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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
99/104

揺らぎ

 トヨとノウの闘いは単純明快な力と力のぶつかり合いだった。

 ちょこまかと走り、ノウに向かっているトヨへ、ノウは錆びの剣を振り下ろす。

 ノウの攻撃はただの攻撃ではない。錆を操る妖刀ナマクラの能力を付加し、振りおろしの勢いに相乗効果をかけて振っている。早さもパワーも極限にまで高めていた。

 紛れもない全力の一撃。

 頭上から堕ちてくる太い錆びの塊に、トヨは手に持った大剣エンシェントを振り上げた。

 ガキィン! と金属と金属がぶつかり合う。ノウの攻撃は制止していた。

 トヨは早さもパワーも極端に高めたノウの攻撃にばっちりと合わせて来たのだ。ほぼ同等の力と早さをもって。

 打ち合った直後にお互いは得物を引いた。

 ノウは歴然とした力の差を感じた。サルが倒されてしまったのも今なら納得できる。

 エンブ、サル、そしてノウ。三人はある島で生まれ育ち、妖刀を集めるために鍛えられた。来る日も来る日も剣技を磨き、旅立ちの日に備えた。

 その日々の中でノウは否応なしに自分の実力に気付かされた。三人の中で自分自身が一番弱かったことに。三人の中で三番目。自分が女だから仕方がないと思っていたが、今対峙しているトヨも女だ。

 同じ女なのに、トヨは強い。

 ノウはさらにもう一度、トヨに向けて錆びの大剣を振るった。

 トヨも再び、ノウの攻撃に合せて大剣を振る。

 二度目の衝突。互いの力と力がぶつかり合う。まるで先ほどの衝突を再現したかのような光景だった。

 しかし、それは一瞬で変った。

 自分自身の力をかけた側とは違う方向に、ノウの錆びの剣が動いた。力を抜いてなどもいない。動かされた。

 トヨに。

 トヨは力でノウの攻撃を押し返した。ノウは思わず、後ろに飛び退いて距離を取った。

 その行動は他でもない、自分自身が力負けしたことを認めてしまったこと。

 ノウは歯噛みした。このまま力をぶつけ合っていては、今度こそ本当に負けてしまう。

 負けられないし、負けたくない。使命のためにも自分自身の意地のためにも。

 しかし、このまま力をぶつけ合っているだけでは勝ち目はない。何か、勝つためにできる手段はないか?

 ノウはすぐに気付いた。トヨはもう一人の仲間とこちらに向かっていたはず。妖刀を持った長身の女、リオだ。彼女はまだ来ていない。

 理由はすぐに分かった。妖刀ムラマサとムラサメはノウの持つナマクラにとっては天敵以外の何者でもなかった。だから、罠をしかけておいた。あの妖刀で怪物の本体を攻撃された時に、拘束できるように。それが見事に成功したのだろう。でなければ、倒されたか。

 どちらでもいい。ここに来ていない、来られなくなった事実に違いはない。

 もう一人の男の仲間は元よりノウの元に来てはいなかった。

 これは使える。トヨをゆすぶるのに。

「あなたのお仲間は今頃どうしているんでしょうねえ?」

 仲間。皮肉なものだ。仲間に騙されたことに動揺したノウが、今度は相手の仲間を使ってトヨをゆすぶろうとしているのだから。しかし、自分が動揺した事実は、この作戦に効果があるだろうという自身になっていた。

「む? さあな」

「ずばり、当ててごらんにいれましょう。連れて出た仲間、妖刀を手中に収めた女は、妖刀でもって私のサビを足止めしに、もう一人のメガネ君はまだ町にいるのでしょう。恐らく負傷して」

「もう一人いるぞ」

 トヨはマイペースに言った。

「……そうですか、失礼しました。勉強不足で」

「知らないのか。そいつは捕まっているんだ」

「そ、そうですか……ペースが狂いますねぇ。ともかく景色を見てみなさいな」

 ノウが辺りを見渡すのをトヨに促す。トヨも首を回して辺りを見た。

「フツーだ」

「感想を尋ねてるんじゃないんですけど。気付かないのですか? この止まらぬ景色を!」

 つまりはサビの怪物は動き続けているということ。

「だからなんだ。もったいぶるな」

「止めに来た仲間はどうなっているんでしょうかねぇ?」

 妖刀を持って来ているのなら、張った罠にかかっているはず。倒せてはいないが、当分は動けまい。

「もしかしたらもう手遅れかも……?」

 ノウが不敵な笑みを向ける。今すぐに殺せてはいないが、このまま直進していけば、壁にぶつけて潰すことができるだろう。当分は動けるはずもない。

 仲間の死は確実に近づいているのだ。仲間との絆が強い連中ほど、動揺せずにはいられないはず。

 さあ、ミコ。動揺してみせなさい!

「そうか。死んでたら仕方ないな」

 ……。さっぱりとした、ノウにしてみれば驚きの返答だった。

「は?」

「まぁ、そうそう死ぬ奴でもないだろう。で、それだけか?」

 トヨはケロっとしている。心には波ひとつとて立っていないような平静さ。ノウの予想を遥かに裏切る反応だった。

「酷くドライな……いいですか? このままでは下の仲間も向うにいる仲間の命も危ういのですよ?」

 直接言ってやった。そうでしかはっきりと伝えられないと思った。ノウはトヨを馬鹿にしていた。

「アーニィたちは関係ないだろう。今は私と、お前との闘いだ。お前を倒せば全てが終わる。それで十分だ」

「仲間のことは全く考えていないと。くくく、そう簡単に私が倒せますか? いずれ、もうすぐ、仲間たちの死が待っています。自分で助けられたはずのねぇ!」

「考えてどうする。お前を早く倒すだけでいいじゃないか。簡単だ」

 ノウは思う。目の前の女は、馬鹿といえば馬鹿に違いないが、常に核心だけを捉えている、ある意味では分かり易くて賢い考え方をしていた。

 もっと簡単に言えば単純。単純に核心を見ているだけで、よそ見をしてくれない。揺るがない。

「……くくく、全く揺らぎませんね。もしもは考えないんですか?」

 もしも、仲間の身になにかあったら。もしも、自分の選択次第で生死を分けるとしたら。もしも、自分がただ見捨てられていたと気付いてしまったら。

「考えてどうする。お前を倒さねばならん。倒せばアーニィもリオも無事、後は私が倒せばいいだけのことだ」

 トヨがエンシェントの切っ先をノウに突きつける。

 単純すぎる。自信がありすぎる。自分がノウを絶対に倒せるのだと思っている。

 ノウは分かった気がした。その自信と単純さが目の前の少女の強さの根源なのだと。自分とは違う、小手先だけでどうにかできる相手じゃない。

 本当に皮肉なものだ。前に対峙したときにもしも自分が彼女と同じように、異常な単純さで彼女らを倒すことに終始していれば。あのときに勝てたかも知れなかったのに。

 自滅するように揺らいでしまった自分。それと正反対の鏡が目の前にいる。

 今からでも、間に合うだろうか。

 くくく。いいや、間に合わせてみせる。自分もやってやるだけ。ミコを倒せばいい、それで自分は十分すぎる。

 ノウは再び錆びの剣を振り上げた。

ども、作者です。


続き、全く書けていないですねぇ……どこかのタイミングで更新が停止しますね、この調子だと。

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