その74,背中合わせのスキットル
山間部から竜騎士達が一気になだれ込んできた。
竜騎士が乗っているラプトルというドラゴンは、足が長く、手が短い。その異様な姿に少し恐怖を覚える。
その高さも1メートルほどだが、大きく見える。
乗っている竜騎士は、銀色に鈍く輝く甲冑に身を包み、長剣や長い円錐型の槍を持っていた。
剣を体の前に構え、近づいてくる竜騎士に備える。
バールはまだ刀を抜かず、目を閉じて柄に手を添え、右脚を前に出してグッと力を込めた。
地響きが次第に大きくなり、目の前にラプトルが迫った時、バールが大きく頭上に半円を描く。
目にも留まらぬ速さで、刀を抜いたのだった。
数頭のラプトルの首が宙に舞い、鮮血が吹き出す。
首を失った胴体はその場で方向転換し、他の竜騎士達にぶつかって行く。
俺に向かって来た竜騎士が長剣を一気に振り下ろしてくる。
『ディフレクト』の効果で右側に受け流し、甲冑の右脇腹の隙間を『読』んで突き刺す。
不謹慎にも『相手が甲冑なら人間じゃないんだ!僕だって!』などと思いながら、その血飛沫を浴びる。
仲間を倒されたことに対し、驚きと怒りを露わにして次々と襲いかかってくる竜騎士には、既にその剣を受け流していくことしか出来なくなってきていた。
更に頭上には、他の竜騎士とは異なる装飾の施された甲冑を纏った飛竜騎士が舞う。
「異教徒らめ!【我が神よ 我は忠実なる神の下僕 我にその力をお貸しください 神に捧ぐは異教徒の魂】 神にその命捧げよ!『アンチマジック』!」
飛竜騎士が詠唱し、こちらに向かって黒い霧のような魔法を飛ばした。
俺が胸に不整脈のような、異様な衝撃を受け一瞬たじろぐと、その隙を見て竜騎士が円錐の槍を勢いよく伸ばして攻撃してくる。
剣で受け流すタイミングを逃し、左肩に槍が突き刺さった。『ディフレクト』が解除されてる!マジかよ!!
「ぐぁぁぁぁぁっ!!!」
感じたことのない熱い痛みで思わず仰け反る。
突き刺された左肩から槍が抜かれ、激しく血が吹き出し、その場に膝をつく。
「ヤキトリッ!!『ヒール』!」
バールが転がりながら俺の横につき、『ヒール』を掛けてくれたお陰で肩の傷が少しマシ程度には良くなる。
しかし回復に気を取られたバールも、竜騎士に後ろから長剣で切りつけられる。鎧を着ていたとはいえ、その鎧も割れ、背中に深手を負ってしまった。
「『ディフレクト』ォォォ!」
次の攻撃を受ける前に『ディフレクト』で防ぐ。
しかし視線の先の魔法竜騎士がまた詠唱を始め、俺達の周りには竜騎士が取り囲んでいた。
「これまでか…ちくしょう。バール、大丈夫か?」
バールに『ヒール』、鎧には『リペア』をかけた。
パキパキと鎧が音を立てて元に戻る。
「すまんヤキトリ、しかしもうこの状況では…」
『ディフレクト』の効果で攻撃を避けるバリアの中、バールと背中合わせで座る。
「まぁ何かしらの策はあるだろ。今のこの状況を打破しないとな。バール、あんたは酒もタバコもやれるのか?」
2人とも肩で息をし、敵に囲まれている絶望的な状況だ。
「こんな時に…いや、酒もタバコもイケるぜ。あるのか?」
背中越しに会話するが、バールが少し笑ったのがわかった。
革袋に手を伸ばし、中からタバコ、オイルライターとスキットルを取り出す。
タバコはまとめ買いをしていたが、加熱式タバコに切り替えて少しで禁煙していた。
スキットルは何かオシャレっぽいと思い買って使っていたものだ。独り、部屋で。
オイルはまだ大丈夫そうだ。シュボッと独特の音と匂いを立てる。
タバコに火をつけ、ライターとタバコ、スキットルを後ろ手にバールに渡す。
同じく後ろからシュボッと音がし、スキットルを開ける音、喉の鳴る音。
「この酒は美味いな。蒸留酒か。それも良く熟成されている。鼻に抜けるのは潮風とスモークされた果樹の香りだ」
「ああ、俺も良く分からんが、高い酒なんだ。とっておきの奴をこいつに入れて飲んでた」
バールからタバコとスキットルを受け取り、俺も一口飲む。
緊張で乾いた喉をヒリヒリと焼くような酒に、もう一踏ん張りする力を貰った気がする。
「終わったらコレで乾杯でもしよう。ツマミも用意してやる」
「楽しみだな、ヤキトリの作る飯は美味いと聞いた。絶対だぜ?」
俺たちはそう言うと立ち上がり、剣と刀を構えた。
頭の先から足のつま先まで、アルコールが染みていくような熱い感覚。
見上げると、また黒い霧のような魔法が俺たちに飛んでくるところだった。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
拙い文章ですが、評価、レビュー、感想、ブクマなど頂けますと幸いです!!




