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その82,焼き鳥

宿舎に戻る頃には夕暮れどころか既に陽も落ちて、集まっていたみんなも酒を飲んで騒いでいた。


街のよく分からない雑貨屋の様なリサイクルショップみたいな…とにかく変な店で鉄の棒と網を買った。

もともと中継地点として機能していた街だけあって、古道具や中古の武器に防具、何に使うか分からないものまで沢山ある。


革袋から長い鉄の棒をするする出すと、革袋の事を知らない人たちから歓声が上がった。まあそりゃそうだ。



その買ってきた鉄の棒を二本、網を置いた石の竃に通し、遠火の焼き台の完成だ。


「ヤキトリ様〜!遅いよぉ〜!」


「ヤキトリ様!私、性奴隷としてだけではなく!お料理のお手伝いも致しました!」


宿舎の方からシェロちゃんとリョーコがボウルと大皿を抱えて出てくる。

その後ろから、鍋を片手に追いかけているドライアド。


ボウルと大皿をテーブルの上に置き、シェロちゃんとリョーコはキャピキャピと腕を組みながら、笑顔で見つめ合いながら話している。


「もう〜リョーコさんったら串に刺すの凄い早くて!すぐ終わっちゃったんだよ〜!」


「シェロちゃんだって、唐揚げ揚げるの凄く上手かったじゃな〜い!」


仲良くなってる。何があったんだよお前ら。


ドライアドが少し悔しそうに睨んでいる。こわい。


それはそうと…俺が街に出ていた間に、ザンギは揚がっていて、フェルニルの肉も串に刺さっていた。


肉と肉の間にネギが挟んである串。ねぎまだ。

もも肉を刺した串や皮の串もある。

ネギだけの串、これが美味い。イカダってやつ。



それを鉄の棒に渡し、炙り焼きにする。

半分は塩コショー、もう半分には作っておいたタレを刷毛で塗った。

石で積んだ竃の炭に肉の脂とタレが滴り落ち、香ばしい香りを漂わせる。

辺りには白煙が上がってだいぶ煙たくなり、みんな咳き込んだり涙を流していた。

お前ら風下に移動するなりしろよ。


「この街でもお馴染みになった、ザンギだ。みんな食ってくれ」


俺が監修した、と言ったら変だが、鶏政での目玉メニューにもなったザンギ。

今や他の店でも真似をして出している。

と言っても、鶏政には及ばない味だが。


俺も一つ食べてみる。シェロちゃんが揚げてくれたのは初めてだな。


大きめに切った肉はじっくりと火が通されていて、表面から香り立つ湯気が揺らめく。

一口かぶりつくと、中から火傷しそうなくらいに熱い肉汁が勢いよく飛び出し、口の中を肉が転げ回る。

ハフハフと冷ます様に、リズミカルに呼吸をすると、その旨味が舌を蹂躙し、噛む事を躊躇させる。


やっと落ち着きを見せた一口のザンギを、奥歯で噛みしめた途端に新たな肉汁が溢れ出し、また口の中を弄ぶのだ。


表面はサクッと香ばしく、中から溢れる肉汁はジンジャーとガーリック、醤油が効いていて後を引く。


ザンギを飲み込み、その余韻が消えぬうちにビールを流し込む。

初めて飲んだビールの様にぬるいやつじゃなくて、キンキンに冷えたやつだ。


ビール樽を見ると、周りに氷が張っている。

うむ。ビールはこうでないと。


「ッアーーッ!美味えー!」


ビールを飲み干し突然大声で叫んだ俺を、静まり返ったみんなが注目する。


バールがグラスを両手に持ち、片方を俺に差し出した。


「なあヤキトリ、乾杯がまだだったな。音頭を取ってくれよ!」


俺の真横でグラスを掲げ、俺にウインクするバール。


…トゥンク…


待て待て、いかんいかん。なんだこのイケメンめ。

おっさんをトキめかせるとは!なんてイケメンなんだ!


「お、おほん。そ、そうだな。それじゃ…」


皆が静かにこちらを注目したまま、俺はグラスを掲げる。


バールが掲げたグラスを俺のグラスにつけると、静まり返っていた皆も勢いよく頭上に差し出した。


「みんな、ありがとう!これからもよろしく頼む!乾杯!」


「「「乾杯!!」」」


まるで号令の様に、次々とグラスを空けていく。


「あまり無理をするなよ!」


その声が届いているのか、いないのか。ま、笑顔で飲む酒は美味いよ。


空にしたグラスをテーブルに置き、石竃につく。




風向きが変わり、フッと香りが鼻にかかる。

懐かしい焼鳥を焼く匂いだ。

いつか嗅いだ匂い。香ばしい香り。




ああ、焦げちまう。

焼いていた串を返し、裏面にも火を通す。

焼き色のついた肉からはジュウジュウと音を立てて肉汁が染み出している。

そこに塩コショー、タレをつけて火を通していく。


「なあヤキトリ。この串焼きはなんて料理なんだ?肉を串で焼いて食うことはあるが、タレをつけて焼く料理は見たことがない」


隣でザンギを頬張りながらビールを飲むバールが、石竃の上の串を指差す。


くるくると串を回して返しながら、タレを塗りながら答えてやる。


「これは『焼き鳥』だよ。俺の『街』ではビールに定番のつまみだった。串に刺した鶏肉を焼くんだ。もちろん、鶏肉だけじゃなく、豚肉の串も『焼き鳥』だけどな」


「熱いからな」とバールに焼けた一本を手渡す。

気にしていたタレの『焼き鳥』だ。


他の焼けていた串も配っていく。この人数じゃまだまた焼かないと足りないな。

どんどん焼いていこう。


焼き鳥を頬張りながらビールを飲むこと。


なんだろう、ずっとこうしたかった気がするが思い出せないな。

まあいい。みんなが喜んで食ってくれてるんだ。

今夜は楽しもう。俺も食うぞ。飲むぞ。



焼き鳥はそうだな、まずはイカダだ。少し焦げ目のついた香ばしいネギ。

噛むと中からチュッと熱々の汁が飛び出してくるんだ。




そこにキンキンに冷えた生を一気に注ぎ込む。ガソリンだ。俺のガソリンだ。今日はハイオク満タンといこうじゃないか。






グランウッドで、串に刺して焼いた料理が何でもかんでも『ヤキトリ』と呼ばれる様になったのは、そんなに遠くない日だった。

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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
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