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その46,サハギンの工芸

少し離れただけで、こんなに恋しいなんて。


俺は、忘れようにも忘れられなかったんだ。


こんなにも俺の心に残っていたんだね。


お出汁。






カペリンに、お出汁茶の作り方を聞く。


「あ、あ、これは、浜で、ほ、干した海藻、と、採ってきた、き、きのこ、た、焚き火で、い、燻した、さ、魚を、あ、あ、」


つまり、浜に打ち上げられた昆布のような海藻を丁寧に干し水分を天日で飛ばしたもの、山で採ってきたきのこを軒下に糸で吊るして干したもの、魚を燻煙で何日もかけて干したものを細かく刻み、石臼で粉末にし、それを沸かしたお湯で溶くそうだ。


この村は今まで適度な雨はあったものの、空気自体は乾燥していて、立地からか浜風もあまり強くない。

そして基本的に通年晴れているそうだ。


なるほど、それで魚を干していたり、こういう保存食の文化が発達しているんだな。


「ギン、これは大量生産は可能か?」


大量生産、という言葉とは無縁だったのだろう。

少し考え、何か言おうとするがまた考え、を繰り返す。


「いや、これは世界に通用する味だ。俺が個人的に設備投資したっていい。保証する。ここの名産にしよう」


この、言うなればインスタント出汁の素、到底売るような物とも思っていなかったんだろう。

ギンもカペリンも絶句し、目を丸くしていた。


「これは村で使う程度のものでしたから、たくさん作るという事は考えたことがありませんでした。しかしヤキトリ様が太鼓判を押して下さったのです。なんとしてでもやりましょう。うちは朝の漁のあと、男どもも身を余しておりますからな」


ではさっそく、とギンは立ち上がり、左手を前に出す。


「お茶はこれから順次量を増やして作りましょう。まずはうちの工芸品工場でも見ていってくだされ」


俺たちも腰を上げ、ギンに従って表に向かう。


カペリンも「あ、あ、」と何か言いたそうにしながらもついてきた。


ギンが扉を開け、カレイとヒラメ、警備の息子達に指示を出す。


「いつものお茶があったろう。ヤキトリ様があれをたくさん作って欲しいとのこと。今すぐ取り掛からせろ」


「「ハッ」」


軽く会釈し、走って村の奥に向かっていくカレイとヒラメ。

変な名前。今更だけど。


ギンに連れられて村の更に奥に進んでいく。


すれ違うサハギンも、家の中から出てきたサハギンも、皆こちらに向かって深々と頭を下げる。


俺は軽く胸の辺りの高さで手を挙げ、挨拶。


ま、感謝されるためにやってるわけじゃないからな。


元はと言えば俺がもっと住み良い街にしたいだけだし、それは街自体が住み良くなければならないってだけだ。


この村にも線路を引いて、物資の運搬と人の往来を増やそう。

俺はお出汁が気軽に楽しめるようになるし、サハギン達は村が潤う。


「win-winの関係ってヤツだな」


「いんいんってなんなのだ?」


つい声に出ちまったぜ…。お出汁が楽しみすぎてよお!


「いや、なんでもない。雪風も色々と手伝ってくれてありがとな」


「良いのだ。楽しいのだ。我はお前なのだ」


スキップしながら進む雪風。


楽しいならそれで良いか。


そんなスキップする雪風を眺めつつ、いつの間にか到着した大きな建物を目の前にする。



「あ、あ、あの、こ、ここで、髪飾り、つつつ、作ってます!」


カペリンが俺の手を握り、引っ張って中に案内する。

その勢いでよろめきながら入り口の前に立つと、中からは物凄い熱気が感じられた。


建物自体は他のものと同じような作りだ。

しかし、煙突があり、中央には鍛冶場が設けられている。


真っ赤に熱を帯びた棒を大きな鉄のハサミのようなもので取り出し、それを2人のサハギンが左右から、これまた大きなハンマーを振り下ろし、打っている。


その隣では、長細いく平たい真っ赤な板を片手ハンマーで打ち付けている者もいる。


奥ではまた違う作業をしているようだ。


「これは…?」


気圧されながら歩みを進めると、ギンが説明をしてれた。


「我が村の工芸品、鉄の護身具…今は髪飾りでしたな、それと鉄の剣でございます」


驚いたことに、この暑い中、熱い作業をしている。


そして、あのアイスピック髪飾りは、こうやって大変な作業の上に成り立っていたんだ。


「鉄の材料は山にある岩から採れましてな、昔からこうやって、少しですが作っておるのです」


「ここで作った髪飾りも売りたいんだ。カペリンから聞いていると思うが、大人気だったんだぜ」


「ええ、それはもう。なのでわたくしどもとしても、剣はやめて髪飾り作りに専念したいと思っておるんですが、職人達はどうもそうは思ってないようで」



そりゃそうだろうな。もしかしたら剣を作る片手間で作っていたのかもしれないし、今更剣作りで培った技術を捨てるのも忍びないだろう。


「いや、剣を作るのも継続していいと思う。それに、ここなら作れそうな新しい武器もある。お願いしても良いかな?」


俺は思いついた武器の形、使い方、装身具などを身振り手振りで伝えた。



「そりゃもちろん、ヤキトリ様の願いとあらば…」


ギンの声が遠くなる。


ぼやけて段々と小さくなっていく。


熱気にやられたか?目の前がぐるぐると回り、暗くなる。




ブラックアウト。




ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!


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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
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