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カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
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馴染まぬ親子

 床が固く、冷たい。石の天井はろくな明かりもないせいか濃い灰色に沈んでいる。

 前にもこんな景色を見たわね、と大の字で寝転がったジュリアは思った。

 ちょうどここにくる直前ね。二度も牢獄にぶち込まれるなんてそうそうないことだ。ジュリアは運がいいのやら運が悪いのやら。生かされていることも含めれば、やや運はある方か。食事もでき、雨風くらいは防げる。不自由なのはいただけないが、別段大きな不便も無い。

 不便といえば、アーニィやトヨたちと連絡を取り合えないことか。ジュリアにしてみれば大きな不便とも言えないことだ。

 今頃何をしているのかしらね。また連れ戻しに来てくれるんじゃないかしら……。

 それはそれで嬉しい、というより単純に簡単にここから出られるのなら何だって構わないのだが……この前のようにうまくいくだろうか。なんて言ったって、今回ジュリアをここに押し込めたのは……。

 こつんこつん、と足音が響いた。誰かがこの牢獄に来たらしい。見張りの兵ではない。足音が軽く、鎧が触れ合う不愉快な音も聞こえないからだ。

 寝転んでいたジュリアがのそりと体を起こした。やってきた相手に察しがついた。自分をここに押し込んだ張本人だろう。

 果たして、ジュリアの推測は当たっていた。

「命の恩人にお礼でも言いに来てくれたのかしらぁ?」

 にたりと嫌らしく笑って、ジュリアは言う。

 牢獄の鉄格子の向うに現れたのは、腕当てと胸当ての付いたドレスを着た、クイーンだった。

「減らず口なんて……元気そうじゃないの山賊女王ジュリア」

 クイーンは金色の髪を耳に掛ける。自分に似た顔が自分と同じ色の髪をしている。改めてジュリアはクイーンとの浅からぬ繋がりを実感してしまう。

「減らず口でも口答えでもなんでもしたくなるわよ。アンタに会いに来たってのになんで牢屋にぶち込まれなくちゃならないのよ」

「お前が犯罪者だから。犯罪者が自らの素性を明かしてくれるとは……自分で自分の首を絞めたのよ、アンタは」

 クイーンが淡々と述べる答えは、実に単純なものだった。

 クイーンとジュリアは二日前に初めて対面した。ろくな会話も無く、お互いにすぐに気を失ってしまったが、感動的な再開とは言わないまでも、自分の登場がクイーンの命を救う結果になったのだとジュリアは自負している。

 なのにこうも単純な理屈だけで切り捨てられてしまうとは。今もなお、クイーンは牢獄の空気に似た冷たい表情を崩さないでいる。

「自分の子供に辛辣過ぎじゃない? アンタ、アタシの母親なんでしょう?」

「それを認めたとして、お前の過去、罪が消える訳じゃないわ」

「アタシはキングとエースに、娘だって認めてもらえりゃあ、罪も消えるって約束してもらって……」

「王都の決定など関係ない。ここでは私が法よ」

 ジュリアは立ち上がり、鉄格子に近づく。そして鉄格子を掴んで、クイーンにつっかかるようにがたがたと揺らした。

「アンタねぇ、傍若無人にもほどがあるわよ! だいたいね、アンタが旦那をにがさねけりゃ、アタシは今頃正当なお姫様だったのよ! もとはと言えばアンタが……」

「根本がどうなどとは不毛な話ね。終わったことは変えられないわ。元など正せないの。あなたが歩んできた道が、今を作っていることを忘れてもらっちゃ困るわね。自分で決めたのでしょう。山賊として生きていくって」

 激高するジュリアとは真反対の、凍りつくほど冷静なクイーンの声が、閉じ切った牢屋の中で反響する。

 本当にこれと同じ血がアタシに流れてるって言うの?

 証拠はないが、同じ血が流れているという確信はある。しかし、こうも人の血が通っていないような冷酷で現実的な人間が自分の親だとはあまり思いたくないし、否定したい。

 それなのにクイーンはジュリアが自身で山賊の道を志したことを、見事に言い当ててしまった。透かされるように見抜かれている。これも親の特権、親である証拠だとでも言うのか。

「自分の罪は自分で償いなさい」

 歯噛みするジュリアを置いて、クイーン言って去ってしまった。特にこれと言って大事な話も何もしなかった。交渉の余地も無い。

 何、自分で償えって言ったって、ここに居続けろって?

 冗談じゃないわ。そもそも、アタシがいなけりゃアンタ死んでたのよ。礼の一つくらいいいなさいよ。親なら言わなくても構わないっての?

 冗談じゃないわ。最悪。

 会わなけりゃ良かった。

 助けなければよかった。

 二日前の自分がなぜあの女を助けようとしてしまったのか。自分を動かした直感のようなものをことさらに否定したい。 

 なにはともあれ、久しぶりの再開も、初めての親子のまともな会話も、最悪だとしか言いようがない。

 はぁ、とジュリアは一つ大きなため息を吐いた。

 折角自分の罪から逃れるチャンスだったってのに。処刑から逃れて来たってのに。これじゃ、わざわざ会いに来た意味が無い。

 かくなる上は……。

「よし、脱獄開始ね」

 ジュリアはぺろりと唇を舌でなめた。


ども、作者です。


はい、ちょっと時間をおいてですね、一週間に2回の更新にしようかなと思ってやってみました。

今後しばらくは続けようかなと思います。

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