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その54,バターの香り

うねうねくねくねと動く触手を目の前にしていた。


火に弱いという情報をエルフから得はしたが、問題は、火のピクシーが完徹をしたことにより寝てしまっているということだ。


いや、問題と言うわけでもないな。


そもそも俺は『()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()』のだ。


触手の1本が後ろに仰け反るように倒れたかと思うと、物凄い速さでしなるようにこちらに伸び、俺の目の前で『逸れ』る。


立て続けに2本、3本とこちらに向かって伸びてくるが『ディフレクト』で当たることはない。


しかし、その『逸れ』た1本がエルフに向かって伸び、あわやという瞬間、蜂の1匹がエルフの前に飛び出し、身代わりになった。


一度縮み、串刺しになった蜂を払うようにその触手を抜くと、改めてエルフに向かって伸びていく。


刀、無銘 葱間に火の加護を『エンチャント』、俺の横を過ぎる触手を下から上に斬りはらう。



「『烈火剣』!!」



咄嗟にでた割に、我ながらカッコいいネーミングだ。


触手は勢いよく切られた部分から粘りのある液体を吹き出し、その場に落ちる。


こうかはバツグンだ!


左右に分かれたカマキリの間に向かって走り、その腹から伸びる触手を刀で切り落としていく。


何本かの触手を斬るが、思っていたよりも数が多い。


まだ数十本は残っている。


またエルフが狙われてはかなわない。ここからだと触手の方がスピードが速い。


蜂も守りきれないだろう。



そうか、蜂だ。蝶のように舞い、蜂のように刺す!



俺の『ディフレクト』を解除、『グラビティ』。



触手の真上の方向に向かって飛び上がる。


触手も俺に向かい伸びてくるが、刀でなんとか防ぎ、当たった勢いで更に上に飛んでいく。


まだだ!まだ終わらんよ!


葱間に風の加護を『エンチャント』。触手に刀を振り下ろす。



「『火炎雀蜂』!!」



刀身から炎の帯が渦を巻いて飛び出し、轟々と音を立てながら触手に襲いかかる。


触手はその炎に包まれた後、水分が絞り出され枯れ木のようになり、ぼろぼろと崩れていった。




そうだ、エルフと蜂!


「大丈夫だったか?」



蜂に守られ、座り込んだエルフが泣いている。


俺は触手の向こうに走り寄り、両手ほどの大きさの蜂を抱き上げた。


「『ヒール』」


蜂に手をかざし、回復の魔法を掛ける。ただの回復魔法じゃない。魔力の強い俺ならではのとっておきの魔法だ、多少は良くなるだろ。



蜂の胸の傷が、みるみるうちに塞がり、ギチギチっと顎を動かすとエルフに向かって飛び立った。


「ご、ごめんなさい!助かりました!蜂も!」


エルフがおもむろに立ち上がり、蜂とともにこちらに向かって走ってくる。



「本当に、なんとお礼を言っていいのか、ごめんなさい…最近蜂を襲っていたカマキリもやっつけてくれて…」


そういやこのカマキリ、シェロちゃんのポーションに使えるヤツだな。


エルフがまだ色々とゴニョゴニョと喋っていたが、革袋に半身のカマキリを片方ずつ仕舞う。


それを見てあわわわと口を両手で押さえて驚いているエルフと蜂たち。


「これは、まぁ、魔法の袋みたいなもんだ」


「そうなんですね、ごめんなさい…あの、えーと、わたしはこの先の村に住むリョーコと言う者です。宜しければ、お礼をさせて頂きたいのですが」


俯き加減に来た方向を指差し、ぺこぺこと頭を何度も下がる。


「いえ、あの、ご迷惑であれば無理にとは言いませんので、本当に変なこと言ってごめんなさい!」


兎角謝り倒すエルフ。なんだこいつは。


「いやそんなに謝らなくていいよ。俺はヤキトリ。俺もこのカマキリとその村に用があったんだ。ついでだよ、ついで」


「ヤキトリ?さん??あのヤキトリ??え?ごめんなさい、なんでもないです…」


俺が握手を求めて右手を差し出したが、少し苦笑いをしたあと「ごめんなさい」と頭を下げられてしまった。


ちょっぴりショック。まぁいい。


それに何かヤキトリについて知ってるようだが、まぁランクBともなれば近隣の村にもその名が轟いているということだな!


しかし目的の村のエルフということは都合がいい。礼はともかく案内してもらおう。


「あんたの村では美味い菓子を作ってると聞いてな。ウチのギャル達にお土産を買いに来たんだ」


「ご、ごめんなさい!いえ、そんな大層なモノじゃないんです!昔、そう、昔に趣味で作っていたお菓子作りの延長みたいなもので!」


このエルフが作っていたのか。あのお菓子も街で売ることが出来たらな。


甘いもの、というのは嗜好品だ。中毒性がある。


嗜好品に手が出せるようになれば、心が豊かになる。


もちろん目的になってはいけないが、結果、それを手に入れる機会を得るのだ。


どの時代も甘いものを求めて旅をし、戦争をしてきた。


チョコレート屋、ケーキ屋、クレープショップ…。

甘いものならば、その一種類だけで勝負が出来る。


チャーハン屋とかナポリタン屋とかってのは聞いたことがない。


それだけ甘いものは攻撃力が高いのだ。



「じゃ、村でクッキーでも頂こうかな」



村の方からは、甘いバターの香りが誘う。



ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!


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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
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