その87.建国
海の向こうのクレア公国。
そちらにサキュバスを正式に使いとして送った。
帝国が提示した出頭期限まであと2日。
その前には帝国の兵たちが押し寄せてくるだろう。
あと2日。
2日ではあるが、それまでに出来ることはやらねばならない。やっておくことがある。
出立したサキュバスの尻を見送り、サハギンの村に向かう。急いでいるときは空路が便利だな。
空路と言っても決まった「道」があるわけじゃない。
魔法で飛んでビューンだよ。
で、何故サハギンの村にビューンかと言うと。
実はサハギンの鍛治工場に頼んでいたものがあったのだ。
グラビティで空を行き、しばらくして潮風を感じ始めると、サハギンの村が見えてくる。
今まで意識していなかったが、海の向こうには島か岬か、陸がある。
いかに外を見ていなかったかという事だ。
今回帝国が手を出してきたのも、外に意識を持ってなかったからなんだ。
サハギンの村が近くなると、こちらに気づいた二人のサハギンが元気よく手を振る。
屋敷に来ていたヒラメとカレイの代わりの門番だろう。
サハギン達の前に降り立つと、二人とも目を潤ませていた。
「ヤキトリ様、絶対に死刑など受けてはなりません。ヤキトリ様は、感謝されても罰を受けるようなお方ではない。我々はヤキトリ様とシェロ様をお守りするため剣を取ると決めま…」
「気持ちは有難いが…大丈夫だ。任せておけ」
「「しかし!」」
並ぶ二人の間を通り、肩を軽く叩くと、強張っていた身体を緩ませた。
「今日はそれを伝えに来たのと、あとは注文していたものを取りに来たんだ」
拍子抜けしたようにポカンと口を開けて振り返る二人はさておき、村の奥へと歩みを進める。
乾いた土を歩くと、土埃が風で舞う。
相変わらず村の人々はそれを全く気にしないように見えた。
日差しも熱いが、作業場が近づいてくるとますます熱くなる。
中では鉄を打ち、剣などの武器を作っているんだ。
「おう、ヤキトリ様じゃねーですか!待ってましたよ!」
初老を少し過ぎた長くて白い髭のサハギンの男が、服の袖で額の汗を拭いながら作業場から出てくる。
中は暑いから、と制し、作業場に戻る男。
すぐに出てきた男は手のひらサイズの木箱を手にしていて、それを徐に目の前に差し出した。
「これは、つまり、そういうことで?ヤキトリ様」
「ああ、つまり、そういうことさ」
「こりゃ仕事なんてしてる場合じゃねえ!!おいおめーら!火を落とせ!馬鹿野郎!!仕事なんかしてんじゃねえ!」
☆☆☆
俺とシェロちゃんは並んで立っている。
身なりは普段通り。だが、それでいい。
ギルド前の広場に置かれた木箱の上、2人で並んで立っているのだ。
「みんな、聞いてくれ。」
広場に集まった商人たちやギルドのメンバー、それにサハギンやドワーフ達。
俺の言葉1つ1つを拾うようにその耳を傾けている。
「ここまで、このグランウッドに人の往来が増えたのは、みんなのおかげだ!ありがとうございます!しかし、明日、いや今日には帝国の者達がここに来るかもしれない。俺は、みんなの生活や人生を守りたい!誰にもその人生を左右されるべきではない!」
静まり返る中、誰も口を開くことは無かった。
「この街は、帝国から"正式に"国として今後の行く末をどうするべきか判断を迫られている。」
「帝国をやっつけろ!」
「帝国は滅べ!」
途端に広場は罵声で埋まる。
「しずかに!」
俺の声にその怒声も一瞬で静まる。
「そこで俺は、海を挟んだ隣国『クレア公国』より支援を申し受けた。そして、このグランウッドを『グランウッド共和国』とすることを宣言する!!」
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