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その31,卸と小売

〜鶏政〜


「我のご主人なのだ!」

「私が一番最初に夜明けの逢瀬を果たしたんだもん!」

「アラ、アタシだってワーグの口づけを済ませたのヨ!」

「わたくしだって…わたくしだって…何もありませんわ〜!えーん!」

「ホホホホホ、ドライアド、私も何も無いわ!えーん!」


テーブルにつく、5人の美女(?)と1人の冴えない男。


側から見たら、何の集まりか分からんだろうな。


普段なら俺なんかは目に入らないだろう。


しかし、何の因果か、


俺は街唯一のランクB冒険者で、


元ワイバーンで絶滅危惧種のシルフィ、

街の有力者かもしれないエルフ、

変わり者だけど腕の良い服飾職人ワーグ、

エルフの従者で大樹の守り人ドライアド、

謎の魔書店主サキュバス。


この5人が一同に集まり、共に居て、みな慕ってくれているのだ。




雪風隷従騒ぎから数日、そんな街の話題の中心にいる6人だったが、今日は更に注目を集めた日だった。



ワイバーン討伐依頼の報酬。1,000金貨の支払いだ。ギルドに払われ、手数料が引かれたのち、手取り1,000金貨となる。もともと幾らだったんだよ。


依頼元は農協みたいな集まりのようで、どうやら微妙な反応だったみたいだ。


そりゃそうだ。

てっきり倒したという話かと思ったら、隷従させて、しかもシルフィの姿だなんて信じられんもんな。


確かに…ワイバーンの姿をその目で見た者じゃないと信じられんよなぁ。


「ほら!ご主人も我を見つめておるぞ!!我が第一夫人であるのだ!」


こいつがあのワイバーンか、と思っていただけなんだけど。

なんだよ第一夫人って。


「ヤキトリ様ぁ〜ワタシが一番だもんね?」


シェロちゃんが涙目で訴えてくる。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ、一体なんの話をしてるんだよ」


両手のひらを前に突き出し制する。


「ヤダ!はぐらかすのはナシヨ!旦那ちゃまは誰が一番好きなの?!順位を決めて!アタシ?それともアタシなの?!」


頭が痛くなってきた。


「まぁちょっと落ち着いて聞いてくれよ。今日、ワイバーン、つまり雪風関連の、依頼の件で報酬が支払われるハズだ。1,000金貨。そのうちジェシーには100金貨、このコートの代金を払う」


椅子に座りなおし、顔の前で手を組み、さながら何処かの司令官ぽく。


「ジェシーにはまだまだ服を作って貰うわけだし、足りないくらいだ」


シェロちゃんとお揃いのコートについては、異論があるらしいが、知らん。


「そこで、だ。俺は冒険者として、依頼をこなしながらこの街をもっと住み易くしたいんだ。俺の住んでいた世界ではもっと食べるものの種類もあったし、ここでは食べない生の魚だって食ってた」


生魚を食うと聞いて一気に青ざめる5人。


「それに、街に来る人の中には、シェロちゃん、覚えているかい?髪飾りの女の子」


ハッとして髪に手を当て、髪飾りを取る。

シュルリと髪が解け、美しいストレート。


装飾の施された綺麗なアイスピック髪飾りを、みんなに見えるよう、テーブルの中心に置くシェロちゃん。


「これと水袋を買った行商の女の子は、着るものも苦労していたみたいだし、街に来るまでも大変だったと思う」


「そうなんだよ。こんなに綺麗なものが、幾らで売ってたと思う?1,000銅貨だ。確かに材料費で言えばその値段で売るのもおかしくない。しかし、実際は2金貨で売れたんだ。護身具として1,000銅貨。髪飾りにすれば2金貨だぜ」


「あの時のヤキトリ様、カッコよかったなぁ〜」


うっとりとこちらを見つめてくるシェロちゃん。


ジェシーがそれを横目に、手を挙げて意見する。


「確かに、材料費だけで売ればそうかもしれないし、多少の儲けはあるかもしれないワ。でも、アタシもそうだけど、材料費だけを考えて売れば、漏れなく死が待ってるワ。作るのに時間もかかるし、デザインも自分で考えてる。付加価値を売ってるのヨ、プライドも上乗せしてネ」


いつになく真面目なジェシーに感心する俺。


「その通り。つまり、まずはあの髪飾りをもっと効率よく売りたい。効率よく『作る』のではなく、『売る』。俺が高く仕入れ、高く売る」


「でも、それだとヤキトリ様の実入りが少ないんじゃなくて?」


ドライアドが不安げな顔で質問。

笑みで返す。


サキュバスが挙手。


「流通においては、そうね、簡単に言うと卸と小売、というのがあるの。ここの人たちは自分たちで少しずつ売る分だけ仕入れて自分の店で売るでしょ?旦那は仕入れを一手におこなって、商売をしやすくしようと考えてるのよ」


みんな挙手して意見とか、俺が学生の時には考えられんな。優等生だな。感心感心。


ジェシーが挙手。


「アタシはもっと色々なモノが売っていたら良いワネ。ここは住むだけなら住み易いけど、帝都みたいに色々なモノがあるわけじゃないじゃない?この街は冒険者の中継地点ではあるけど、それ以上にはなり得ないワ。売ってるものがありきたりで代わり映えしないモノ」


「じゃあ、なぜ、代わり映えしないと思う?」


ドライアドに聞いてみる。

ドライアドはこの街に根付いた守り人だから、他の街に出ることもないからな。


「さっきの話だと、仕入れを自分でしているから、かしら〜?」

首を傾げ、人差し指を顎に当てて斜め上を見ながら考える。綺麗だ。


分かりやすく視覚からのほうが良いか。

ギルドの連絡もまだ来ないだろう。


「実際見聞きした方が早いかもな。ちょっと散歩がてら街を見て歩こう」



ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!


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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
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