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その52,焚き火

雪風はサハギンの村で髪飾りを物色中。そのまま留守番してもらう。2、3日は留守にすると告げて。


今回ばかりは雪風に乗らずに遠征だ。


なぜかと言うと、雪風にもサプライズでクッキーを食わせてやりたいからな。


街より北東、ラグーンよりも東に位置するその村には、美味い焼き菓子があると言う。

あまりその村に行ったという話もなく、強いて言えば、ギルドの依頼で蜂の巣駆除に行った者が居たくらいだ。

そのお土産として、ギルドマスターであるイナバが焼き菓子を貰った、というわけらしい。



歩いて向かうが、結構遠い。


最近雪風に乗っての移動だったから、少し(なま)ってきたかしらん。


荷物も無いし、有ったとしても革袋に入れときゃいい。その分楽だ。


手ぶらで草原を行く。


腰には革袋と刀。無銘 葱間である。


サハギンの村を出てから数時間は経ったであろうか。

やっと森の入り口付近まで来た。

真っ直ぐ焼き菓子の村へと向かってきたため、グランウッドも遠くに見える。


少し薄暗くなってきたが、いざとなったら野営したって構わない。


その時には俺の周りに『ディフレクト』、その周囲には『グラビティ』を掛けておけば安心だ。


『リテラシー』の効果で敵が攻撃してきても避けることも出来る上、『ディフレクト』の効果で全て逸らす事が出来る。

『グラビティ』で重力を何倍にもしておけば、たどり着く前にぺしゃんこにだってしてやれる。


数少ない魔法だが、まあ使い道次第では色々と出来るもんだ。


暗くなる前に、刀に『エンチャント』しておくか。


刀を下に置き、刀身に手をかざす。


風の加護と『グラビティ』を『エンチャント』。

葱間にも『真空斬』をセットする。

俺の必殺技みたいなもんだな。まだ一回しか使った事ないけど。


そんなこんなをしているうちに、あたりは暗くなっていた。


「仕方ない、ここで野営と行きますか」


太めの木の枝を集める。あったかいパジャマがあるわけでも、屋根があるわけでもない。暗いのも嫌だし警戒も兼ねて、念のため焚き火をしておきたい。


太い枝が数十本集まったところで火のピクシーを呼び出す。


ピクシーが革袋から勢いよく飛び出し、するすると宙を舞う。

「ヤクニタツ??デバンキタ??」


こいつらは俺の役に立ちたくて仕方がない。

用事があればなるべくやってもらいたいけど、あんまり用事も無いんだよなぁ。


「ああ、役に立つぞ。そこに火を起こしてくれ」


山にして組んだ焚き木を指差し、命令する。


「ハーイ!」


元気よく返事をし、焚き木の中に入り込み、一気に点火。

メラメラと燃え、焚き火が出来上がった。


革袋と刀を外し、地面に横になる。


パチパチと木の中の水分が破裂する音を聞きながら、頭の後ろに組んだ腕を枕に目を閉じる。


前の世界なら、夜になれば1人飲みで焼き鳥をつまみにビールを飲んで。

出ない日もまず酒を飲み、眠たくなるまでスマホかタブレットで動画を見て過ごしてたな。


それが今じゃ焚き火の音を子守唄に、草っ原で横になってるんだから、人生って分からないもんだ。

いや一回終わってんだった。



今日は歩き疲れたし休むか。



ガサガサ…



ガサガサ…



ガサガサ…ガサガサ…


森の方から音が聞こえる。勘弁してよ。俺は眠たいんだ。


『グラビティ』


知らんぞ、もう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!


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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
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