表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カタナガリ  作者: リソタソ
オニキリマル
82/104

進展か


 状況は振出しに戻った。唯一の作戦に一縷の希望を乗せ、チャンスをつかむべく決死の攻撃に打って出たが、失敗してしまった。

 すぐに立ちあがったアーニィは、長剣を鞘に収めて、元は船だった木片の残骸の中を走った。妖刀を手にしたリオから離れるように。

 しかし、リオはすぐに追いかけてくる。雨に濡れて足場が限られているがれきのなかでは、長い脚のリオに分があった。アーニィが足の届く場所を探している間に、より選択肢の多いリオがどんどん詰め寄ってくる。

 また一つ、アーニィが残骸を飛び越える。僅かな隙間に両足をつけ、次の足場を探すために素早く目を走らせる。

 ぴたり、とアーニィの動きが止まった。

 なんてことだ、安全な足場がない。ここまではところどころに穴が開くように隙間があったが、ついにそれが途切れてしまった。

 まずい、どうする? 突っ込むか……。

 今のアーニィにはその選択しかない。あの切れ味の恐ろしい妖刀では剣で防ぐこともできず、その場で身を捻らせるだけでも避けられるかどうか。

 迷いがあった。自分が突っ込んだ後、もう一度立ち上がるその暇に、追撃が来るかもしれない。

 迷いが一瞬、アーニィを及び腰にした。

 ぱしゃん! とアーニィの背後で鳴った。

 背後のさっきまで自分が立っていた足場に、リオが着地した音だ。

 距離はかなり迫られている。

 このまま、再びがれきに突っ込むか……。

 アーニィの背後で、リオの妖刀が振り上げられた。

 いいや、このまま逃げ続けても意味はない。逃げ続け、避け続け、状況は少しも変わっていないじゃないか。

 立ち向かわなければ、何も変わらない。

 アーニィは振り返る。

 その時、アーニィは片足を軸にして、もう一方の足を上げていた。

 剣では攻撃できない。

 それなら、別の手段で攻撃するしかあるまい。

 振り返る回転の勢いを加え、アーニィは左足で蹴りを放った。

 アーニィの蹴りがリオの脇腹に突き刺さる。リオにしてみればアーニィの反撃は予想外で、彼女の体は右側に吹っ飛ぶように倒れ込んだ。

 がしゃん、と激しい音を立てて、がれきの中に倒れるリオ。

「うわ……まずい……」

 がれきの中に突っ込んだリオにアーニィは心配そうな目を向ける。今は敵対しているとはいえ、妹に違いはない。蹴りだけなら簡単に致命傷にはならないとは思うが、がれきに向かって倒れるのは別だ。

 尖った木材とか金属が突き刺さったりしていなければいいが……。

 アーニィの心配をよそに、リオは立ちあがった。

 よし、と喜んでばかりはいられない。アーニィはすぐに別の空いた足場を探し、リオから離れていく。

 アーニィはなんとかがれきまみれの足場から離れ、大きく開けた場所にやってくることができた。

 足場の心配はこれでなくなった。それ以上に十分な収獲が、手ごたえがあるとアーニィは感じていた。

 振り返りざまに、アーニィは両手に持った剣を鞘に納めた。

 リオを傷つけてしまうことにはなるが、肉弾戦であれば殺してしまうこともない。

 であれば、だ。接近して肉弾戦で闘いつつ、リオの持っている妖刀を彼女の手から払い落す。それが今のところは最良の選択だろう。

 リオもがれきの足場を抜けて近づいてくる。アーニィも一旦さらに距離を離した。

 そして、彼女がアーニィと同じ、がれきの山から出てきた瞬間に、アーニィは走り出した。

 死ぬか、リオを救うか、結果は二つに一つ。今まで逃げ続けていても状況はなんら好転せず。であればこそ、打開の一手を思い浮かんだ今、自分から打って出るしかあるまい。

 接近するアーニィを見て、走っていたリオは足を止めた。彼女にしてみればこれも予想外の行動だったに違いない。

 リオが剣を横に振るための構えを取った。

 その間に、アーニィは彼女に急接近する。リオも妖刀を横から振るうが、アーニィは妖刀を振るうリオの腕を掴んだ。

 よし、このままカタナを叩き落とし……。

 アーニィの思考がそこで中断した。

 どっ! と腹部に強い衝撃が走る。リオのつま先がアーニィの腹に突き刺さる。リオがアーニィに向けて蹴りを入れたのだ。

 アーニィは腕をつかむ手を離し、後方に蹴り飛ばされる。

 素早い反撃だった。完全にアーニィの行動を見透かされているような。

 腹と背中の痛みを堪えながら、アーニィは立ち上がる。

 一度見せた手が全く通じない。そういうところは、普通のリオと闘っているのとなんら変わりはなかった。

 操られていても、リオと対峙している事実は変わらないのだ。

 どうする? もう一度肉弾戦でチャンスを見つけて立ち向かうか……いいや、それでは再び反撃を受けるだろう。それでも続けるか……。

 何か、もっとさらに有効な打開策があればいいのだが。

 リオの弱点、あるいは妖刀の弱点があれば……。

 妖刀の弱点? そうだ、あれだ! あれがあったじゃないか!!!

 アーニィは辺りを見て、その場所を見つけると一目散に走り出した。

 追いかけてくるリオの足音を耳にしながらも、わき目も振らずに目指す場所は、トヨが幽閉されている四角い錆の塊。そこには飛び出ているエンシェントがある。

 持ち上げることは叶わないだろうが、あの妖刀をエンシェントにぶつけることができれば、これまでに壊してきた妖刀と同様に破壊できるはず。

 そうすればリオの呪縛も解くことができるだろうし、何よりトヨの目的も果たせる。

 もし仮に、ぶつけられなくとも、あの妖刀は見た限り何でも斬りつくしてしまうカタナだ。何度も攻撃を加えてびくともしなかったあの錆の塊も斬れるかもしれない。

 どちらでもいい。前者はそのまま妖刀を破壊できる。後者はトヨの力を借りられるかもしれない。結果はどちらも状況を覆せる。

 アーニィは一縷の希望を込め、錆の塊の元に辿り着いた。

 出ているトヨの腕は雨に濡れている。軽く触れるとまだほんのりとあたたかい。とりあえず大丈夫、トヨはまだ生きている。

 アーニィはトヨの手が掴んでいる大剣エンシェントを持とうとした、しかし、いややはりと言うべきが、ちっとも持ち上がらない。

 うまく当てることができればいいが……。

 それより、今リオはどの辺りまで近づいているのだろう。

 足音は聞こえない。

 ……聞こえないだと!?

 アーニィが振り返る。

 リオは、遠巻きにアーニィの様子を見ているようだった。

 決して近づいては来ない。さっきまではずっと追い回されていたと言うのに。リオは錆の塊を中心にして、円を描くようにぐるぐると周り、アーニィの出方を伺っているようだ。

 これは一体どういう意味だ?

 まさか、エンシェントに近寄ろうとしていない、とでも言うのか?

 少なくとも、紛れもない事実は彼女が近づいてこないこと。

 くそう、またも予想は外れた。

 しかし、彼女が追いかけてこないのは、アーニィにとっては一つの利点でもある。

 これからどうするか、それを考えるためのチャンスができたのだと、アーニィは前向きに捉えるようにした。しばし待てば、体力も回復する。

 それまでに、それまでにまたもう一つ……現状を打破する方法を考えなければ。


ども、作者です。


ちょっと短いですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ