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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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 霧雨のような雨が降る。

 真夏の太陽は少しだけお休みだ。

 ここ数日うだるような暑さで、街行く人々の顔にも少し疲れた翳が見るような気がする。だから今日のこの霧雨は、ちょっとした恵みを与えてくれてるような気がする。

 買ったバイクはマンションの駐輪場に停めてある。

 今日は出番なし。

 だから僕は傘を差しながら街をぶらぶら歩いている。

 僕は思う。

 僕達は太陽の陽ざしばかりでは生きてはいけない。

 また雨ばかりでは生きてはいけない。

 その二つがバランスよく天秤のように左右対称になって僕達は生きていける。


 もしそのバランスが崩れたら?


 僕は通りに出ている電気屋の最新型テレビ画面を見る。画面に南極の巨大な氷が流れ落ちてる映像。それについてコメントする学者達。

 地球について未来を考えるサミットは僕達を正しく導く賢者たちの場だろうか?

 本当の姿は互いの利権を守るための意見の場でしかなく、それはやがて自滅へと導く導火線の火付け場所でしかないのではないだろうか?


 そしてそのバランスを保つため神が人類の為に地球に施した封印。

 それがミレニアムロック。


 本当に封印なんて

 有るんだろうか


 松本のでまかせじゃないのだろうか?


 しかし、と僕は思う。

 それにしてはあいつが見せた摩訶不思議な現象。

 おかしすぎる。


 傘を差す人が過ぎ行く通りを見ながら松本がしたことを思い出す。


 確か

 かまいたち


 僕はスマホにその言葉を書いて松本がしたように手を素早く動かす。


 数秒


 びゅうぅう

 ぅううううぅうぅぅう


 霧雨降る通りに渦が巻きそれが勢いよく走り出す。

 街行く人がそれを見て振り返る。

「な、何だ、これは!!」

 一斉にその声に皆が立ち止まる。

(うわぁ!)

 僕は声を心で上げると、その場から急いで離れた。

 背の向こうで混乱する人々の声。

「傘が!!」

 その声に振り返る。

 小さな竜巻に乗って傘が空へと舞い上がり、やがて勢いを失くした竜巻が消えると落ちてきて街路樹に突き刺さった。

 その時スマホが光り出した。僕はあわてて手に取る。すると緑を含んだ蛍の蛍光色でかまいたちという文字が浮かんではじけるように消えた。

 ビルの影に身を隠して僕は大きく息を吸った。


 やっぱ

 マジ、現実なんだ


 心臓の鼓動がコトコト音を立てているのが分かる。


 僕は本当にどうなっちまうんだろう?


 いや

 もしかしたらこの地球はどうなるんだろう?


 スマホが鳴る。

 見ればLINEにメッセージが来ている。


 #こだま~

 うちら

 屋久島いくで

 ほんで、縄文杉見る~~


 そして写真が来て、イズルとマウロの二人が飛行機をバックに写真を撮っていた。

 僕はそれを見て返信する。


 #イズル

 気をつけてな!!

 何か危なかったら、直ぐに逃げろよ


 送信して思う。

(何から逃げろというのだろう?)

 返信が直ぐに来た。


 #こだま心配しすぎ!!

 うん、もしなんかあったら逃げるわ!!


 それを読んで直ぐに、またメッセージが来た。


 #急に心配してどうしたん?

 こだまさー

 もしかして好きなん?

 うちの事?


 数秒、それには沈黙した。

 そして返信する。



 そうかもしれない


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