その51,ねぎま
52話を先に公開していたようでした。申し訳ありません。
ギルドを出ると、外には雪風が待っていた。
「我も髪飾りが欲しいのだ」
まあそうだろうな。焼き菓子も良いが、身に付けるものが欲しいのはよくわかる。
サハギン茶の商談も兼ねて、村にまた行ってみるか。
アレもくれたものなのかもわからんしな。勝手に鶏政に置いてきちゃったけど。
「よし、じゃあサハギンの村に行ってみるか」
「やったのだー!」
雪風の周りに金色の風が集まり、虹色に輝く雪風がプリズムなパワーでメイクアップし、ワイバーン体に変身する。
認知されているとは言え、街の真ん中で変身はやめてくれ。
こんなところで羽ばたいたらいろんな物が飛んでっちまう。
雪風に乗り、街の外に向かう。ノシノシと。
☆☆☆
空に羽ばたき、南、海の方に向かう。
高く上がると山の向こうに海が見え、その手前にはサハギンの村だ。
はやる気持ちを抑え、サハギンの村へと向か…いたかったのだが、雪風の全速力で、あっという間についてしまった。
『ディフレクト』の効果がなければ風圧と加速度で粉微塵になっているところだ。勘弁してよ。
村の近くで降り、人間体に戻った雪風と村へ向かう。
すると村の方から綺麗な蒼い髪の少女が手を振りながら走ってくる。
カペリンだ。
「ヤ、ヤ、ヤキトリ様〜!」
こちらまで辿り着くと、走ってきたそのままの勢いで俺に抱きついて止まる。
「お、お、お待ちして、お、おりました!!お、長も、よ、喜んでい」
つまり、ギンや村のみんなも遠くから見えたワイバーンによって俺が来ることがわかって大変喜んでいた、という話らしい。
とりあえずは村総出で歓迎しているらしいので一安心だ。
お茶泥棒なんてなってたらどうしようかと思ったぜ。
雪風とカペリンに『グラビティ』を掛け、片腕ずつにぶら下げて村に向かって歩く。
休日のマッチョなパパの様相で村に入ると、ギンとカレイにヒラメが待っていた。
ギンは村の長で、その息子のヒラメとカレイである。
ヒラメが始めてまともに口を開く。
「ヤキトリ様、お茶の件ですが、材料を挽く為の臼が足りませぬ。今までは我々サハギンの分で足りました故…人手はともかく、道具が足りませんと。」
「それについては少々考えがある。少し待っていてくれ」
カレイも口を開く。いやこちらがヒラメか。いや分からんし、どっちでもいいわ。
「剣の製造所で頼まれていました武器が完成しております。早速見てやっていただければと思いますので、工場の方へお願いします」
そのカレイかヒラメか分からんサハギンに連れられて、村の奥の工場に向かう。
雨はまだ、やはり降らないようで、あの水瓶のみで工面しているようだ。今のところ、飲み水は確保出来ている、ということだ。
工場で使う水は、雨水を貯めた大きな水瓶に入っていた。
あまり衛生的にはよろしくない水っぽい。
そして工場に着くと、やはり中からは熱気が噴き出している。
工場の奥から布を頭に巻いた、如何にも職人と言った男のサハギンが長いものを持って出てきた。
「ヤキトリ様のイメージ通りに出来ているか分かりませんが、今我々が出来る全ての力を注ぎ込みました。どうぞ、お納め下さい」
両手で端と端を持ち、前に差し出しながら腰から頭をさげる。
俺がイメージし、依頼した新しい武器。
この世界では両刃の剣が一般的で、その切り方も『叩き斬る』という感じだった。
昆虫系魔物にはあまり通用しないのはそのせいだ。
硬いものを『叩き斬』ろうとしても負けてしまうのだ。
なるだけ薄く作った片刃の剣。
通常ならば真っ直ぐ伸びるその刀身は、緩いカーブを描き、鋭い輝きを放っている。
鍔も十字のものではなく、刀身の根元に円形で花をモチーフにあしらったもの。
柄にも紐を巻き、滑り止めにしてもらう。
少し思っていたデザインとは違うが、まあ良いだろ。
見たこともない武器を作れだなんて無茶を言ったんだ。
刀身を収める鞘もまた、緩く美しいカーブ、黒く鈍く光るものとなっている。
そう、つまりサハギンに作ってもらったのは、刀だ。
昆虫系魔物を倒すためには、その硬さをねじ伏せるのではなく、繊維のほころびを裂くような、そんな武器の方が向いていると思ったんだ。
あと刀ってカッコいいし。
「せっかくの刀だし、何か銘が欲しいな。あんたの名前は?」
刀は作った人の名前が入ってるとか言うもんな、あんまりわからんけど。
「わたくしは剣鍛治のジゴロと申します」
俺に渡した手を下げ、頭を上げるジゴロ。
キラキラとした目で『この刀に自分の名前が!』と期待を投げかけるジゴロ。
俺は嫌だよジゴロなんて名前の刀は。
「そうか、ジゴロか。でも刀を今後も頼むだろう。あんたは今日から刀匠を名乗れ。んーと、えーと、そうだな…」
ヤキトリの刀を作った男だ。
俺もそれに見合った刀の名前が良いな。つまりこいつの名前もだ。
「刀匠、葱間ねぎまを名乗ると良い」
ジゴロ改め葱間は、俺の目の前に片膝をついて跪き「ありがたき幸せ」と腰に手を当てた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




