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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
93/104

トヨとノウ

 トヨとリオの二人が軍事施設を通り抜けて城壁の外へと出た時、カラァンカラァンと鐘の音が激しく鳴り響いた。ウェスタンブールに迫る危機を伝える鐘だ。

 鐘を鳴らしたのは一歩間違えば自分たちのせいだったかもしれない。心当たりはある。少々、士官学校の門と軍事施設内で好き放題暴れてきたことだ。人殺しこそしていないが……今目の前に見える事情がなければ、リオとトヨが脅威認定されていたことだろう。

 出てすぐに、リオは顔をしかめた。

「いやぁ……これはでかい。相変わらずあの人はスケールがデカいですねぇ」

 巨大で、両手の生えたオタマジャクシのような錆の塊。

 赤黒さが、粘土細工に巻き込まれたかのような家の屋根や木の幹が、それは生物ではなく、二日前に対峙した妖刀使いのノウによって生み出された物だと、視界に訴えかけてくる。

「見つけやすくていいじゃないか……くるぞ!」

 プフゥッ! と錆の怪物が木を吐き出した。

 狙いを定めてはいなかっただろう。辺りに散らばる木片、欠けた城壁の石、地面に頭から突き刺さった木々を見れば、錆の怪物の攻撃は壁の破壊かこの辺りの兵を一掃するためのどちらか、無差別な攻撃なのだろうとは予想できる。

 しかし今まさに発射された木は、偶然なのかトヨとリオたちのいる入り口付近に飛んできていた。

 自分達へと向かう木の弾丸。

 トヨとリオは落ち着いていた。ごうと風を切るそれに対する恐怖はない。

 一歩、リオが足を踏み出した。

 腰に差した二本のカタナを抜き取る。

 右のムラサメ、左のムラマサ。妖刀だ。

 ちょうどトヨの頭上に木の根が近づいてきた。それに向かって、ムラサメを叩きつけるように振る。

 鉄のカタナと木がぶつかる。

 ぴたり、と動きが止まった。

 ムラサメが衝撃を、飛ばされた木の勢いを殺した。

 そして、左のムラマサを縦に上げて木に切りつける。

 リオはそのまままっすぐ走る。一切の抵抗もなく木は縦に、竹を割った時のように真っ二つに切り裂かれた。

 どどん、と地面を揺らして木が落ちる。

 一仕事を終えたリオは、一息ついてカタナを下げた。

「なぁ、それ……」

 脅威を拭い去った妖刀に、トヨの目がいく。何を言いたいのか、彼女の物欲しそうな目を見なくとも、リオには分かった。

「あいつを倒してからですよ。壊すのは」

「む。ならさっさと終わらせるとしよう」

 トヨは物わかりのいい返事を言った。こうまで聞き分けがいいとアーニィが耳にしたら驚いたかもしれない。

 二人の目が、目的が一斉にノウへと向く。

 終わらせるとしよう。これまでに続いた闘いと、あの錆を操る妖刀ナマクラとの戦いに。

 そのために、二人が走り出す。

 錆の怪物は、あるいはノウが、二人の存在に気が付いたかもしれなかった。

 近づいていく二人にめがけて、矢のように巨木が飛んでくる。怪物の口から発射された木が。

 それに打ち取られるほど、二人はヤワじゃない。トヨの大剣エンシェントが、リオの二本の妖刀が、次々と飛んでくる木を斬り捨てる。

「トヨさん、あれを見て下さい」

 錆の怪物に近づきながら、リオは錆びの怪物の上に乗っている女の姿を見とめた。長い髪を三つ編みに一束ねにし、片から胸にかけている、ローブ姿。やはり、ノウだった。

「上だな」

「行けそうですか?」

 尋ねると、トヨの視線は上から下へ動いた。

「腕を伝って行けば……足場もある」

 怪物の腕には、骨が突き出ているかのように、元々は家だったであろう木片や大き目の石、葉の生い茂る木の頭や丸太もある。それを足掛かりにすれば、登って行くのは身軽なトヨにとっては容易そうだ。

 トヨの自信に満ちた発言は、リオに頼もしく聞こえた。

「じゃあ、そっちは頼みます」

「む、お前はこないのか?」

「自分はこの怪物の足止めをします。この二本ならできないことはないでしょう」

 そう言って、リオが両手のカタナを構えた。

 何でも斬る妖刀と衝撃を受け止める妖刀。確かに、足止めにはこの上なく頼もしい。

「分かった……頼んだ」

 トヨは躊躇いなく走り出した。後の全ては任せられる。これ以上に心強いことはない。背中を支えられているだけでなく、背中を押してもくれいている。勢いのままに怪物の腕に向かう。

 錆びの怪物がどしんと一歩を踏み出した。

 地響きと共に風が舞う。地面と共に踏みつぶされた空気の圧が風のようにトヨに襲いかかる。

 トヨは大剣の石突を地面に立てた。風圧は体の正面を空気の物量で押してくる。トヨは足を擦って後退したが、何とかやり過ごした。

 停止は一時的に留めた。怪物が腕を踏み出した今こそがチャンスだからだ。

 次に踏み出すのはもう片方だ。それまでに今踏み出した方の腕は動くことはない。

 制止した今こそ、腕を登ってノウのいる怪物の上部に登るチャンス。

 トヨは走り、怪物の腕に足をかけた。初めは三本指の爬虫類のような手の甲にジャンプして上り、次は腕のところどころにある石や建造物を見描けて飛び上がって行った。

 一つ一つにしっかりと足をかけて着地して次から次へ素早く登っていく。足場の腕が次に動き出す前に。

 トヨは無事に登り切った。

 足場はでこぼこの地面。木の根が生えていたり、家の半分がまるまる埋まっていたり。浮島ほどではないが船の甲板程ある広さの怪物の頭、あるいは背中だ。

「ようこそ。ちょうど高みの見物に飽きてきたところなんです。あなたが直接来てくれたのは、何よりの僥倖ですが」

トヨを見つけたノウが言った。ローブを取ってさらけ出した顔の表情はすがすがしい。

 けれど、服に穴が空き、血に染まっているあたりは、着替えもできていないようだ。ローブの他の汚れも落ちてはいない。刺された腹部の傷跡の治療もしているようだが、決して万全な状態ではないだろう。

 それでも、ノウは余裕そうだった。

「難しい事を言うな。早くそれを壊させろ」

 トヨは片手で大剣を動かし、切っ先をノウに向ける。

「くくく、会話のし甲斐がないですねぇ……。今日はせっかちなあなたに合せてあげましょ」

 ノウが妖刀を振り上げると、怪物から錆が隆起して、彼女の右肩、右腕に広がっていく。気付くとカタナを丸々覆って、一つの大きなサーベルのような形になっていた。

 さながら、丸々片腕が剣になっているかのような状態だ。

「すぐに壊させは、しませんけどね」

ども、作者です。


できるだけ戦闘シーンは早めに始めて、早めに終わりたいと思ってはいます。今回は早めに入れてると思いますが。


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