その39,宴のあと
宴は遅くまで続いた。
持ってきた酒はアルコール度数が高く、俺はあまり飲まなかったが、ドワーフ達は酒が強いのかめちゃくちゃ飲んでいた。
少し酔いを冷ましたかったこともあり、ログハウスを出る。
外は当然のことだが街灯なんてものもなく、空いっぱいに星空が広がり、輝いていた。
夜のことを考えると明かりが必要だな。
昼間の移動だけとは限らないだろうし、防犯や魔物避けにもなるだろう。
多分。
切り株の椅子に座りながら、そんなことを考え空を仰いでいると、ログハウスからドワーフが出てきた。
おっぱ…現場監督を任せているソラだ。
「頭、進捗表と、必要な物一覧だよ」
「なんだ、ソラは飲まなかったのか?」
進捗を書いた紙を受け取る。
予定では…あと2週間でグランウッドに到達。
「あたいも飲んでたよ、みんな酒は仕事と同じくらい好きなんだ。グルーンじゃなかなか手に入らないけどね」
隣に腰掛けながら、フゥっと小さくため息を吐く。
そう言われてみれば頬が少し紅潮している。
「ああ、それと、2週間でグランウッドまでの道は作る。そのあとにレールの敷設、魔導機関車の手配、グランウッドの塀だね」
正直なところ、ここまで早く進むとは思っていなかった。
これもドワーフの技術の高さ、チームワーク、ソラの指示のおかげだろう。
「ソラ、おかげで計画が早く進みそうだ。ありがとう」
そう言って右手を差し出す。
ソラも右手を出し、俺の手を握る。
握った瞬間、ソラに引き寄せられ、大きな胸に抱かれた。
なんだこれは、普通逆の立場じゃないか?
「頭、あたいらに仕事をくれてありがとう。みんないちいち口に出さないけど、感謝してるんだ」
「いや、こちらこそ。こんなに早く道が出来るなんて、本当に夢みたいだよ。ソラが指揮してくれるおかげで、俺も他の作業が出来るしな」
柔らかくて暖かい。
冬の寒い日には良さそうだ。
残念だが、暖かおっぱいから離れ姿勢を戻す。
「グランウッドは帝国との中継地点にある。グルーンとの交易や人の往来が今後盛んになれば、帝国が何か手を打つかもしれないし、他の街や国も。ま、油断は出来ないな」
座ったまま上体を少し前に倒し、肘を膝に乗せた格好で続ける。
「街が魔物やヒトに襲われることだって無いとは言えない。防衛力の整備が必要なんだ。街を発展させて、住み良い環境にするのが目的だが、それは安心や安全のもとに成り立っているんだと思う」
「頭…」
熱弁する俺を、トロンとした瞳で見つめているソラ。
飲みすぎたんじゃないか?
背伸びをしてこの場の雰囲気を誤魔化す。
「なんてな。ソラ、明日も早いぞ!さっさと寝て備えてくれ!」
と言いながらソラの方を向いた瞬間、不意打ちのキッス。
「か、頭こそ、寝坊しないでよ!おやすみ!」
すくっと立ち上がり、ログハウスに走って戻ったソラ。
感謝すべきは、俺の方なんだけどなぁ…。
☆☆☆
翌朝、大きな音がしたのをきっかけに、ログハウスの長椅子の上で目が覚める。
既に工事が始まっていた。
「頭、おはようございます!」
着替えをしていたドワーフが手を止めて挨拶する。
「おはよう、ソラは?」
窓から辺りを見渡してもソラがいない。きっと、グルーン側に近いところで指揮しているんだろう。
「魔導機関車の手配がどうとかって言ってましたね」
やることが早いな。じゃ、ここの事は任せて大丈夫だろう。
同時進行で、ドライアドの農場整備、サキュバスの魔書整理、シェロちゃんの薬草収集とポーションの研究が進んでいる。
この1ヶ月で農場の寮が、そして間も無く倉庫が完成するというところだ。
魔書もリストアップがほぼ完了。今は帝国に行き、新たな魔書を探している。
問題はシェロちゃんのポーション。
効果の高いポーションは作れるのだが、安い材料で安いポーションを作るのが大変と言っていた。
良いポーションを薄めれば良いんじゃないかと提案したが、そんな簡単な話ではないようだった。
効果を100とした高いポーションと効果を20とした廉価版ポーションでは、治す最大値が違うというだけで、効いてくるまでの時間は変わらない。
しかし薄めてしまうと、その効果を発揮するまでの時間も長くなってしまうらしい。
何が原因か聞いてみたら、やっぱり虫だったらしい。
今のところ草とキノコだけで作っているようで、虫には手を出していないそうだ。
どんな虫が必要か確認して獲ってくるか…。
実は俺も…虫は苦手なんだよなぁ…。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




