その62,ピーピーピー・ゴリラダマスカス
「は!ここはどこだ!オラ何を?!」
目を覚ました訛りの強いエルフ、その名もピーピーピーゴリラダマスカス。
目は切れ長で長い睫毛。鼻が高く、唇は厚めで白い肌。
誰が見てもイケメンだ。ピーピーピーゴリラダマスカス。
紫の薔薇の人みたいだ。ピーピーピーゴリラダマスカス。
しかし訛っていて、名前はピーピーピーゴリラダマスカス。
長えよ。
「なあピーピーピーゴリラダマスカス、ちょっと長いから勝手に呼び名をつけて構わないか?そうだな、ピーゴとか」
「あ、ヤキトリ様おはようごぜえます。オラはピーゴで構わねえよ、そうだ、水を引きてえんだオラ。勝手にやって構わねえって言ってたもんな。ちょっと見て来て良いべか?」
なんだか忙しいやつ。
俺は無言で頷くと、川の方へ走って行った。
それを見送ってコンパインにも声を掛ける。
「おい、着いたぞ。宿舎を案内するから起きてくれ」
目を覚ましたかと思うとガバッと身を起こして怯えるようにキョロキョロと周りを見渡し、何かを確認してため息をつく。
「あのドラゴンはもう居ないんですな、ふぅ。あんな強く掴まれては命がいくつあっても足りませぬ。帰りは幾日掛かろうとも絶対に歩いて戻りますからな」
俺、シェロちゃん、そしてもちろんシルフィ態の雪風も居る前で、参った参ったとワイバーン態の雪風の文句を言うコンパイン。
「我がそのワイバーンなのだ。貴様が落ちないように気をつけてやったのだ。失礼なのだ」
ぷんすぷんすと鼻を鳴らしながら怒る雪風を宥め、ピーゴを呼び宿舎の方に向かった。
宿舎は木造三階建てになっており、目の前にするととても大きく感じる。
いや、感じるのではなく、実際デカいのだ。
昔の木造校舎のような、そんな雰囲気すらある。
端から端までおよそ200メートルはあろうか。両脇は前の方に突出し、全体でコの字を表している。
中央に入り口があり、観音開きのドアになっていた。
入り口の方に歩みを進めると、バァーンと大きな音を立てて開き、中からドライアドが走り寄ってくる。
「ヤキトリ様、お戻りになられたのですね〜!なんだか久しぶりですわ〜!」
とその緑の髪を靡かせながら笑顔を見せる。
しかし甲冑を着たエルフを見るとその表情は一変し、コンパインとピーゴをそれぞれ一瞥して俺の腕にまとわりつく。
こういう所あるんだよ。俺も最初は塩対応だったな…。
「ドライアド、こちらはコンパイン。エルフの村を治める人だ。こちらはピーピーピーゴリラダマスカス。ピーゴと呼んでやってくれ。この宿舎に住んで農業に携わってもらう」
俺がそう言うとドライアドもハッと気づき、まとわりついた手を離して深々と俺に対して頭を下げた。
するとどうだ、服の胸の部分から谷間が見える。いいね!
残念ながら姿勢を戻し、優しくコンパイン達に語りかける。
「わたくしはこの街の、大樹の守り人。エルフであれば、わたくしが仕えるシェロ様、ヤキトリ様がどのような方であるかは察しがつきましょう。シェロ様はこの街を治めるお方。ヤキトリ様はこの街を発展させるお方。このお二方が力を合わせれば敵うものは居りませんわ。お二方を支える礎となれること、誇りに思いなさい」
緑の髪の女がドライアドだと聞き、二人ともその場に片膝をつき跪き、こうべを垂れた。
「ドライアド様、ご機嫌麗しゅうございます。ドライアド様がお仕えされるお方とあれば、ドライアド様と同じ、いやそれ以上のお方なのでしょう。ドライアド様の名の下に、誠心誠意、忠誠を誓います」
コンパインが仰々しくドライアドにそう告げる。
ドライアドはエルフにとってなんなのだ。
「随分ドライアドに対して平身低頭だな。何かあったのか」
再びまとわりつこうとするドライアド、同じようにまとわりつこうとするシェロちゃんと雪風を制しながら聞いた。
コンパインは跪いたまま、頭を上げずに答える。
「我々エルフは森の住民でございます。そして、その森の守り人であるドライアド様は神にも等しき存在でございます。ドライアド様がお仕えされるお方、ヤキトリ様におかれましてはそれ以上で御座います」
なんか俺に対しても仰々しくなってるな、もう少しフランクで良かったんだが。
「そして、我々が村を離れるきっかけとなったエルフ狩り。その時の奸賊共から救って下さったのもドライアド様でした」
なるほどな。そう言う経緯があったわけか。ならば尚更ドライアドの下で働くほうがいい。
互いに互いを知り得ているわけだし、エルフ達もドライアドが身近に居れば安心するだろう。
ドライアドに今後の指示を出し、宿舎の内覧に向かった。
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