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その35,節穴

山を越える。


高く青い空を泳ぐようにして、雪風は進む。


風を切り、


雲を破り、


水面を切って進む。



ただ、すごく寒い。



これは考えてなかった。


高度が高くなるにつれて気温が下がるのは当然のことだったが失念。


シェロちゃんと抱き合って寒さをしのぎながらドワーフ族の街まで向かう。




また、山を越える。



しばらくすると山間部のひらけた部分に、街が見えてくる。


高い塀に囲まれ、外部からの侵入を許さない、そんな造りだ。



高度を下げていくと、物凄い騒ぎになっていた。



「ワイバーンが襲って来たぞ!!」


「野郎ども!やっちまえ!」


「魔導砲の用意だ!」



なんかすっごい物騒な言葉が聞こえてくるんだけど!?



街の中心部の、ワイバーンと同じか、それよりも大きいほどの鉄の筒に光が集まり、赤く、熱力が高くなる。



雪風は高度を上げ、慌てて砲台上空から離れる。



チューーーーーーーンッ


甲高い音を出して集束し始める鉄の筒、魔導砲。


ドゴオオオオオオォォォォォンンンッッッ



一瞬、光ったと思った瞬間に、光の帯を纏った眩い玉ががこちらに向かってくる。



が、問題無い。その玉は雪風の目の前で不自然にコースを変え、一つ越えた山に落ちる。


ドゴォンッッゴゴゴゴゴッ


山が1つ無くなった。あんなの当たったらひとたまりもねえ、ヤベェ。『ディフレクト』のおかげで玉が『それた』。



〈あれだけのパワー、食らったら死ぬのだ〉



「すごい技術だな…どうなってんだ?」


下を見下ろすと、次の一発までの準備をしているようだ。

砲台の周りの太い管のような物からエネルギーが供給されているようで、発射までのタイムラグがまだありそう。


「このタイミングで一気に降下しよう!」


雪風の首元を軽く叩く。


〈しっかり捕まっているのだ〉


羽ばたきを止め、その翼を広げる。

頭を下に向けると、そのまま身体も下向きになり降下する。


地面に近づくにつれ降下速度を落とし、ゆっくりと着地。


風圧であたりに砂埃が舞い上がる。


雪風の周りは、『ディフレクト』の効果で球状のバリアが張ってあるようだ。砂が当たらない部分との境い目がはっきりしている。


砂埃が落ち着いてくると、ちょうど街の入り口が見えてきた。


雪風の倍程度、5〜6階建てビルの高さはある塀に、2メートルほどの観音開きの扉、小さな守衛室が備えられていた。



まだ少し、砂埃が舞う中、扉からドワーフ族の男が1人出てくる。


こちらは敵意がない、というか、ワイバーンが悪いやつじゃないぞという意思の表明の為に、ドラゴン態からシルフィに戻ってもらう。


再び舞う砂埃と光の粒が混じり合い視界を奪う。ワイバーンが姿を消したように見えただろう。


「私はドワーフのファソ、警備隊長である」


ファソと名乗ったドワーフは、その身体よりも大きな斧を肩に担ぎ、右に左に、ワイバーンの姿を探す。


「お前ら大丈夫か?今ここにワイバーンが居ただろう??」


心配をしてくれたのは有難いが、我々がワイバーン御一行である。


「お前の目の前にいるのがワイバーンなのだ。節穴なのだ」


雪風が一歩進み、ドワーフの前に出る。


ドワーフがキョロキョロと見渡すが、見つけられずに怪訝な顔をする。


「どこにも居らんではないか」

キョロキョロ



「我なのだ」

人差し指で自分の顔を差す雪風。



「お前さんはシルフィだろう。確かに珍しい」

キョロキョロ



雪風がファソの胸ぐらを掴んで引き寄せ、左側の耳元で叫ぶ。




「貴様、節穴、よく聞くのだ、我ッがッワイッバーンッなーのーだッ!!」

ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!



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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
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