その88.近づく光
「ヤキトリ王!ヤキトリ王!ヤキトリ王!」
俺の建国宣言に、集まっていた街の人々の歓声が沸く。
「ヤキトリ王のもと、帝国をやっつけろー!」
「やっつけろー!」
歓声がいつの間にかシュプレヒコールにかわり、人々の顔が笑顔から醜く歪んでいく。
「静かにしてくれ!」
「頼むから一旦静まってくれ!」
何度かの呼びかけで、次第に静まり返り、風が葉を揺らす音に変わる。
「いやー、ちょっと待ってくれ。王になるのは俺じゃなくてこっち!」
俺の指差す先には、俺の隣に立ってモジモジするマシュマロ。そのまま指先でマシュマロをぷにぷにしてやる。
「グランウッド領主、シェロ・グランウッドをグランウッド共和国の女王とし、また、このヤキトリは、シェロちゃん、シェロ・グランウッドと結婚し、王配としての地位を賜ることをここに公告する!」
グランウッド建国、シェロちゃんが女王、シェロちゃんと俺が結婚、と、色々な情報を処理できない街の人々は無言のまま口を開けて呆然と立ち尽くしている。
それもそうだろう。今帝国が攻めてくるかもしれないというタイミングで結婚発表だ。
なにを馬鹿なことをとなるのも当然だろうな。
「グランウッド建国バンザーイ!!シェロ女王バンザーイ!!ヤキトリ様シェロ様ご結婚バンザーイ!!!」
「バンザーイ!バンザーイ!」
俺の想像とは違って、街の人々は共に喜び、涙を流す者までいた。
いつまでも止まない万歳コールに、俺はシェロちゃんの肩を引き寄せ、くちづけした。
☆☆☆
俺たちはシェロちゃんの屋敷に戻り、明後日、いやもしかしたら明日に迫る帝国への対応を遍く考えるべく……悩んでいた。
クレアのイヴ様とかいうあの時代錯誤の女王様が、一体どこまで協力してくれるのかも分からない。
間に合わないかもしれないし、何か強力な一手を、考えもつかない采配を下すのかもしれない。
考えても自分自身で何かをおこす気にはなれず、また、何かを出来る気もしなかった。
ベッドに2人並んで座るシェロちゃんは、結婚の嬉しさと迫り来る恐怖とで混乱し、ニヤニヤしながら青い顔をしている。
外は既に薄暗くなり、灯したランプの明かりに浮かぶその顔は少し不気味でさえある。
例えシェロちゃんの可愛い顔と言えども。
少しざわついた外に、窓に掛かるカーテンを捲る。
「シェロちゃん…あれは何だと思う?」
海の向こうの空にたくさんの点々とした光。
俺の指さす方向を立ち上がって確認するが、シェロちゃんも「な、なんだろ!凄い!わかんない!」と震えながら繰り返すばかりだ。
「ちょっと様子を見てくる。シェロちゃんはここで待っててくれ」
窓を開け、『グラヴィティ』で空を蹴ってその光に向かう。
もしかしたら、帝国からの刺客が早くも奇襲にやってきたのかもしれない。きっとシェロちゃんもそう感じたんだろう。
振り返ると窓から身を乗り出してこちらに手を伸ばしていた。
まるでドラマのワンシーンみたいじゃないか。
光はこちらに近づき、こちらも光に向かって近づいていく。
その光の正体は、ランプを手にした数百の武装した鳥、いや鳥の羽根ではばたく鳥人ハーピーだった。
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