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その7,知らない、天井

「知らない、天井だ」



 ハッとして目を覚ますと、固い板か何かの上に横になっていた。


「目を覚ましたんだね!よかった!おはよう!ところで知らない天井ってどういう意味??」


 無邪気にシェロちゃんが尋ねる。


「いやちょっと言ってみたくてですね、深い意味はないんだ」


 この『ジョークやギャグを言った後に説明させられる』気持ち、助けて。


「というか、俺はあれからどうやってここに?というかここはどこ?」


 身体を起こして見渡して見ると、どうやら医務室のようなところに横になっていたようだ。

 木製のガラス戸のついた棚には得体の知れないものが入ったガラス瓶が並び、本棚には大きさや高さがばらばらに並んでいる。

 本棚は高さ順に直したい。


「あの後大変だったんだよ、ぐったりしてるヤキトリ様を取り囲んで『この男を殺せばワンチャン魔法が手に入るかもしれんゾイ!』とか言いはじめた人たちがいて!」


シェロちゃん、誰か知らんが声色を真似て物騒なことを言いなさんな。


だが気絶している間にもバフは掛かっていたようで、先を『読む』事で全て受け流していたとか。どういうことだよ。


で、シェロちゃんがギルドマスターに頼み、ここまで運んでくれたらしい。



「もう大丈夫だよ。ありがとう。それで、ギルドに登録をしたいんだけどさ」


「その件なんだけど…」



医務室のドアが勢いよくバァンッと開くと、輝きのない銀色、どちらかというと白と言える髪、白いまつ毛のすらりと背の高い、うさ耳女性が入ってきた。


「やぁやぁ、目が覚めましたか!災難でしたな!!

私が当ギルドのマスター、兎人族(ラビットぞく)のイナバと申します!

当ギルドから最上位魔法使用者が出るとはいやぁ目出度(めでた)目出度(めでた)い!」


「いやまだ登録とかはこれからしようと思ってて!!」


 大振りに手を振って否定したが、あまり聞いていないようだ。


 まぁギルドマスターがそう言うなら、俺は既にここのメンバーと認められたと思っていいんだろう。



「一応、登録証も渡しておきましょう」


 シルバーのチェーン、金色に輝くドクロのペンダント。


 目のところには赤紫の宝石がはめ込まれている。

 どうせなら小学6年生の時に欲しかったデザインだわ。


 ちなみにランクごとにペンダントヘッドの形が違う。

Cランクはドラゴンが剣にクルッと巻きついている魔剣デザインで、

Dランクは魔書をイメージした豆本(なぞなぞ100選)、

Fランクだとよくわからないマスコット。


 何故だろう。胸が痛い。だが懐かしさがあるよな。




「とりあえず登録用紙にサイン、属性診断、魔力と武力の適正診断をやっておいてくださいな!じゃっ」


 ギルドマスターは、ベッド脇のローテーブルに登録用紙を叩きつけて、手のひらをひらひらとさせながらスキップして出て行った。なんか知らないが乱暴なやつだ。



 視線を移した先の登録用紙には、既に『ランクB』と書いてある。

 最上位魔法があるからだろう。



「ヤキトリ様すごいねー!ランクBなんてこの街どころか、この国にだって居ない冒険者ランクだよ!」


 うーむ、チートはやめてくれと言ったのにな。


 しかし最上位魔法を1つ使えるからといって、俺の他の能力まで有能とは限らない。

 いや使っているわけではないか。自動再生みたいなもんだな。

 まずはその各種診断をこなそう。




________________________________

各種診断の結果。


属性:無属性(全属性適正アリ)


魔力:ランクB


武力:ランクB

________________________________




 属性診断では、火、風、水、土、光、闇の中からどの属性にあるのかを判断する。

 風属性のシェロちゃんはもちろんのこと、この世界に産まれた者は必ず1つだけ属性を持っている。


 属性を2つ以上持っていたのは、伝説の勇者と呼ばれた者達だけなのだそうだ。


 属性診断はピクシーを召喚する事ではっきりするらしい。

 魔法陣に立ち、魔書を開く。出てきたピクシーで決める。

 このピクシーは隷従することはないらしい。


 一度召喚されればまた魔法陣から戻っていく。


 ところがどっこい全ての属性1匹づつ、しかも子供のピクシーときたもんだ。帰れ。俺の耳や鼻の穴に顔を突っ込んだり引っ張ったり忙しい。何かをピクシーたちで喋ってるのか、どうでもいいが耳元で騒ぐな。帰れ。



 俺は風属性だと思っていたが風に限らず全ての属性要素を持っていて、尚且つどの属性にも属さない、らしい。

 なんだよこの世界でも中途半端か。どうすんだこの6匹の子ピクシー達。帰れ。



 また魔力に関しては未曾有の量であるとして、測定不可能。

 魔力診断は、魔法が使えるギルドメンバーに魔具を通して魔力を流す事で診断する。

 しかし測定を担当した5人全員が失禁&失神してしまった。

 皆うわ言のように「タコワ〜サ」とか「カラア〜ゲ」とか呟いていたらしい。

 俺の深淵を覗いたな?深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ。


 武力診断は1対1の模擬試合で行う。どちらかがギブアップするか気絶などで戦闘不能になったら終了。

 俺は『読』のバフ効果で全く相手の攻撃が当たらなかった上に、相手の急所も読み、ものの数分でクリア。

 これも測定不可能となった。



 とりあえず俺は登録用紙にサインをし、晴れてこの街の冒険者となった。


 予定と違うのは、ちょっと寝首を掻かれそうなのと、6匹の子ピクシー達がまとわりついた事だ。隷従しないんじゃなかったか?帰れ。


 しかしどんな状況でも死ぬことはない。『読』のバフのお陰で寝ていても平気だ。



 なんだかんだで夕日が沈む。


 あっという間にまた夜がやってくる。

 あの家に一旦戻ろう。


ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!

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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
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