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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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 リアル体験

 それは普段からアルアルな体験じゃない。

 突然訪れるんだ!!


 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・


 

 ゴゴゴゴゴゴゴごごごご・・・・・・


 地鳴りが響く。木立の葉が揺れ、空気が振動する。

 呆然と立ちつく僕に松本の声が飛び込む。



 #早くアクセルを吹かせ!!

 早く逃げるんだ!!



 路面を走る裂け目。全てを飲みこもうとする異常な現象。

 催眠術にでもかけられたかのようにスローモーションで動く、神経と感受性。

 本能だけがそれらを追い越して行く。


 それは、生存本能。

 それのみが危険を叫ぶ。


 気が付けば僕アクセル全開で走り出していた。

 無我夢中で曲がる道を走っていく。

 神経は斜めになろうとする肉体と路面の均衡を保ちながら、本能が全てを支配する。



 生きろ。


 それ以外のメッセージは何もない、全ての遺伝子がそう叫ぶ。


 生き残れ!!

 生き残れ!!

 生き残れ!!

 生き残るんだ!!



 ピカッ!!


 雷鳴が煌く。

 一度ではない、何度も鳴り響いた。

 その度に木々の葉が揺れ、雷光がうねる。

 降る続ける豪雨。

 道は荒れ続けている。

 時折身体が飛ぶのを踏ん張りながら、アクセルを吹かし、切り裂くように走る僕達。



 #こだま君、小さな広場がある。・・・何か建物がありますよっ!!



 前方を走る松本からの声。


 松本の原チャが後輪を滑らしながら広場に入る。

 続いて僕もそこに滑りこむ。小さな門が見えた。


「あそこに行きましょう」

「了解!!」

 頭を抱える様に走り出す。


 また稲妻が落ちた。

「ひぇえぇぇええ!!」


 門まで来ると階段が見えた。


「この上に何か避けれる場所があるかもしれない。行きましょう!!」

 松本が階段を一段飛ばしで素早く昇っていく。

 僕も松本に続く。

 苔むした石段。

 僕達は風のように走り抜けた。

 最後階段は二段飛ばしで駆けあがる。


 これは・・・


 ――広い寺院が見えた。


 見事な伽藍を持ち門の左右に仁王像が立っている。

 見事な山寺と言えた。


 ピカッ!!


 雷鳴が鳴る。


 それに呼応するように僕達を眼下に見下ろすが仁王像の眼が輝く。


「見事な山寺ですね・・ここで雷と雨を避けましょう」

 松本が雨と泥まみれのレインコートを脱いだ。 

 僕も脱ぐとレインコートをバサバサとはたいた。

「さっきの土砂崩れは酷かった。危機一髪です」

 雨に濡れた髪を手でくしゃくしゃにすると松本が苦笑いをする。

「何がおかしいんすか?」

 僕の表情を指差す。


「いやーこだま君。もうあの時、顔面真っ青でしたよ。見事なくらい」



 なるだろ、そりゃ・・



「当たり前でしょうが!!あんな超自然現象に出会えば!!」


「 「 「 「 だよな?」 」 」 」 」


 え!!


 僕は思わずその声に振り返った。それは松本の声じゃない。

 鼓膜に響く、大きな低い声。

 声の主の大きな手がゆっくりと僕達に近づいてくる。

 そいつは紛れもなく、僕達を見下ろしていた仁王像だった。


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