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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
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力と力

 大剣が振り下ろされる。果たしてそれは剣と呼べるのか。ノウの右肩から先を覆い、腕だけでなく手の先の妖刀ナマクラまでを覆った錆びの塊。刃と呼べるものは付いていない。形状はサーベルに近いが、与えるダメージの性質を考えれば、鈍器に近いだろう。それも重量と破壊力の高い鈍器。

 トヨに向かって振り下ろされている。能は一歩も踏み出してはいない。その必要がなかった。長さは優に二人の間の距離を越えている。

 トヨは両手で持った大剣エンシェントを頭上に上げ、その攻撃を受け止めた。

 腕から足まで一瞬で衝撃が伝わる。錆びの塊は金属の塊でもある。金属の重さに加え、長さによる遠心力の増加もある。一撃の衝撃は人ひとりは簡単に踏みつぶせるほどはある。女の腕で簡単に動かせる代物ではない。あの妖刀ナマクラの錆を操る能力が、ノウの非力さをカバーしているのだ。

 言わば作られた馬鹿力。馬鹿力ならトヨも負けてはいない。

 トヨは潰されることなく、攻撃を受け止めることには成功した。重い衝撃こそ伝われど、受け止めきれないとは思わなかった。

 だが、一点のぬかりがあった。足場だ。

 足場もまた錆び。金属の足場は見た目では凸凹としているが、力がかかって掘れる土もなく、摩擦も少ない。踏ん張りが思った以上に訊かなかった。

 足が滑り、トヨの意図せずに後退してしまう。力と勢いを吸収しきることはできなかった。

 弾き飛ばされるような形で後退されたトヨ。このままでは怪物の背から落下してしまう。だからといって、何もしないトヨではない。

 トヨは背後の足もとを見た。一つ、とっかかりになりそうなものを見つけた。一際太い角材。元は家の柱に使われていた木材だ。

 トヨはそこに足をかけた。幸い、大きな方向転換はせずに済んだ。足を延ばすだけで届く。

 が、届いたのは片足のみ。後ろに引っ張られるような勢いを殺すことはできず、トヨはこてんと転び、そのまま後ろにでんぐり返しをするように、二回三回ごろごろ転がった。

 とりあえず、落下はしなかった。

 体に痛みはあれど、何度も転がったためにダメージは全身に分散され、大した怪我もしなかった。

 トヨは何事も無かったように起き上る。

「む。ちゃんと闘えるじゃないか。遠くからばかりで自分で闘わないから、臆病者かと思っていたぞ」

 トヨは余裕そうに言った。

「馬鹿を言わないでくださいよ、もしや闘いの基本をご存知でない?」

「基本?」

「ええ、何だと思います?」

「殴る、蹴る、切る」

 思わず、能はため息を零した。

「本気ですか? やれやれ闘いの基本は如何にして攻撃を食らわないようにするかですよ。殺されぬよう、安全に安全を重ねた結果が、遠距離での闘いです。基本に忠実かつ最も賢い闘い方なんですよ、くくく」

 勝ち誇った顔でノウが言う。

「む。そんな賢い戦い方をわざわざ止めたのか。馬鹿だな、お前」

 もっともな指摘であった。ノウの頭に金属がかち合ったような音が鳴った。指摘されたのも、指摘のされ方も、馬鹿にされたのも、むかつく。

「あなたは本当に……人を小ばかにするのもいい加減にしなさい!」

 再度、ノウが錆びの体験を振るった。

 トヨも大剣エンシェントを振るう。今度はただ受け止めるだけでは済まさない。相手が分かり易い攻撃をしてくれるのなら、こちらも分かりやすく、同じ力で対抗するだけだ。

 ノウの錆びの大剣と、大剣エンシェントが二人の間でぶつかり合った。

 両者の腕が衝撃で震える。それどころか二つの力と力のぶつかり合いは辺りの空気をも震わせているかのようだった。

 力と力、人工の馬鹿力と本物の馬鹿力のぶつかり合い。

 お互いに思った。この馬鹿力女め、と。


ども、作者です。


予約投稿するつもりが、ミスってすぐに更新してしまったので上げ直しです。

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