その72,ポンポチ野郎
早ければ明々後日には帝国の制圧部隊がドラゴンに乗ってやってくる。
俺は屋敷の円卓に置いた紙に指示一覧をドライアドに書いてもらい、それぞれに伝える。
グルーンとサハギンの村には早速使いを出し、防衛と避難の依頼。
街の人たちは特別な目的がある者以外、外壁より内側で退避するようにしてもらう。
農場で働くエルフ達も当面は休みとし、牛やフェルニル達も畜舎に強制引きこもりだ。
シェロちゃんとサキュバスは街に残り、サキュバスは人々の指示と何かあった時の連絡役、シェロちゃんは怪我人などが出た時の回復役だ。
ドライアドは宿舎に戻って農場の人たちのケアと護衛。
俺、雪風、バールは寝床で迎撃準備。俺はまず白狐から連絡が入り次第、街や宿舎などに『ディフレクト』を『エンチャント』。
雪風は念の為空の守りも視野に入れ、ワイバーン態での待機。
バール、戻った白狐にも『ディフレクト』、『リテラシー』を『エンチャント』、迎撃に備える。
「今晩はまだ向こうも出発前だ。宿舎の方で勝利を願い、主要メンバーで宴といこうか」
バールが俺の手を強く握りしめ、黙って頷いた。
***
「ヤキトリ様は危機感がありませんわ」
あ、その冷たい目、久しぶりだね。
「街のみんなも怖がってるんだよ〜!」
まるで汚物を見るようだねシェロちゃん。ゾクゾクするね。
「ヤキトリの旦那、怖いから一緒のベッドで、ね?」
どさくさに紛れて胸を押し付けてくるな。しかし今なら靡いてしまいそうよ。
「我はワクワクしてきたのだ!悪い奴らをやっつけるのだ!はー!今夜は寝れないのだ!」
張り切りすぎて辺り一面焼け野原とかやめてくれよ。
「ヤキトリ、悠長なこと言ってられないぜ?」
「バール様の仰る通り…」
バール…裏切り者め…。
もう!なんだよ!みんなして責めて!壮行会でもしようと思っただけじゃないの!!
宿舎はエルフ達が恐怖で怯えている、そんな宿舎で宴会なんてイカれてる、血も涙も無いのか、鬼、悪魔、このポンポチ野郎。
そんな批判の声に晒されて、帝国の奴らが来る前に心が折れそうだよママ。
てかポンポチ野郎って言った奴誰だ。
「わかったわかった。ごめんて。俺はみんなの緊張を少しでもほぐしてやろうと思っただけだよ。この街は多種族が仲良く暮らしている。もしも攻めて来るとしたら人間族だけだと思っていたが、まさにその通りだった。今回初めての防衛戦になると思うし、俺自身、もしもの事があるかもしれない。だからこそ、と思ったんだよ」
俺には前の世界ではもちろん、こっちに来てからもこんな大規模な実戦は初めてだ。
人間同士で戦い、剣で斬り合って血を流して勝利を掴む。
こんなこと想像も出来ないな。
とはいえ、向こうは殺す気でやって来る可能性が高い。
こちらも命賭けて戦わねば。
あとはどれだけ『ディフレクト』の効果があるかだな。
今日はとりあえず休んで英気を養うこととしよう。
「各々迎撃に備えて休憩、バールと白狐は宿舎の空いている部屋でも使ってくれ」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
拙い文章ですが、評価、感想、レビューを頂けますと幸いです!




