その92.5.大皿にのせて
久しぶりの投稿です。宜しくお願い致します。
***
調印式の日の早朝。鶏政の厨房にはバールと白狐がいた。
「さて!今日はめでたい日だとアラクネが言ってたからな。ヤキトリが喜んでくれそうな料理をたくさん作るぞ白狐!」
「しかしバール様。私は料理がからっきし駄目なのですが」
バールのその腕捲りをしてエプロンをかけた姿には、気合の程が感じられるほどだ。
白狐といえば片膝を立てて床に手をつき、微動だにしない。
「まぁそう言うな。俺が手順を教えてやるから、白狐も一緒に料理しよう。白狐が作った料理ならきっとヤキトリも喜んでくれる」
「そうでしょうか?私は『くそぅイケメンの作った料理は料理までイケメンかよ!どうせ俺はイケメンじゃないからな!じゃあな!』となりそうな予感がします」
「うん、脳内再生完璧だな!!しかし、今日はハレの日だ。きっと俺たちの国の料理も気に入ってくれるはずだぜ!」
この街では当たり前のように蛇口を捻れば水が出る。
かめに水を貯めて使用する他の街や国では考えられないだろう。
しかしこの街の常識となりつつある。
蛇口を捻り水を出すと、白狐にも丁寧に手を洗うよう促す。
「おっと、料理中は何があっても床に手をつけるなよ、汚いからな?」
「はっ、分かりました」
手を拭いながら、白狐に持参した袋を持ってくるよう指示する。植物の皮をなめしたようなもので編んだ、抱えるほどの袋。
木の升を使ってその中のものを計るように取り出す。行商人から仕入れた、東の国の米だ。
米と一緒に、豆を発酵させた粘度の高いペースト状のもの仕入れた。
ざるに数度、升からざらざらと落とされた米は、やや黄味掛かった色を見せる。
米をボウルに移し、水を注ぐ。
するとたちまち米から煙立つように糠が浮き出てくる。
それをさっと流し、水を注ぎ、軽くかき混ぜて流す。
これを数回、しつこいほど繰り返し、水が透明に近くなれば完了だ。
「水をたっぷり注いだら、そのまま置いておいてくれ。次の作業に移るぞ」
次に用意したのはサハギンの村から仕入れた塩漬けの魚だ。
塩漬け、と言っても塩味のしっかりついたものではなく、程よく水分の抜けた程度、甘塩。
頭を落とし、半身におろして切り身にしていく。
切り身に塩を軽く振り、網に乗せて弱火の直火焼き。
焼いている間に先程の米の水を切り、鍋に移す。
水加減は適当、白狐に米を抑えるように手を入れさせ、掌の厚さ程度に水を入れる。
あとは沸騰するまで待ち、沸騰したら少し匙でかき回して炊ける匂いがするまで火にかける。
沸かしておいたお湯には豆を発酵させたペースト状のもの…『味噌』と、サハギンのお茶(出汁)を合わせて味噌汁にする。
具材は主に根菜だ。大根やにんじん、あとは葉物を。
「さあ、ヤキトリのヤツ、喜んでくれるかね?」
炊き上がったツヤツヤの白いご飯をおにぎりにして、あとは大皿にのせて。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




