その32,移動手段
改めて街を歩くと多種多様な店が立ち並ぶ。
道具屋、食品店、武器屋、雑貨屋…。
俺にとってはまだ珍しいものも多いんだが、他の5人には大して珍しくもなく、ありきたり、代わり映えのしない店なんだよなあ。
当たり前のものが当たり前に売っている。
物によっては安すぎたり高すぎたり。
肉屋の前で立ち止まり、店主に話しかける。
「オヤジさん、この肉は何日くらいで入れ替える?」
「そりゃ旦那、生ならもって1日か2日、そのあと燻したり干したり。生の肉は貴重だからね」
生肉はギルドに買い取られた肉を仕入れる。
討伐とか、まあ仕入れられるかは運だよな。
ギルドに肉が入らなければ仕入れられない。
「ありがとう、また来るよ」
肉屋に手を振り、歩みを戻す。
俺、シェロちゃんと雪風。
ドライアドとサキュバス、一番後ろにジェシー。
「つまり、肉を仕入れるためには誰かがその辺で魔物や動物を倒して来ないといけないんだろ?効率が悪い」
「「「「「確かに」」」」」
「その動物さえいれば問題ない、ということだ」
「でも魔物がたくさん居たら、街も危ないよ??」
シェロちゃんがまあごもっともな意見。
「それについては問題ない。魔物である必要も無いし、育てりゃいいんだ。雪風に任せてしまおう」
「え?我か?そりゃ牛は育てていたけれども、あれはミルクを取るためだけなのだ」
「育てるのには変わらないだろ。まだどうなるかは分からんが、そうなったらやってくれ」
後ろを歩く雪風に、振り向かずに指示する。
「ま、まあ、我に出来ぬ事などないのだ。ご主人がそこまで言うならば、やるのだ」
畜産はやったことがない。だが、もともと雪風は放牧して畑を耕してたから大丈夫だろ。
まず人集めをしてからだな。
歩いていると防具屋。
俺が買った店よりはマシな装備が揃ってはいるが、売れてはいない。ラインナップが半端なのだ。
駆け出しが買うには高すぎる。
ここに来る冒険者にとっては大した装備じゃない。
「すまんが、ここの装備は何処から仕入れてるんだ?」
スキンヘッドの強面な店主が渋い顔で答える。
「毎度、旦那。装備はギルドが買い取ったものを売ってもらってるんでさ。中古だからかなかなか売れなくて困ってるんでさ」
「そうか、何か必要になったら買うよ、ありがとう」
「へい、そりゃどうも」
また歩き始め、ドライアドに質問する。
「今の防具屋、なんで売れないと思う?」
チラッと振り返り防具屋を見て答える。
「やっぱり、中古だからかしら…古そうだし、その割に高いわ」
「そうだな、半分正解だ。古いのに高い。中古であるかどうかなんてのはあまり関係ない。そもそも、ここで不要だから売ってしまうレベルのものを、ここで改めて買う必要も無いだろう?」
「旦那の言う通りよ。ここには帝都からの冒険者が中継に来るところだから、帝都で必要なものを買ってここで売っていくの。だからここに置いていくものは要らないものなの。代わり映えしないわけだわ」
サキュバスが続けて答える。
「今満足しているものより安くても、それより品質の落ちるものに買い換えるかしら?よっぽどお金が必要とかならわかるけど。高い装備を売って安い装備を買うなんてね」
「ヤキトリ様、どうしたら売れるのかな?」
シェロちゃんが腕に上目遣いで抱きついてくる。
「我も我も!我も知りたいのだ!」
雪風も逆の腕に抱きついて上目遣い。
一旦立ち止まり、2人がまとわりついたまま、振り返る。
「例えば、安い装備から高い装備まで揃っていたら、選ぶことが出来るだろう。今は選べないから目もくれない。帝都に向かう冒険者でも買える安いものも用意する。帝都から来た冒険者が満足する装備も用意するんだ」
「それが出来れば良いのですけれど、ここは中継地点になるほど、帝都とも他の街とも離れすぎていますわ」
ドライアドが話しながら歩く。
そのまま俺を通り過ぎ、後ろにぴったりとくっついてくる。
背中に当たるむにむにの触感。近い。
耳に息が当たってくすぐったいからやめてくれ。
「おほん、そこは大丈夫だ。良い移動手段を思いついている」
雪風を注目する5人。
人差し指を立て、ゆっくりと自分の顔に向け、
「わ、我?」
と引きつった笑顔で返す。
「やった〜!わたしドラゴンに乗ったことな〜い!!」
そう言いながら雪風に抱きつくシェロちゃん。
「この前サキュバスに貰った魔法で試してみたい事があるんだ。それが終わったらさっそく出発しよう」
うなだれる雪風。
「案外、ご主人はこき使うのだ…」
頭をポンポンと叩き、
「牛の2、3頭くらい軽々運べるんだ。100人乗っても大・丈・夫〜!!だろ?」
物置的なジョークを飛ばす俺。
「は?100人乗ったら流石に死ぬのだ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




