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第1話


 1


学校の教室。騒がしい昼休憩。そして教室の隅でボッチ飯を食らう俺。

「絶対におかしい…」

「何がおかしいって?」

一人で呟いた俺に反応するのは幼馴染の千春だ。というかこいつくらいしか俺に知り合いはいない。

「なぜこの俺に友達ができないんだ…」

「そんなのは真尋ちゃんの言動以外にないと思うよ?顔だけはいいんだから」

「顔がいいのは知ってる。俺のどの言動が悪いってんだよ」

「そういうところだよ…」

千春はよくわからないことを言っている。俺の何が悪い。

「で、テストの方は大丈夫なの?」

「安心しろ。この紅蓮の覇王である俺に死角はない」

「赤点は?」

「…かろうじて回避…」

「よろし…いのか?」

いいに決まっているだろう。卒業できる。

「いいからお前は次の授業の準備しろよ」

「はいはーい。真尋ちゃんも準備しなよ?」

「いや、俺は帰る」

「え?」


 2


帰り道に公園による。いつも儀式を行う公園だ。俺はこの公園が好きだ。まず人が来ない。次に人が来ない。とにかく人が来ない。そんなわけで俺が儀式をするのに丁度いいのだ。鼻歌を歌いながら魔法陣を描く。いつも通りの魔法陣だ。ただいつもと違う点があるとしたら魔法陣が光りだしたことくらいだ。大した問題ではない。

「私を召喚したのは君か?」

なんか魔法陣からでてきた。誰だこいつ。まぁいくら人が来ない公園とはいえ、一人くらいいてもおかしくないだろう。

「ここに人間が来るとはめずらしいな女よ。何ようだ」

「いや、君が召喚したんだよな?」

何言ってるんだこいつ。

「え、何?私召喚されてから放置なの?」

「ちょっと静かにしてくれる?」

「はい…」

まぁなんだかんだで俺はラノベの鈍感系主人公じゃない。今の状況を鑑みるに俺がやたらめったらに描いてた魔法陣がなんか成功してこの美少女が俺の使い魔として召喚されたのだろう。でこのパターンでの王道といえば…

「おい主!さっそくだが私の気配を察知した魔獣が現れた!」

「だろうな」

「やけに冷静だな!?」

だがここで問題が発生した。

「見えん」

「は?」

「魔獣なんて見えんのだが」

そう。俺には魔獣が見えなかった。

「主。冗談…だよな?」

「いや、マジ」

「確かにあの魔獣は魔力のない者には見えないが」

なん…だと…。俺に…魔力がない…?

「だが私を召喚するには魔力が必要だよな?」

だよなだよな。俺に魔力がないはずがない。

「とりあえず主には一旦魔力を私から送ろう。きっと私を召喚するときに魔力を消費しすぎたのだろう」

「うんうん。それそれ」

というかどうやって魔力を送るんだろうか。定番どころだと…キス…とか…。

「主?もう送ったから魔獣が見えるはずだぞ」

あんれぇ?何のイベントもおこってないぞ?どうやって送ったんだ?Bluetoothかよ。とはいえ実際に魔獣は見えるようになった。なるほど。これが俺の初陣の…あい…

「ふぁ?」

でかい。マジでかい。なにあれ。5メートルはあるんじゃねーの?

「ということでだ、主。ささっとやっつけてしまってくれ」

「え?こういう時って大抵召喚獣であるお前がサクっとやっつけてくれるんじゃ…」

「いや、見ての通り私は支援系だが」

ふとそいつに目をやるとそいつは杖を持ってローブを着ていた。なるほど。支援系だ。

「で、俺はどうやってあいつを倒したらいいの?」

「知らないよそんなこと」

マジかよ。

「あいつ強いの?」

「まぁそこそこ」

「そうか」

逃げよう。無理だ。何が紅蓮の覇王だ。ただの帰宅部で運動不足な男子高校生だぞ。

「よし、逃げ…」

「まぁあの魔獣はインターネットの接続を悪くするだけだからここで逃げても大丈夫かな…」

「よし。あいつは絶対に逃がさん」

あんな奴を野放しにできるか。あいつを逃したら何人の人が死ぬかわからない。

「紅蓮の波動よ。覇気をまといて我が手に宿れ!」

「なんか痛い人がいるよ!ママ!」

「しっ、見ちゃいけません!」

気が付いたらいつもは人がいない公園に人がいた。

「なぁあの魔獣ってあの二人にはみえてないのか?」

「魔力がない者には見えないと言っただろう」

「この俺の両手にいい感じにかっこよく纏われてる炎は?」

「当然魔力のない者には見えない」

くそったれが。まぁとりあえずはあいつを倒そう。なんか今の俺めっちゃ強そうだし。

「おら、パンチ」

《グガァァァアア》

え、思ってたより弱い。魔獣は爆発して消滅した。

「案外やれるものだな、主」

「お前実は期待してなかったろ」

こいつには後で話をする必要がありそうだ。


 3


俺は一人暮らしだ。高校に進学するにあたって親元を離れることになった。そして知り合いが千春しかいない俺は当然女性どころか人を家に招待したことはない。

「ど、どど、どうぞお入りくださいぃ」

だから、こうなる。

「主はあれか。コミュ障というやつなのか」

「う、うるせいやい!」

なんでこんなやつを召喚してしまったのか。

「俺からお前に聞きたいことはたくさんあるんだが、まぁまず自己紹介をしてもらおうか」

「うむ。私は今まで色々な名前で呼ばれてきたからな。まぁオズとでも呼んでくれ」

「俺は破魔真尋。これからよろしく。ところでお前は攻撃手段は持ってないのか?」

「豹に獣化すればできないことはないが、できればやりたくない」

なるほど。きっと変身中に服が消滅するとかいう女の子の変身あるあるみたいなものだろう。ならば俺は触れないでおこう。紳士だから。

「よしじゃあ今からは説明パートといこうか。まずあの魔獣は何なの?」

「話すと長くなるんだが」

「3行でまとめろ」

「ある日悪い魔法使いが人間界を滅ぼそうとした。

 悪魔たちはそれを阻止しようとした。

 しかし悪魔たちの力は及ばなかった。

 そしてやむなく悪魔たちは魔獣を召喚した。」

さすが俺の使い魔だ。しっかりと王道に則った説明をしてくれる。

「でもさっき会った魔獣は電波を悪くする魔獣なんだろ?どう考えてもその悪い魔法使いってのを倒せそうにないんだが」

「結果だけ言えば魔法使いの討伐に貢献したのは召喚された魔獣のごく一部なんだ。だから召喚された魔獣の数の割には人間に害をなす魔獣の数は少ないんだ」

あの魔獣も十分害をなすのだが。まぁそれは置いておくとして。俺が一番聞きたかったのはそんなことじゃない。

「ところでオズよ」

「なんだ?」

「俺のあの能力はなんだ?やっぱり俺には隠された力みたいなものがあったのか?」

これが一番気になることだ。普段から俺にはなにかあると思っていたがまさかここまでの力を持っていたとは...。

「いや、主は何の力もない、ただの人間だ。なぜ私を召喚出来たのかもさっぱりわからん」

「やっぱり俺にはそんな力が...今なんて言った?」

「主には何の力もないよ」

何だと。だがそれはまたおかしい。ならなぜ俺は両手に炎を纏うなんてことができたのだ。

「ただ主がただの人間だったのはさっきまで。今はもう悪魔の契約者だよ」

「そうか俺にはやっぱり力があったんだな」

ん?ちょっと待て。今こいつ悪魔の契約者とか言ったか?俺は悪魔と契約とかいうえっちいイベントが起きそうなことをした覚えはないんだが。

「悪魔の契約者ってどういうことだ?」

「え、私そんなこと言ってませんよ?」

今あいつ明らかにしまった、って顔したな。なんか隠してるなあいつ。まぁ聞かれたくないなら聞かないでおこう。なにせ俺って紳士だから。

「今主は私の能力を使用することが出来る。それによって生じたのがあの炎だ」

なるほどあいつの能力は炎の類なのか。カッコいいな。

「で、そのお前の炎の能力を使う条件はあるのか?」

「炎の能力?私の能力はそんなものではないぞ」

なんと。

「じゃあ何の能力だよ」

「妄想だ。常日頃から妄想してるような奴は力を上手く使いこなせるだろう。だが初めて使うのに両手に炎を纏わせるなんで芸当をしたのは主が初めてだな」

「それってつまり...」

「主はこの世の中で類稀なる妄想力を持っているということだ!」

「なんか嬉しくない!」

なんだ妄想力って。いや、確かに中二病入ってるから妄想はよくしてたよ?けどね?妄想力が高いって言われると中々キツイものがある...。

「つまるところ主に私が与えた力は自分が妄想したものなら何でも作れるという能力だ」

「妄想ってなんか嫌な...ん?」

ちょっと待て。いまあいつ何でも作れるって言ったか?それって...

「とんだチート能力じゃねーか!」

「まぁ使い手によっては」

やべぇ。俺、もしかしてメッチャ強いんじゃね?世界救えちゃうクラスじゃね?

「ただこの能力を主に貸すには条件がある」

お、強すぎる能力には制限があると。お決まりだな。

「おう。何でも言ってみろ」

「主には定期テストの学年順位を1桁まで上げてもらおう」

「そんなのお安い御用...今なんて言った?」


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