表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/101

その84.くちづけ

一週間という短い期限の中で答えを導き出さなければならない。


『グランウッド領主シェロ・グランウッドも対象だ』


答えが見つからない限り、シェロちゃんも捕らえられ、死刑になっちまう。

そんなのごめんだね。




シェロちゃんの屋敷、その二階にある部屋を一つ借りている。

ベッドが一つ、机が一つ。細々したものもあるが、そんなに多くはない。


窓の外に目を向けると、暗い。夜だ。

何も出来ずに1日が終わる。

何かしなければ、何か手を打たねば、と焦れば焦るほどに、考える事が難しくなる。


ベッドに横になり、どうするべきか考える。


帝国竜騎士達には苦渋を飲まされ、一度は殺された。

そんな竜騎士よりも強い奴らがいるかもしれない。

もし奴らが下っ端だったら?


死ぬのは嫌だ。


シェロちゃんや街のみんなが死ぬのはもっと嫌だ。


しかし。


立ち向かうにしても戦力がない。

この街にいるのは商売人と一般人。

ほんの少しの冒険者。


それに、そもそも帝国に対して歯向かうようなバカじゃない。


戦力としては…俺、バール、自警団、それに雪風くらいか。


俺の魔法も相手に読まれているし、実質戦力は雪風だけだな。



コンコン


ノックの音が狭い部屋に響く。


「ヤキトリ様、入っても…いい…かな?」


少しだけドアを開け、声だけのシェロちゃん。


ベッドから身を起こし、端に座って招き入れる。


「ああ、どうぞ。シェロちゃんの家なんだ、遠慮は要らないよ」


ゆっくりとドアが開き、シェロちゃんが姿を見せる。


シェロちゃんは少し透けたスリップ一枚で、枕を抱えてゆっくりと部屋を進み、俺の隣にぴったりとくっついて座った。


「ヤキトリ様。私たち、どうなるのかなぁ…。聞いたよ、ヤキトリ様と私は死刑だって。死ぬのはイヤだけど、みんながこれからも生きる事が出来るのなら、私は死んだっていいの。それに…ヤキトリ様がまた居なくなるのなら死んだ方がマシだよ?どうせ死ぬのなら、ヤキトリ様の顔を見ながら死にたいの」


俯きながら小さな声で不安を訴えている。

ポタ、ポタ、と抱えた枕に涙が落ちた。


「もぅヤダよぉ〜」


シェロちゃんが案じているのは自分自身の安全ではなく、俺や街のみんなのことなんだ。


「大丈夫。俺も、シェロちゃんも、みんなも死なない。死なせやしない。きっと守ってみせる」


シェロちゃんの肩を抱き寄せ、強く抱きしめる。


「ヤキトリ様…」


頬を涙で濡らしたシェロちゃんが上目遣いで俺を見つめ、そのまま瞳を閉じた。


ゆっくりと、ピンク色の唇に俺の唇を重ね…


「はいはいごめんなさいね〜」


足元の陰からシュルシュルとサキュバスが現れ、シェロちゃんが思わずパッと離れたかと思うと、枕に顔を埋めてベッドに倒れこんだ。

てめえこのやろうホントに許さんからな。


「旦那、怒らないで聞いて。あたし、ちょっといい案を思いついて。その為には旦那の口づけが必要なの!」


サキュバスが顔を真っ赤にして訴える。

全然わからない!助けて!


突然身悶えするサキュバス。

「あ…はぁ…んっ」


なんなんだよこいつ…。


サキュバスが内股でモジモジとして屈み込む。

「んっ…んっふぅ…あっ」


すると突然サキュバスの背中から大きな蝙蝠の羽が飛び出した。

家の中では広げて欲しくない大きさだ。


とても邪魔。いろんな意味で邪魔。


「旦那、あたしがなんだったか、覚えているかしら?」


「そりゃ、名前の通り『サキュバス』、だろ?」


「ええ。あたしはサキュバス。そしてその魔力の根源は男性の精力…。ちょっと頼りにしたい方が居て。そこに行くのに魔力がとても必要なの。そして、その方の力をお借りできれば…帝国ともイーヴンでいることが出来るわ」


そう言うと、サキュバスは少しはだけた肩を直すように、ゆっくりと指を這わせる。


あまり意識して居なかったが、肌のハリ、艶、少し汗ばんでいるような、キラキラとした輝き。

ほんのりと香る甘いバニラの香り。

こいつ、こんなに色っぽかったっけ…。

うっとりと薄く目を閉じた三白眼に吸い込まれて行くようだ。


「ほ、本当に、頼りにして、信頼できる人物なんだな?」


生唾を飲み込む。


「ええ…この窮地を助けてくれる、とても頼りになる方よ…だから…ね?」


目を瞑り、俺の方に唇を徐に近づけてくる。


「わかった。頼む」


サキュバスと唇を重ねると、唇をこじ開け、ねっとりと舌を絡ませてくる。


その瞬間、身体の奥底から心臓を絞られるような感覚に襲われるが、しかし恐怖はない。


身体の力が段々と抜けて行き、座っている姿勢を保つのがやっとだ。


ゆっくりと舌と唇が離れ、唾液が糸を引いてサキュバスと繋がったままだ。


「たしかに…。ヤキトリ様の魔力、決して無駄にはしないわ。必ずやこの窮地を救ってみせる」


サキュバスは唾液の糸を指で絡め取り、部屋の窓を開けて足を掛ける。


「では、また明日にでも、続きをしましょう?」


「あ、うん」


窓の外に一歩踏み出し、落ちたかと思った瞬間に瞬く間に空へと飛び去って行った。




「『あ、うん』じゃなぁぁぁぁぁい!!!ヤキトリ様!私も居るんだからぁぁぁぁぁ!!」


あ、シェロちゃん、どうも…


ここまでお読み頂きありがとうございます!

感想、レビュー、評価、レビュー、とにかくレスポンス頂けると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ