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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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16

 マンションの階段から空が見える。その空を進む飛行機が見える。

(もしかしたらこいつにイズルとマウロが乗っているかも)

 そんなことを思うと、ヘルメットを脇に抱えてエレベータで降りる。

 夏の時間が今僕と共に降りてゆく、そこに何があろうとも時間は僕の側を離れないだろう。

 扉が開き眩しい輝きの中に足を進める。

 鳴く蝉の声。

 路上に落ちて流れる白い雲の影。

 僕はバイクに跨った。

 エンジンをかけて、ミラーを見る。スロットルを回してバイクを走らせた。

 堤防沿いの道を走る。

 流れ、流れる街の風景。

 ただ、ただ風に身を任せて、進んで行く。

 気が付けば潮の香りのするヨットハーバーに居た。

 何艘ものヨットが係留されている側で僕は揺れる帆を見る。

 潮風に運ばれてくる香りに翼を泳がせる海鳥。

 それが空を大きく横切ってゆく。


 鳥よ、

 お前はどこに行く?


 ヘルメットを脇に抱えて小さなベンチに腰を掛けた。

 セーリングを終えた人が会話をしながら目の前を過ぎて行く。

「台風が来るらしい」

 その声に相手が答える。

「らしいな。何でも今回はでかいらしい。だからかもしれないが沖に出たら風が強くて大変だったよ」

 その言葉に顔を上げた僕。

(台風か・・)

 スマホを手に取り気象予報のページを見る。

 確かに発生したばかりの台風の情報があった。そいつはまだ日本から遥か南の洋上にある。

 975ヘクトパスカルーーーー

 別にそんなに巨大じゃない。

 僕はそのページを閉じるとバイクに歩み寄る。

 海を見れば白い帆が輝く海の上で風に流れているのが見え、小さな一艘のヨットが風に揺れた。

(海の上じゃ、強風が吹いているんだ)

 ヘルメットを被り、スターターでエンジンをかける。

(台風が過ぎたら、ケイタのとこにでも行こうかな)

 僕はスロットルを回して、夏の暑い陽ざしの中へと進んで行った。


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