その28,ちびっ子
『我は、我である』
ワイバーンの言葉。
ワイバーンの過去を共有し、心を許してくれた。
そう思う。
微睡の中、唇に何か柔らかなものが触れ、口の中に液体が注ぎこまれた。
この味は、例の翼を授ける味。
体の奥から魔力の回復を感じる。
「ヤキトリ様!ヤキトリ様!」
ドライアドの声。
目を覚ますと、口移しで飲ませてくれたことがわかった。
「巨狼族のキッスは生涯の愛と忠誠のしるし…これで身も心もアタシは旦那ちゃまの・モ・ノ!」
お前さんかーい!!
「他意はないけどなんでジェシーなの?どうしてジェシーなの?」
「アタシがジャンケンで勝ったからヨ」
まあいい、いや良くない。全く良くない。
「そもそもなんでここにジェシーが居るんだよ…」
「旦那、あれから3日ずっと眠り続けていたんですのよ?」
サキュバスが心配そうに見つめる。
「アタシは帰り道の途中、ものすンごい叫び声が聞こえたから戻ったのヨ。そしたら急な雨の中、びしょ濡れの旦那ちゃまがぶっ倒れてるんだモノ、担いでここまで戻ってきたのヨ?」
見回すと見覚えのある天井。ここは、ギルドの医務室か。
「ヤキトリ様、ずっとうなされてて…心配したんだから!」
シェロちゃんが俺の頭を抱きしめる。
マシュマロで息が出来ない。
このまま死ぬのか。苦しい。
ああ…シェロちゃん…刻が…見える…
「貴様、そこをどくのだ。我もやるのだ」
なんだこのちびっ子。命の恩人かよ。
ワンピースを着た見知らぬちびっ子がシェロちゃんを剥がすようにどかし、俺の頭を平たい胸に押し付ける。
ブヘッ
「シェロちゃん苦しいって。それで、こちらのちびっ子は?」
「我はちびっ子ではないのだ。お前とあんなに熱く繋がったではないか。お前は我、我はお前なのだ」
えっへん、と平たい胸を張って自慢するな。
シェロちゃん、サキュバス、ジェシー、ドライアドの視線が痛い。
このロリコンめ!そんな冷たい視線だ。勘違いにも程がある。
「いやいや、ちょっと待て。このちびっ子、ホントに誰なんだよ…」
大きな声を出す力もない。
なんとか魔力は回復してきたものの、体力もまだ万全ではないのだよ。
「我は、お前たちがワイバーンと呼んでいた者なのだ」
つまり?
「我は、あの時のお前の魔法により、人の姿にも、ワイバーンの姿にも変わることが出来るようになったのだ」
「「「「えーっ?」」」」
皆、驚きの声を上げる。
ちょっと待て、そもそもお前ら誰だと思って連れてきたんだよ。
「何も言わず着いてきたから、てっきりヤキトリ様の知り合いかと…ワイバーンには負けちゃったのかな?って思ってたし…」
アホの子シェロちゃんはともかく、揃いも揃って…。
「まぁいいや…とにかく、俺は、まだ眠っていたい…」
疲労感が強く、身体が重い。思うように動かない。
まるで煎餅布団を5枚くらい掛けられているようだよ…。
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