その61,抱きしめたい
甲冑のエルフ、コンパインが村のエルフ達を開けた村の入り口に集めてくれた。
その数は大体25〜30人くらいだろうか。
中にはまだ小さい子ども達も居る。
「今日は忙しい中集まってくれてありがとう。コンパインから聞いているとは思うが、みんなにはグランウッドでの牧場や農場の経営を手伝ってもらいたい。そこでは衣食住と、身の安全を保証をする。もうあんた達の生活を脅かす者が出ないようにしたい。得意な仕事があれば申し出て欲しい。各自の生活が楽しいものになるよう、俺も努力する。お互いに協力しあって、より良い街にしていきたいんだ」
俺、シェロちゃん、雪風(シルフィ態)、コンパインの4人を前に、エルフ達はざわざわし始める。
ひとりのエルフの男が挙手して質問。スラリと伸びるその手は流石エルフと言った美しさだ。
「オラは牛の相手よりも設備を作る方が得意だ。そんな仕事もあるべか?」
その美しい顔立ちに似合わない訛りに、愛嬌すら感じてしまった。
「もちろん、俺たちが出来ない事をお願い出来るなら、願っても無い事だ。相談させてくれ。頼りになるよ」
エルフの女性、リョーコだ。リョーコも挙手。
「私もまだ牛とかの世話はあまり慣れてなくて。どちらかと言うと、お菓子や料理を作る方が得意です。ヤキトリ様が望むなら、性奴隷でも…」
性奴隷と聞いて白い目で見る2人。いや違うんだ。待ってくれ。
「性奴隷好きだなあんたは。そういうのは求めてないっつうの。いいか?あんたのお菓子は最高だった。あんたにはお菓子作りの責任者を頼もうと思ってたんだ」
お菓子と聞いて、シェロちゃんと雪風がピクっと反応する。
「え〜ヤキトリ様、ひとりでお菓子食べたの〜?!ずる〜い!わたしも食べた〜い!」
「我もお菓子を欲しておるのだ〜!ずるいのだ〜!」
シェロちゃんの喋り方を真似しなくていい!
「あとで食べさせてもらおうな、よしよし」
2人の駄々っ子を宥め、続ける。
「住まいは宿舎、つまり共同生活になる。部屋は各家族に一部屋ずつ当たると思う。独身者は相部屋になると思うが仲良く頼むよ。寝具は格別なヤツを用意しよう。寝たら病気も吹っ飛ぶヤツ。布団が吹っ飛んだーなんてなー」
シーン
「いいよもう。で、食事は自炊。食材は用意するが、ゆくゆくはこの街自体を自給自足していきたいんだ。着るものも用意するし、身の回りの物を揃えていけるように、少しだが賃金も出すつもりだ」
エルフ達の沈黙が続く。
「したらオラ達…もうあっちこっちさ行かなくて良いんだべか…」
設備屋志望エルフがそう呟くと、堰を切ったよう様にみんなが声を上げる。
俺のベタなギャグで白けたのではなく、単純に、ただ一心に、俺の言葉一言一句に耳を傾けていただけだったのだ。
「コンパインには下見に来てもらう予定だ。気に入らないかもしれないからな。それと…さっきのあんたも来てくれ」
設備屋志望エルフを指名すると、予想外の言葉に目を白黒させる。
「お、オラだか?!オラが行って参考になるかどうか…」
「まぁ住民代表と思って来てくれれば良いさ」
周りのエルフ達の羨望を集め、ちょっと恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
***
空を舞う雪風。
翼が空を切り、雲を裂いて進む。
『ディフレクト』をきちんとかけたので帰りは大丈夫。
その背には俺とシェロちゃん。抱きかかえられる様にコンパインと設備屋志望。
遠くに見えていたグランウッドもだんだんと近づき、わが農場もその形貌をコンパイン達の目前に露わとする。
上空から見たその農場は農地としての機能こそ未だしていないが、それなりに広さがあり、これからの作業と展望を楽しみにさせる。
「ほー、思ったより広いんだなー」
「ヤキトリ様、この農地全てを我々が?」
設備屋志望とコンパインが感嘆の声を上げる。
「ああ、この農地をお任せしたい。あの人数では広すぎるか?」
『ディフレクト』の効果で風もなく、通常通りの会話も問題なく行える。
「いえとんでもない!我々の待ち合わせの牛達にはちょうど良いでしょうし、農地も以前使っていた農場と同じくらいです」
「水は裏の川の水を使うんだべ?使いにくいべ?」
コンパインの言葉を無視して設備屋志望が川を指差す。
俺の寝ぐらの裏、宿舎の横を流れている川だ。
「ああ、水はあそこの川を使ってくれ。確かに少し使いづらいかもしれないが。というか、あんたの名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「ああ、オラの名前はピーピーピーゴリラダマスカスだ。あの川から水を引いたら不味いだか?不味くないなら勝手にやっちまうが」
イケメンエルフなのに訛ってるし名前がピーピーピーゴリラダマスカスってなんかアレだな。
それに水を引くだって?その発想は無かったな。
「いや、出来るならやってくれ。材料や費用が必要なら申し出てくれればできる範囲で用意しよう」
俺がそういうと、ピーピーピーゴリラダマスカスは大きくガッツポーズをし、バランスを崩して危うく落ちそうになる。
〈危ないのだ。大人しくしてろなのだ〉
雪風がきつく二人を抱きしめ、その抱きしめられたコンパインとピーピーピーゴリラダマスカスは気絶してしまった。
よっぽど嬉しかったか。良かったな。
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