その92.腰砕け
無事何事もなく調印式を終え、イヴが用意してくれたグランウッド共和国の旗(これが木のイメージが上手いことデザインされていてカッコいい)、クレア公国の旗、同盟会議の旗が関所の高い塀の上に掲げられた。
これと同時に、帝国には『不可侵領域の国家』であると宣言したのだ。
帝国は易々と手に入れられると考え、この潤沢な経済をその第一王子に与えようとし、俺やシェロちゃんに対して『国家樹立の反逆罪』を示した。
おかげさまでというか、結果的に、シェロちゃんを王とするグランウッド共和国を作り、俺たちや街のみんなを守る事になった。
これに帝国がどう出てくるかはわからないけど、それも来てみてからだな。
真っ白なドレスのシェロちゃんとイヴはと言えば、堅苦しい調印式を終え椅子から離れ、ハグしたりドレスの仕立てがどうだとか俺との馴れ初めとか俺の癖がどうとか俺の好みだとかどうでもいい話に花を咲かせてキャッキャしている。
イヴと指を絡ませてコロコロと表情を変えるシェロちゃんは、こないだまで青い顔でニタニタしていたとは思えない。
それにしても。
シェロちゃんのドレスは大きく胸が開き、マシュマロの半分が露わになっていて今にも溢れそうだ。フレアスカートから伸びる足がいつもに増して綺麗に見える。
イヴのドレスも襟元までしっかりと包まれているのに、胸の上下はよく見ると透けている。タイトなスカートに入ったスリットから伸びる足も青白くて妖艶である。
隣でニコニコとしている雪風は完全に近所の子供である。
フワッと金色の風が周囲を駆ける。
「ゴシジンサマ!オメデトウ!」
催し物が終わったことを察してピクシーたちがどこからともなく現れて飛び回っている。
「ほら!みんな今日は盛大にパァっとやろうぜ!俺の奢りだ!」
豊穣の神と東の国で祀られていたバールは、今やエプロンをかけて両手に大きな皿を乗せている。
イケメンはどんな格好だってイケメンなのだ。
『恐怖と親愛を司る神竜を仕えし者』
『 気高き狼の漆黒にその身を包み』
『森の守り人ドライアド、淫魔サキュバス、人々を統べる高貴なエルフを手篭めにす』
『その者ヤキトリ』
『一息吹きかければ鉄の馬を走らせ』
『一息吹きかければ水路を通す』
『その者ヤキトリ』
『そよ風のように舞い踊る』
バールがいつか聞いた歌を歌いながら調印式を行ったテーブルに料理をスタイリッシュに用意する。
その手伝いとばかりに目にも止まらぬ速さでテーブルや椅子を次々にセッティングしているのは狐面の幼女、白狐だ。
「今日はヤキトリのめでてえ日だからな!旨いものを用意した!食べてくれ!」
ウインクを振り撒くのはやめろ。集まった女子たちが腰砕けなっているではないか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




