その23,ドライヤー
なんとかデカキモいカナブンを真っ二つにしたところで記憶がない。
あと顔面が痛い。何故だ。
記憶にあるの乳、尻、太もも……。
まあいいか。
目を開けると2つのスケスケの丸いお山の向こうにシェロちゃんの顔。
「ヤキトリ様、目を覚ましたみたい」
むにむに柔らかな枕…?なるほど、膝枕である。
そして目の前にあるのはスケスケのマシュマロちゃん。
「そうか、身体が濡れてしまったんだな、乾かさないと風邪を引いちまう。さあ早く脱ぐんだ!」
「もう!」
シェロちゃんが膝から俺の頭を落とす。下が土で良かったよ…。
連続して魔法を使ったせいか、少し疲れを感じる。
こんな時のために、魔法回復ポーションを買っておいたのだ。
皮袋から紫の液体が入った小瓶を取り出す。
ちょっと埃かぶってるけど大丈夫かよ。
キュポッ
小瓶を開けると嗅いだことのある匂い。
翼を授けてくれるエナジードリンクの匂いだな。
俺の世界だと実際には生えないけど、この世界だと『翼を授ける』なんて言われたらホントに生えそうで怖いわ。
ゴクリ
一口で飲み干す。次第に身体が熱くなり、疲労が無くなるのがわかる。
空いた瓶は革袋に戻しておこう。
「冗談はさておき、服を乾かそう。着たままで大丈夫だ」
スケスケの2人を並んで立たせる。多少乾いてきてはいたが、このままというわけにもいかない。
「火のピクシー、風のピクシー出ておいで」
皮袋を開き、呼びかけると、勢いよく飛び出してくる。
「「ヨンダ?!ヨンダ?!ヤクニタツ?!」」
顔の前を笑顔で回転しながら飛び回り、肩に止まって腰掛ける。
「役に立つぞ、"火"は"風"の前に立て。温かい風をシェロちゃんとサキュバスに当てるんだ。あまり熱くするなよ」
「「ハーイ!!」」
片手を挙げて元気よく返事をすると、シェロちゃん達から少し離れた前で止まり、火のピクシーが自ら発した炎に包まれる。
そして風のピクシーが風を起こし、温風を2人に当てる。
ドライヤーだ。
「ハァハァ…ヤキトリの旦那の!熱いのがたくさん来るッ!」
ホントこいつの言い方には語弊が有り余るところあるな。
前後左右からの温風に当たり、間も無く服も乾いたようだった。
「よし、服も乾いたことだし、それじゃ前に進むか!」
サキュバスはまた影に潜り、ピクシー達も寝床に帰る。
俺たちは焦げたデカいカナブンの足の間をくぐりながら進んだ。
森の先、道無き道と言うわけでもなく、ひとすじに続く獣道のような道をひたすら歩き続ける。
しばらく歩くと森も深くなり、薄暗く、日差しも入らなくなってきた。
「なんだか気味が悪いねえー」
そう言うと、俺の腕にしがみつく。
バサバサバサッ
ギャーギャーギャーギャー
鳥の羽ばたきと鳴き声。
「きゃっ」
パキッ
踏みしめて折れる枝の音。
「ひぇっ」
シェロちゃんはその物音や声、一つ一つにビクッと反応し、しがみつく力も強くなる。
ドドドド…
遠く離れた森の入り口の方から鳴り響く地鳴りのような低い音。
ドドドド…ドドドド…ドドドドドドドドッ
段々と音が大きくなる。
シェロちゃんは立ち止まり、あまりの恐怖に足は震え、涙目の上目遣いでしがみついてくる。
「ううう、ヤキトリ様ぁ…」
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ
『ちゃ………ちゃまァ………』
大きな地鳴りとともに、聞き覚えのある声。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
「旦那ちゃま〜ッ!ヤキトリの旦那ちゃま〜!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
「旦那ぢゃま゛ァ゛〜!ドゴに゛い゛る゛の゛ォ゛〜!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ
内股で脇を締め、腕を左右に振り、走って向かって来る巨像。
現れたのは、そう、
巨狼族のジェシーだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!




