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コント脚本『ストーカー教室』

作者: 天月 火馬人

A:ダサイ男子高生

B:ていねいでさわやかな中年の男子講師(お料理教室の講師風)




○繁華街(昼)

 Aが歩いている。通り過ぎる女の子にハッとして目で追うA。

 A「あ、あの子、かわいいな……よし、ストーキングしよう!」

 A「でも、ストーキングのやり方わからない、どうしたらいいのかなあ?……」

   キョロキョロするA。

 A「あ、こんな所にストーカー教室が! 入ってみよう」

      ×   ×

   ストーカー教室の前。

   ノックするA。返事はない。

   Aはそろそろとドアをあけて、顔だけ入れる。

 A「あのう……」

   教室をみわたすA。

 A「誰もいないな……」

   いきなりAの背後にB。

 B「お前の住所しってるからなあっ!」

 A「わああっ!」

 B「お客様、だめですよ。背後ががらあきですよ~」

 A「さすがストーカーの先生。まったく気配を感じなかったですよ」

 B「そうでしょうね。わたくしプロですから!」

   いばって胸をはるB。

 A「明るいなあ~、意外に前向きなんだなあ~」

   少し引くA。

 A「で、あの、お、お前の住所しってるからなあ、って?」

 B「ああ、あれはストーカー業界の『はじめまして』みたいなものです」

 A「こわっ! しかも、業界って……」

 B「お客様、よろしければ、体験入学されますか?」

 A「ええ、ちょっと、ストーカーやってみようかなって思って……」

 B「ご安心ください、お客様! 当校の卒業生は、なんと一万人超えですから!」

 A「不安だわ! 日本の未来! 日本の若者、もっとがんばれよ!」

 B「じゃあ空いてる席におすわりください、授業をはじめます」

 A「は~い」

   Aは席にすわる。

   席はBのすぐ近く。Bは獲物をみる目でAをみつめ、舌なめずりをする。

 A「席、ちかっ! めっちゃ見られてるよ~」

   Bが背をむけてるすきに、Aは席を後に、少しひく。

 B「では、この図をごらんください」

   黒板には、子供向けの可愛い絵で図解。

 B「好きな人に告白して、ふられて、それでもしつこくつきまとう。だが、本人にはストーカーの自覚が全くない。これが、基本のストーカーデビューです。」

 A「絵が可愛いな、内容が入って来ないよ……」

 B「ストーカーの主な生態として、自分の思い通りにならないと、すぐにイライラする、なにか言いたくても、だまって遠くからにらむだけ、腹が立った事をいちいちメモしておく、などがあります」

 A「やだな~、やられたくないな~」

 B「これが基本コースですが、他にもコースがあります」

 B「不倫からはじまるコース、ご長寿でも元気コース、はじめはかるいきもちだったのにそしてだれもいなくなったつめたくなったきみをだきしめそれでもあいしてるコース」

 A「はじめはかるいきもちだったのにそしてだれもいなくなったつめたくなったきみをだきしめそれでもあいしてるコース、気になる~!」

 B「どうなさいますか?」

 A「えっと……どれも怖いし、選べないな~」

   Aはどれにするか悩んでいる。すぐにイライラしはじめるB。

   舌打ちをして、殺意のこもった目でAをみる。

 A「やば! すぐにイライラしだした! あぶねえ~、やっぱ本物なんだ……」(小声)

 A「やだよ~あの目つき、なにが言いたいの~?!」(小声)

 A「じ、じゃあ、基本コースで……」

   Bは、急に天使の笑顔になる。

 B「はい、ありがとうございます~」

 A「よかった~、殺される前に選べて……」

 B「お客様」

 A「はい?」

 B「ストーカー……いつやるの?!」

 A「今でしょ! って……いろいろ助けて~!」

 B「では、いよいよ実技にはいります」

 A「実技! なんか僕、このまま、ここにいていいのだろうか?……」

 B「では、この学校の校訓を言って、始めましょう」

 A「校訓、あるんだ……」

 B「料理のさしすせそは『砂糖、塩、酢、醤油、味噌』ですね。これは有名です。でも、ストーカー業界にも、さしすせそがあります」

 A「はあ……」

 B「ストーカーのさしすせそ~」

   黙って見ているA。

 B「ストーカーのさしすせそ~」

   黙って見ているA。

   Bは急に、殺意のこもった目でAをみる。

   Aをにらみながら、ブツブツなにかを言ってメモしている。

 A「あ! ふ、復唱するんですね、すみません……」

   Bは急に、天使の笑顔になる。

 B「ストーカーのさしすせそ~」

 A「ス、ストーカーのさしすせそ~」

 B「さ~殺意をこめて、し~しつこく、す~ストーキングで、せ~せめたてて……」

   Aも一つごとに復唱している。

 B「そ~味噌!」

   ずっこけるA。

 A「さ、最後、味噌お?!」

   Bは急に、殺意のこもった目でAをみる。

   激しい舌打ちをしながら、今度は、ゆっくり服の中の胸ポケットに手をいれる。

 A「味噌……ですよね。ふつう味噌ですよ、そこは……精神安定には塩分大事、うんうん……」

   Bは急に、手を戻し、天使の笑顔になる。

 A「ここ、ヤバイな~。やっぱり来るんじゃなかったな~」

 B「お客様、ストーカー……いつやるの?!」

 A「今でしょ! って……誰かあ~!」

   Aの携帯に着信音。あわてて携帯を見るA。

 A「え! 前に告白した子……OKだって!」

 A「先生! 僕、こんな学校やめます! やった~! 今日からリア充だ~!」

   Bは急に、殺意のこもった目でAを見る。じりじり迫ってくる。

 A「あ、あの……」

 B「席も、勝手に動かしやがって……気付かないとでも思ってんのか? あ?」(小声)

 A「いまごろ?! 独り言、こわっ……」

   Bはゆっくりと、服の中の、胸ポケットに手をいれる。

 A「ひいい~~、こ、殺さないでえ……」

 B「体験入学、ありがとうございました~」

   『記念品』と書かれた味噌をだすB。

 A「最後は、味噌お~!」

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