その68,列車とイケメンと俺
俺は何故か、ご機嫌なイケメンと並んで歩いている。
ご機嫌なイケメンは青く鋭い光を放つ鎧をその身に纏い、腰には刀を差している。
なんというデタラメな装備だ。
いや、装備にデタラメもクソもないか。
俺もゲームの中じゃ『たびびとのふく』に『どうのつるぎ』なんて装備だったもんだ。
そんな鎧に刀のイケメンのバールは『普段のヤキトリの様子が見たい』と俺をギルドから外に連れ出した。
男と歩く俺は珍しいらしく、通り過ぎていく店の店主達も冷やかしにも似た声を掛けてくる。
「お!ヤキトリの旦那、今日は男とデートかい?」
「うるせえ、好きで並んで歩いてるわけじゃない」
「ヤキトリの旦那、連れて歩くのは容姿端麗な人ばかりだねぇ」
「悪かったな、俺は容姿が端麗じゃなくて」
そんなやりとりをしながら街の入り口、駅を前にする。
ドワーフの街、グルーンの最新技術を使った『魔導列車』の駅だ。
ちょうど列車も到着したようで、沢山の人たちが降りてくる。
今のところグルーンとグランウッドの往復路しかない為、ほとんどがグランウッドへ戻ってきた連中だ。
グルーンから仕入れている武器はグランウッドでも買うことが出来るが、その武器のカスタムやオーダーメイドなどはグルーンまで出向かないと出来ない。
しかしグルーンには宿も少ない為、グランウッドで寝食をし、その完成を待つのだ。
「しかし凄い数の人だ。しかも色んな種類の人たちがいる。ヤキトリの街ではこれが『普通』なんだなぁ」
「ああ、ここでは色々な種族が混じり合って生活しているんだ。あんたの言う『普通』が俺には分からないが、俺にとっちゃこれが『普通』、あるべき姿ってとこだよ」
時にシルフやエルフは『狩』の対象となり、ゴブリンやリザードマンは討伐対象だという話も耳にする。
しかし、ここではシルフもエルフも、ゴブリンやリザードマンもただの生活者で愛すべき隣人だ。
悪事を働くわけでもなく、ただ安息の地としてこの街に根を下ろしているだけなのに、それを忌々しいモノとする必要はないし、尤も問題を起こす奴も居ないわけで。
「俺の国…つまり東の国ではゴブリンなんかは『鬼』として忌むべき存在なんだ。宗教やゴブリンとの争いの歴史なんかも背景にあってね」
「なるほどな。まあその地域ごとに関係性があるのは理解できる。しかしここでは単なる善良な人たちだってことを忘れるな。『郷に入れば郷に従え』だよ」
「いや寧ろその考えに賛同したからこそ、ここに来たんだ。そしてその考えが本当のものかも確認したくってさ」
少し先を歩き、首だけ斜めに振り返って続ける。
「人って、特に人間族は上位に立ちたがりで、差別意識も強いじゃん。そして一番残虐な生き物は人間族だろ?恥ずかしい話、遊びで他種族狩りをするのは人間族とごく一部のゴブリンくらいなもんだよね」
それはどこの世界でも同じというわけか。
同じ人間同士でも戦争をしたりする。
しかしここの人たちはそういった愚かさがない。
誰かを蹴落として上に立とうとか、金銭をせしめようとか。
悪くいえば支配されるのに慣れている感じだ。
ま、そうは言っても平和なので問題は無いんだが。
「あまりじろじろ見るな。ウインクもすな!」
全くこいつは何をしに来たんだよ。
「なに冗談さ冗談。ところでヤキトリ。せっかくだから魔導列車とやらに乗ってみたいんだが、一緒に乗ってくれないか?」
呆れ返る 俺の肩を引き寄せて組み、列車を指差す。
馴れ馴れしい奴だ。
「良いけどタダじゃないんだ、乗車券は奢れよ」
***
夕日が山の向こうに沈むのが見える。
幾度となく通ったこの道。
日が沈むとその景色も違って見える。
「おい、もういい加減にしてくれ!!何度往復すりゃ気がすむんだ!!」
そう、バールは魔導列車が大層気に入ったようで、もう何往復したかわからない。覚えていない。思い出したくない。
座席に正座し、外を眺めるバール。目をキラキラさせて、まるで子供のようだ。
「だってずっと乗りたかったんだよ!帝国の魔導列車は今やお偉いさんしか乗れないらしいし、噂を聞いただけでも胸が熱くなるじゃん!こんなにカッコいい鉄の馬車!」
確かに見た目は凄くカッコいい。それは認めざるを得ない。
サイバーパンクというか、蒸気と魔法が合わさって、歯車とパイプ、所々光のラインが入っている。薄暗くなると蒸気を纏ったその光が余計に目立つんだ。うん、カッコいい。
ずっと外を眺め続けているバールに声を掛ける。
「で、バール。本当の目的は何だ?まさか魔導列車じゃないだろ」
俺がそう言うと、 バールは一呼吸置いて座り直し、俺と向かい合い、その表情も真面目な顔になる。
「帝も会いたがっている、と言ったのは覚えているか」
「ああ、はじめに言っていた気がするな。あまり乗り気にはならないが」
無言で何も言わずに見つめてくる。そんなに見つめるな。いくら男でも惚れちまいそうなイケメンだ。
「ヤキトリ、俺は帝からこの街を守るべきか否かを見極めに来た。東の国は先日、帝国によって陥されてしまった」
こう言う展開だと、絶対攻めてくるんじゃないの??
帝国という大きな国が攻めてくるんじゃないの!?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
評価、感想、レビューなど頂けますと泣いて喜びます。
宜しくお願いします。




