その59,スープとパスタ
俺、シェロちゃん、雪風の3人は無事着替えを終え、まずは朝食をとることになった。
腹が減っては何とやら、だ。
かまどに薪をくべ、声を掛ける。
「火のピクシー、かまどに火をつけろ」
革袋から火のピクシーが飛び出してきて、くるくると俺を一回りするとかまどに向かう。
途端に、パチパチと薪が小さな破裂音を上げ始め、薪の間から少しづつ見えた火が大きくなっていく。
「さてと、朝飯を作るか」
袖をまくり、革袋から材料を取り出した。
材料は鶏政で分けてもらった野菜、リーキとカブにトマト、フェルニルの干し肉に、パン屋で購入したカチカチのパン。
それらをテーブルの上に並べ、鍋を火にかけ湯を沸かす。
まずはスープ。カチカチのパン、野菜とフェルニルの干し肉を煮たものを作る。
カチカチのパンはパン切りナイフでゴリゴリと賽の目に切り、たっぷりのミルクに浸しておく。
浸している間、フェルニルの肉を一口大に切り分ける。
干し肉とはいえ硬くはなく、適度に脂が乗っていてナイフも抵抗なく入っていく。
ただ腿肉のようで筋が多い。1枚の干し肉を2センチ角の大きさで切り揃えた。1/3はまた使うからな、とっておこう。
野菜は葉物野菜と根菜だ。
リーキ(太いネギのようなもの)は大きく斜め切り、カブは適当に切ってフェルニルと一緒にバターで炒める。
リーキは緑の部分が多く、ネギより硬めなのだが、煮込むことによって柔らかくなる。
まずは葉の間に入り込んだ砂をよく洗い、厚めにして切っていく。
カブは葉を落としナイフに当て、カブの方を回して皮を剥くのだ。それを半分の半分、4等分に切り分ける。
野菜と肉を一緒に鍋に入れ、少量の油で炒めるんだ。
フェルニル肉の表面に焼き目が付いてきたら、パンと浸しておいたミルクを一緒に入れ、干し肉が柔らかくなるまで煮込む。
調味料は塩、スパイス屋で買った粗挽き胡椒、サハギン茶。
味を見ながら調整し、スープの完成。
俺が『料理』と言うほどでもないが、作業をしている間、シェロちゃんは居眠り、雪風はサハギン茶をすすっている。
少しは手伝え。
湯がぐらぐらと沸いた鍋に、塩を入れる。
塩は手のひらサイズの巾着に入れていて、そこから直接サラサラと。
塩を入れた鍋に買っておいたパスタ投入して茹でる。パスタはコンキリエだ。貝殻の形をしていて、くるっと反り上がったようになっている。
パスタを茹でている間にもう一仕事。
シェロちゃんの家から貰ってきたガーリック、トマトをみじん切りにし、フライパンに油を大さじ2杯くらい入れて温めてから、まずはガーリックを投入。
少し傾けたフライパンの、多目の油で炒められるガーリックからは香ばしい匂いが立ち上り、食欲を増進させてくれる。
換気扇が無いから部屋の中はニンニクの匂いで充満しているけどな!
そこに刻んだトマトとフェルニルの干し肉を入れ、ふつふつとじっくりゆっくり火を通す。
フライパンの中を回すように動かし、焦げ付かないように注意する。
トマトソースの出来上がりだ。
「ねぇ〜ヤキトリ様ぁ〜お腹減ったよ〜」
匂いに負け、シェロちゃんが声を上げる。
テーブルに突っ伏して座り、頬を膨らませて足をぶらぶらさせた。
お前今まで居眠りしてただろ。
「減ったのだー」
雪風も両手を伸ばしてテーブルに突っ伏している。
「まぁ待て。今出来るから。そもそも何もしないで飯が出てくるんだからありがたく思えよ」
そう言いながらシンクにザルを置き、茹でていたコンキリエを上げる。
ザルからは大きな湯気が立ちのぼった。
上げたコンキリエをトマトソースのフライパンに入れ、全体に馴染むようにスプーンで混ぜて完成だ。
「出来たぞ。二人とも、スープボウルと皿を用意してくれ」
「「はーい」」
シンク横の作業台の上に皿とボールが並べられる。
まずはレードルでスープを掬い、スープボウルに注いでいく。
器に移されたことで、改めてミルク、干し肉、サハギン茶の香りが立つ。いい香りだ。
コンキリエのトマトソースも別のレードルで皿に移す。
並べられた白い皿に映えるトマトの赤、ガーリックの香りが食欲をそそる。
朝からなかなかパンチの効いた飯だ。
パンのスープにトマトソースコンキリエ。
それぞれ器をテーブルに移動し、席に着く。
「「「いただきます」」」
我ながらよく出来た。美味そうな匂いが湯気に乗ってくる。
はやる気持ちを抑えながらスープにスプーンを差し入れ、まず喉を潤す。
肉と野菜、サハギン茶の旨味とコクが身体の芯に染み渡る。
少し大きめに切ったリーキを掬うと、見るからにとろりと柔らかくなっていて、口に入れるとふわっと繊維状にほどけていく。
ころっとしていたカブも角が丸くなり、こちらも柔らかそうだ。
「うわぁ〜とっても柔らかい…」
シェロちゃんがカブを口に入れ、その顔をほころばせる。
スプーンの上ではその形を保っているのに、舌の上に乗ればほろりと溶けてなくなってしまう。
口の中で崩れたカブはカブ自体の甘みに加えて、一緒に煮込まれたリーキや干し肉の旨味も含み、一層美味しくなった。
スープでほっこりしている時に雪風が大きな声を上げる。
「こんなの初めて食べたのだ!美味いのだ!ほえー!トマトスープは食べた事があったけど、こんなに美味いものがあったとは知らなかったのだ!」
口の周りをトマトソースで真っ赤にして騒いでいる。
正直うるさい。
しかしまあ、夢中になって食べるのもわかる。
ガーリックの香りがこれでもかと食欲を増進し、箸が、いやこの場合はスプーンか。止まらないのだ。
コンキリエは、その特徴的な貝のように内側に反った形で、ソースと具を包むようによく絡まる。
そのコンキリエを口に運ぶと、はじめにガーリックの香り、トマトの酸味と噛む毎に染み出してくるフェルニルの少し野性味を帯びた風味が口の中に広がる。
雪風は皿を持って掻き込んで食っている。
あまりレディらしからぬ食いっぷりだな。
「食ったら少し休憩して、ドライアドの所に行こう」
今はひとまず、ゆっくりと朝食を取ろうじゃないか。
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