悪くなってきたわ。


㋙だろ


㋑そうそう、だからさ、今から避難すんねん。なんか丈夫な建物の所に。


㋙その方がいいやろ。マジで


㋑何でも台風、台湾でもえらい被害らしいで。それにさ、電柱とか屋根とかさ、竜巻で持ってかれて、空から降って来たらしいで。


㋙マジかよ!!すげぇーなっ。やっぱ・・


㋑やろ。となると私も竜巻に持ち上げられたら、空飛べるな。それで大阪帰って来るわ。



㋙・・・・せやな。


㋑そしたら、落ちてくるときちゃんと捕まえてな。頼むで。


㋙おう、了解やわ!!


㋑ほな、こだま。またねー


 電話が切れる。


 ついにあちら方面も台風の暴風域に突入しかかってるんだな。


「こだま君、良いっすか?行きますよ」

 松本の声に縦に頷く。


 よし!!

 

もう少しだ。


 店を出る前にネットで地図を見た。ここからそんなに離れちゃいない。

 僕はヘルメットのバイザーを下ろす。

 川向うに緑の稲穂が見える。秋になればこの辺り一帯は黄金色の田園になるのだな。


 消えゆく間際の仁王像の言葉が浮かんだ。


――ここは美しい山野であった


 確かにそう思う。


 もし、この冒険が無事に終わればイズルを連れて来たいかも。

 輝く海を、美しい山野を、イズルを背中に乗せて走るんだ。


 思うと心がどこか温かくなる。


人生って意外と悪くないな。


感傷的な気持ち。

それを振り切る様に、僕はアクセルを回して降りしきる雨の中へと進んで行った。

この冒険を終わらせるために。


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