その47,肉まんと水ふうせん
ひんやりとした何かの上で目を覚ます。気持ちが良い。
しかし、何かが俺の上に乗っている。
まるで煎餅布団を5枚くらい掛けられているような。
〈そろそろグランウッドに着くのだ。起きるのだ〉
わかったわかった。だけど、もう少し寝かせてくれ。
☆☆☆
再び目を覚ますと、あたりは薄暗く、夕日も沈んでいた。
ひんやりとした感触は、縛り付けられていたワイバーン、雪風の背中だった。
その俺の上には、袋に入った何か。5袋。
この匂いは、お出汁の素である。
そうか、サハギンの村で気を失って、そのまま雪風に括り付けられて帰ってきたというわけだな。情けない。
いや気絶はお家芸みたいなところもあるし大丈夫だろ(?)
というわけでグランウッドに帰って来たのだが、もう夜だ。何もできない。眠たくて。
『グラビティ』
ワイバーン体を解いた雪風に起こされ、腕を引っ張られ、寝ぐらの中へと進む。
無論その手にはお出汁の素。
俺とお出汁の素に『グラビティ』をかけ、ふわふわと浮かびながら連れて行かれる。
チョー楽チン。
寝ぐらの奥、ベッドにふわふわと投げられ、手にしていた5袋のお出汁の素をふわふわと放り投げる。
風船にでもなった気分。
このベッド、回復が凄いんだよなぁ。
俺が考えたの。
凄いっしょ。
凄いんだから。
☆☆☆
もぞもぞ
もぞもぞもぞ
久しぶりにゆっくりと眠れた気がする。
布団に包まれたこの感覚。まだ目覚めたくない。
目覚ましもかけずに寝たんだな…。
仕事、今日は休みだったか。
いや、確か異世界に飛ばされちまったんだ。
仕事に行くよりマシかもしれん。
二度寝しちまえ。
むにゅ。
ふむむ、柔らかい。(むにゅ)
いい匂いがする。フェンネルの香り。
そして柔らかい。肉まん。(むにゅむにゅ)
懐かしい感触。(むにゅむにゅむにゅ)
?!
この俺の手に包まれているのは!
肉まんおっぱい!(モミモミ)
夢で終わらないでこの時間。この感触。
目を開ければ「現実」が全てを奪い去っていきそうだ。
「貴様、良い度胸をしているのだ。痛いのだ」
ヤッター!デジャヴー!!
「って、なんで雪風が隣で寝てるんだよ!(もみもみ)」
「は?貴様、いいからその手をどけるのだ」
「いやおかしいだろ!なんでお前がここにいるんだ(もみもみ)」
「は?消し炭にされたいのか、と聞いているのだ」
俺は気づいてしまった。もしかするとこの状況を他人にでも見られようものなら、俺はこの異世界で一生ロリコンと蔑まされ生きていくのであろうということに。
俺はその右手に心の中で『ごめんな』と一言謝り、自分の左手で優しく包み込んでやった。
「あら、旦那、雪風ちゃんには『ごめんなさい』しないのかしら?」
うわー!いたー!
その声にはっと気づくと、目の前にシュルシュルと黒い影が舞い上がり、サキュバスが現れる。
「やーい、旦那のロ・リ・コ・ン!」
前屈みの状態で左手の甲を腰に当て、右手で俺を指差し、少し拗ねた表情をするサキュバス。
胸の空いたデザインの服。前屈みになっているので、当然谷間もバッチリだ!
「だから旦那は私みたいに魅力的で大人でボインな女性に見向きもしないわけね。よく分かったわ」
「いいや全然わかってない」
俺の目論見を、心を読むことのできるサキュバスは感じ取り、そのポーズのまま、赤面し動かなくなる。
雪風は当然、わからずにポカンとしていた。
サキュバスが俺を差していた手を下に、レバーのように下げる。
「いいか」
(ぷに)
サキュバスの胸の、露わになっている部分を目掛けて人差し指を伸ばす。
まるで水ふうせんみたいに柔らかやんけ。
「俺は」
(ぷにぷに)
「ロリ」
(ぷに)
「コン」
(ぷに)
「じゃ」
(ぷに)
「ねーの」
(ぷにぷに)
「わかったか」
(ぷにぷにぷにぷに)
真剣な眼差しでぷにぷにされ、硬直したまま赤面。
「そそそ、そういう直接的なのはやめてよね!」
そういうと、硬直したポーズのまま、また影へと戻っていった。
なんだったんだあいつは。
「つまり、ああいうのがタイプということでいいのだ?」
雪風は自分の胸を両手で覆い、大きさを確認しながら、こちらも拗ねた顔で見ている。
なんだこいつらめんどくせえな。
「ま、それはともかく、ちょっと試してみたいことがあるんだ。鶏政に行ってくる。雪風はまた工事の手伝いをしてきてくれ」
「わかったのだ。しかし、先ほどの件だが…」
雪風を無視し、お出汁の素を手に外へ出たのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




