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ミレニアムの魔術師  作者: 日南田ウヲ
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 大学一年目の夏。


 大阪駅で徳島へ帰る友達を見送ると僕はその足でカフェに入り、頼んだマンゴージュースにストローを差し込んでテーブルに肘をつきながら、この夏をどう過ごそうかと考えた。

 大学の夏休みは長い。

 だから、まぁ・・急いで何かを決める必要は無いのかもしれないけど・・


 一気に飲み干して空になったグラスを振って、底を覗き込みながら、

 しかし・・、と思う。


 緩慢(かんまん)になって何もせず、だらだら過ごしていたら夏の時間なんてこのマンゴージュースのように瞬く間に無くなるんじゃない?


 絶対そうだろ?

 きっとそうさ。

 僕はそう思う。


 夏休みなんてさ、一気に飲み干したマンゴージュースの様にあっという間に空っぽになって、何も残らないんだよ。



 氷がカランとグラスの中で音を立てた。

 僕の考えが正しいと誰かが言ってるんだ、きっと。


 そう勝手に思うと自然に笑みが浮かんだ。



 で、それじゃあ、どう過ごす?

 うーん、そうだな・・・


 腕を頭の後ろに組んでカフェの窓から外を見るとぎらつく眩しい夏の日差しの中をバイクが走って来て、やがて視界から消えた。



 ねぇ・・

 バイクの免許を取るなんて良くない?

 だってさ、バイクがあれば日本の何処にでも行けるし、それに徳島に帰ったケイタにも会える。

 青く輝く瀬戸内に掛かる大きな橋をバイクに跨って走る自分なんて、ちょー素晴らしくない?


 だよね?


 あ、じゃあ・・それ決定。

 まず一つは、これ。


 さて、あとは何にするか。



 肘をついて空のグラスを振りながら、真剣に考える。夏の時間はこうして僕の側を過ぎて行くんだな。


 あと、いくつ目標つくろうか。



 ん、ちょっと待てよ。

 そんなにさ、僕、目標を幾つもクリアできるかな?


 だろ?


 いやいや無理だわ、絶対。

 だってさ、大学だって一つだけ絞り込んでやっと入試をクリアできたんだから。

 そんなに沢山目標なんて決めてもクリアなんて難しい。

 絶対、そう。

 そうだよ。


 じゃあ、どうする?


 まぁ、あと一つ目標決めるというところが、やっぱりぎりぎり良い線だよな。

 ・・そうだな、


 それでそのラス1(いち)だけど・・


 意外だけど、

 勉強する?

 だって、学生だしさ。


 だよなー。

 それは、賛成。学費、親に出してもらってる訳だし、やはり何か勉強しないとな。


 じゃあ、どうする?

 大学の講義の延長線の勉強でもする?

 いや・・・

 そいつはよくないな。

 なんかさ・・こう真面目過ぎてさ、それはやっぱ面白くない。

 何かニッチというか、

 マニアックというか

 そんな分野の勉強したい

 どこかそんなのないかな。



 あ、

 そう・・そう

 あれ、いいんじゃない?

 市立図書館で見つけた古いラテン語の辞典の翻訳。

 内容がさ、

 何か分からない辞典だけど、ラテン語なんて魅力的じゃない?

 だからそれを翻訳するというのは?


 了解。

 そいつにしよう。

 今年の夏は図書館へ通い、クーラーの効いた部屋でラテン語の勉強でもしようじゃないか。

 それが、無難でいい。



 で、いつから始める?



 僕は席を立ちあがり、カフェを出た。眩しい夏の日差しが檸檬色に輝く。


 早速、今日からはじめよう。


 夏の時間は瞬く間に過ぎて行くのだから。


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