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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
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捕獲

 任されたことを果たすのに、リオが迷うことはない。もとより迷う要素がない。巨体の怪物を止めるのは容易ではないが、算段は立ててある。

 リオは一直線に踏み下ろされた腕へと向かった。トヨが登り切ったのを見届けて、近い側の足が踏み出されるまで待っていた。

 さらに少し待っていた。見たところ、怪物の支えているのは三点のみ。両腕とずるずると引き摺っている尻尾のような部分。あれがサビ、すなわちは金属でできているのだから、全体の重量は木でできたものと比べれは遥かに大きいはず。ならば、足止めをするにはバランスを崩してやるのが最善の一手だ。

 足に近寄り、リオは走る勢いをそのままに、妖刀ムラマサを斬りつけた。

 刀身を押し込む。一切の抵抗が無く腕に突き刺さり、斬っているという感覚もなく走り抜ける。

 足は水を切るように斬られていた。リオはすぐに方向を変えて、外側に抜け、振り返った。

 果たして作戦通りにことは運んでいるのか。

 確かに、軸足は斬られていた。しかし、それはあくまでも刀身の長さだけ。

 木を十本はまとめてやっと匹敵するほどの太さの腕に、例え刀身一杯突き刺していたとしても、中心には届いてはいなかった。

 そのせいか、半分以上が残った軸足はバランスを失うことなく、そのまま怪物を支え続けていた。

 もう少し踏み込めていれば……もしくは、周回して足全体を着ることができれば。

 リオは手ごたえを感じつつ、斬りつけた腕が再度持ち上げられるのを見ていた。

 そのとき、腕の切り口に生じた異変に気が付いた。

 腕の表面の錆が動いていた。ぞろぞろと動くアリの大群のように動いた錆びは切り口に集まり、完全に塞いでしまった。

 繋がれてしまった。

「足を切って足止め、なんて無理っぽいですね」

 前に闘ったときのサビの壁程度だったら、斬っても特に問題はなさそうだったが、今回は違う。圧倒的な錆びの量がどれだけ斬りつけても即座にその場所を塞いで、再度結びつけてしまうだろう。何度も斬りつけてその都度修復させていけば、錆びの量は減らせるかもしれないが、それでは時間がかかりすぎる。

 最善と思っていた策は失敗。まぁ、そう簡単にはいかないか。ダメならダメで次の作戦を考えればいい。

 前向きにとらえながら、リオは錆びの怪物を観察する。

 その間、怪物は口元を大きく膨らませてから木を吐き出した。ただの空気で押し出しているものとは思えないほどの高速の勢いで飛んでいく木。このような所業も生き物でないからできるのだろう。

 明らかなのはそれだけではなかった。空気で飛ばしていること。すなわち、あの怪物の口の中は紛れもない空洞であるということだ。でなくては、あの木を発射する攻撃はできまい。

 怪物の腕は錆が内側までびっしりと詰まっていた。詰まっていたために怪物を支えられている。

 口の中が空洞ということは、それだけもろく、切り裂きやすいはず。それに勢いを乗せて太い木を発射させるのだから、空洞はデカいはず。口の中だけでなく、あの頭全体が空洞であるかもしれない。

 なるほど。つまりはあの怪物は見かけ倒しなのだ。いくら錆を集められるとはいえ、何十メートルも超える怪物の内側までびっしりと詰められるほどのサビは、物理的に集められはしない。

 怪物は三点で体を支えているが、逆に言えば地面にはその三点しかくっついていない。しっぽと両腕。その三点の間にある腹の下には隙間がある。

 そこに入り込んで、腹を切り裂いていけば……あの怪物を足止めできる糸口が掴めるかもしれない。あるいはそれ以上の、あの怪物を破壊することも。

 よし。

 リオは再び迷いなく走った。

 足を避けて腹の下に潜り込む。攻撃をするまでに時間的な猶予はない。腹の下は他ならぬ足元であり、次の一歩が踏み出された時には風圧を受けてしまう。引き摺られて前進する尻尾も無視できない。風圧に転ばされ、尻尾にミンチに去れてしまう前に、攻撃に転じなければ。

 リオは地についている腕に向かった。トヨと同様にそれを足場にし、飛び上がるつもりだった。

 まずは手の甲に乗る。問題は無し。内側にも足がかりになりそうな突起はあった。それに飛びつき、腕で体を持ち上げて、そこを次の足場とする。

 十分な高さだった。リオはその足場を蹴り飛ばすように踏みしめ、怪物の腹に向かって飛びかかった。

 空中で妖刀ムラマサを抜く。頭上に掲げて、迫りくる怪物の腹部に勢いよく突き立てた。

 相変わらず抵抗はなく、するすると刀身が入っていく。飛びかかる勢いもあって、僅かばかり前に切れ込みを入れるような格好になった。

 この勢いが止まるとすれば、妖刀の鍔が腹を形成するサビにぶつかるときだけだったろう。

 しかし、その唾がぶつかった瞬間に、錆がめくれあがった。やはり見かけ倒しだったのだ。中には空洞が広がっている。それの証拠に鍔が錆を押しのけ、リオの手首の辺りまで怪物の内側に入り込んだ。

 異変はその瞬間に生じた。

 怪物の腹部に入り込んだ手首から上に、ぞわりと冷たいものがまとわりついた。一瞬の嫌悪に、飛び上がっている現状にリオは抵抗できなかった。

 初めは本当にアリが這っているような微小な量だった。なのに僅か一秒も立たないほどに、まとわりついているものの量は数を増し、リオの両手を完全に覆ってしまった。

 他でもない、それは錆びだった。リオがそれに気が付いたときにはリオの攻勢は終焉を迎えていた。

 勢いは完全に死んでいる。怪物の内部に入り込んだ両手は錆びに覆われている。

「う、うそ……」

 両手は指も全く動かせない。拘束されてしまった。リオは両手を固定されて、宙吊り状態になってしまった。

「あはは・・・・・どうしましょうか、これ」

 思わず苦笑いが零れる。宙吊りになって片も腕も痛む。そこから下は動かせるが、全てを切り裂けるムラマサも錆びの先にある。

 こうなってしまった以上、リオにはどうすることもできなかった。怪物の足止めをすることも、ここから逃げ出すことも。


ども、作者です。


なんか書くことを考えていた気もするのですが忘れました。

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