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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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1

 バイクの教習所は自宅から自転車で数分の所にある。

 しかし、その数分がいけない。

 何がいけないのか?


「暑すぎるからにきまってるじゃない!!」


 自宅を出てそんなに時間は経っていないのに、リュックを背負った背中は汗が滝のよう。


「気持ち悪いったらさ、・・・ないよね~」


 自虐的に言って、自分を慰めてみる。

 まぁ、目標のスタートラインに立った自分を褒めたい気分もあるのだけど、でも今は自虐的に言った方がなんかうけるような気がする。


 え?

 誰に?

 ねぇ?

 誰にさ?


 いいやん、別に誰だって。


 無言で日陰の無い道を進み、図書館の前を過ぎてゆく。

 風は全く吹かない。

 まるで拷問のようなアスファルトの道。そこをひたすら懸命にペダルを漕いで走る僕。

 交差点を勢いよく斜めに横切ると郵便局が見えた。すると赤いポストの前でフレームの派手なサングラスを掛けてこちらを見てるやつがいる。

 両腕が小麦色に焼けた両腕がキャミソールから見えて、ピンク色の唇がにっと笑う。

 僕にはそいつが誰だか分かった。

 勿論、やつも。


 イヅル、お前そんなところでなにしてんの?


「お!!こだまー、久しぶり。何してるの?」

 サングラス下でピンク色の唇が動く。


 そりゃこちらの台詞。お前こそ、郵便局で何してんだよ?


 僕はイズルの前で停まった。

「イズル、あのさ。今日から教習所行くんよ。免許取る為に」

「えー、本当?こだま、凄いやんか!!」

 イズルの驚いて見開く目がサングラス向こうに見えた。

「車?」

「ちゃう」首を振る。

「バイク」

 へーと声も出さずにイズルがサングラス越しに僕を見て、手を叩く。

「じゃさ、免許取ったら連れてってよ!!」

 言うとイズルのサングラスが少しずれた。

「どこに?」


 お前を?

 そりゃー、まぁまぁイズルは可愛いけどさ。

 でも、どこに?

 どこにさ?


「海!!」

 数秒、僕は沈黙した。


「海?」

「そう」

 サングラスをかけ直す。

 僕は至極真っ当な答えで少し拍子抜けした。イズルはここら辺の友達の中じゃ少し変わったやつだ。だからいきなり、思いもつかない場所でも行こうなんていうのかと思ったのだけど・・・・。


 まぁ、良かった。


「オッケー、じゃ免許取ったら行こうぜ、海に」

 そう言うと僕は再び自転車のペダルを漕いだ。

 もう教習所はすぐそこだ。

 一度、後ろを振り返る。イズルが陽に焼けた腕を上げてバイバイしてる。


 それを見て少しだけ苦笑。


 腕、焼けすぎだよ、イズル。


 日焼け止めクリーム塗らないと大変なことになるぞ。


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