その37,明日の為に
広い部屋の中央、入り口から縦に置かれた長テーブル。
奥にグルーンの長が座り、俺たちは左側に、シェロちゃん、俺、雪風の順に並んで座る。
「シェロお嬢様におかれましては、相変わらずお元気そうで何よりでございます」
立ち上がり、頭を深々と下げる長。
「それと、申し遅れました、わたくしはこの街の長をしております、シドと申します」
一度頭を上げ、自己紹介の後にもう一度頭を下げた。
「こちらこそ申し遅れました。俺はヤキトリ。シルフィの雪風。シェロちゃんは知り合いみたいだな」
俺達も椅子から立ち頭を下げて挨拶すると、シドに着席を促される。
「ささ、どうぞお座りください。今お茶をご用意しておりますゆえ」
「ねえ、シド。昔のような活気のある街とは言えないんだけど、何かあったの?」
椅子を後ろに引きながら、シェロちゃんが問いかける。
「ええ、実はこの街の産業を支えていたドレが帝都に引き抜かれまして。ドレ、というのは魔導士でございます。魔導砲を代表する、我が国の魔導機関の発案者なのです」
うなだれて肩を落とし、目には涙。
「彼女無しに、これから街の者達の生活もどうしたものやら…」
彼女、ということはそのドレというのは女性なんだな。
「じゃあ今は新しい魔導機関とやらも作れないということか。それで仕事も無くなって、みんな生気が抜けたようになってんだな」
「魔導機関自体は作れるのですが、新しい装置の研究が進まんのです」
頭を抱えるシド。
雪風が両手で頬杖をつく。
「みんな暇そうなのだ」
眼鏡を掛け、ポニーテールにしたメイド服のオークが、お茶を載せたカートを押してゆっくり向かってくる。
「お待たせしました」
目の前にソーサーとカップが置かれた。
無表情のオークに高いところからバシャバシャと注がれるお茶。飛沫を浴びながら提案を思いつく。
「シドさん、沢山の手が余ってるなら貸してくれないか?」
小さなミルクポットをとり、お茶に入れる。
カップの中で渦を巻くミルクを眺めながら続ける。
「食事はこちらでなんとか用意するとして、グランウッドまでの道を整備してくれ」
正直なところグランウッドにも取り囲むような塀が欲しい。
グルーンまでの道が出来れば、人の行き来も増え、その技術力の恩恵も受けられるだろう。
「定期的な武器の仕入れもお願いしたい。というか、そもそもの目的はそっちなんだけどさ」
「お嬢様のお連れ様の申し出、お断りするわけにはいきますまい。出来ることはやりましょう」
こうしてドワーフ族の街、グルーンの協力を得ることに成功した。
お互いにプラスになればいいんだが。
☆☆☆
装備の仕入れも済み、グランウッドに戻った俺たちは各々の仕事を済ませ、今後の予定を立てるためにシェロちゃんの家に集合した。
俺、シェロちゃん、雪風、サキュバス、ドライアド。
それぞれの役目を分担し指示、俺ももちろん動く。
現実的な計画としては以下の通りだ。
グルーンからは300人のドワーフが道作りに参加することになり、こちらからは毎日300人分の炊き出し、パンとスープの提供。
何日かかるか分からないが、炊き出しは鶏政が1日あたり金貨25枚で契約してくれた。
建築のプロのドワーフも居ると言うし、早く終わるといいな。
とりあえずは山を切り崩して道を作り、その後トロッコを敷く。
そうすれば雪風に頼まなくともコンスタントに流通が行えるはずだ。
ゆくゆくは魔導機関車を走らせたら便利だろうなぁ。
木材や物資の運搬は雪風が。
ドライアドが進めていた農場関連の見積もりも完了、建築を依頼。
住み込みの寮と倉庫を1棟ずつ。
ランクB冒険者の依頼とあって、信用払いで請け負ってくれた。ローンだ!
俺は資金を調達するために、高額なギルドの依頼を消化していくことに。
うさ耳ギルドマスターには今まで受けなかったような依頼も受けるように頼んでおいた。
しんどい。
それと、あの時のアイスピック髪飾り売りの少女も探さないとな。
あの髪飾りは売れる!
シェロちゃんには、『安いポーション』の量産が出来るように、その辺にある草とかキノコとか虫(虫は嫌と泣いていた)で作れないか解析をお願いした。
街で手に入るポーションは高価だ。
大抵の傷だって治る。
しかしこの辺りには強い魔物も居ないし、あくまでも中継地点であるグランウッドにはそこまでの物は求められていない。
だからこそ、疲れを癒してくれるファイト一発なドリンクくらいがちょうどいい。
サキュバスには在庫の魔書の調査、新たな魔書の収集を頼んだ。
あれだけある魔書をリストアップして、更に増やせだなんて鬼だ、とちょっと怒ってたけどさ。
さて、それじゃあ商売の準備といきますか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




